齋藤純一(早大教授)の書評

写真:齋藤純一さん

齋藤純一 (早大教授)
さいとう・じゅんいち。1958年生まれ。早大教授=政治理論・政治思想史。2017年4月より書評委員。

「投壜通信」の詩人たち―〈詩の危機〉からホロコーストへ [著]細見和之

「投壜通信」の詩人たち―〈詩の危機〉からホロコーストへ [著]細見和之

 「叫び声をひとつあげて 無用の者です、荒れすさんだ者ですと 君たちはあいさつしているのか」  餓(う)えと襲来した寒波のなかワルシャワ・ゲットーの路上に倒れていく同胞たちの姿を描いた詩の一節である。作者は、ベラルーシ生………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2018年05月05日
[ジャンル]文芸

憎しみに抗って―不純なものへの賛歌 [著]カロリン・エムケ

憎しみに抗って―不純なものへの賛歌 [著]カロリン・エムケ

■多様性ゆえの安定、再構築を  このところ「ヘイトスピーチ」や「ヘイトクライム」といった「憎しみ」を含む言葉を耳にすることが多くなった。実際、ネット上では憎悪表現が当たり前のように飛び交っている。その標的とされ、心身に………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2018年04月21日
[ジャンル]政治 社会

電力と政治―日本の原子力政策全史(上・下) [著]上川龍之進

電力と政治―日本の原子力政策全史(上・下) [著]上川龍之進

■戦後の「暗黒面」を抉り出す  権力の実態は、マクロな構造を見るだけではとらえきれない。細部に分け入ってはじめて見えてくるものもある。本書は、原発をめぐる権力を分析することを通じて、そこに凝縮されている戦後政治の「暗黒………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2018年03月18日
[ジャンル]社会

議院内閣制―変貌する英国モデル [著]高安健将

議院内閣制―変貌する英国モデル [著]高安健将

■日本の政治は「自省の材料」に  小選挙区比例代表並立制が1994年の政治改革によって導入されてから20年以上が経った。この制度は英国のように二大政党制と政権交代を導くはずとされたが、日本では「一強多弱」の状態が続いて………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2018年02月11日
[ジャンル]政治

代表の概念 [著]ハンナ・ピトキン

代表の概念 [著]ハンナ・ピトキン

■指導者を支持する理由問われる  「代表」は、政治学が近年活発に論じているテーマの一つである。  例えば「代表される者」がまず存在して彼らが「代表する者」を選ぶのではなく、逆に代表する者が代表される者を構築する。代表者………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2018年01月21日
[ジャンル]政治 社会

アメリカ 暴力の世紀―第二次大戦以降の戦争とテロ [著]ジョン・W・ダワー

アメリカ 暴力の世紀―第二次大戦以降の戦争とテロ [著]ジョン・W・ダワー

■怯えと不安が導く準戦争状態  本書は、「アメリカの世紀」の裏面に光を当てる。ヘンリー・ルースが用いたこの表現には、アメリカの経済的・軍事的な覇権だけではなく、その「例外的な美徳」という意味合いもある。例外的な徳と力を………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2018年01月07日
[ジャンル]政治

世代問題の再燃―ハイデガー、アーレントとともに哲学する [著]森一郎

世代問題の再燃―ハイデガー、アーレントとともに哲学する [著]森一郎

■教育の役割は世界を教えること  書物、音楽、絵画、着物、住居や街路……。私たちは日々「物」や「作品」に関わって暮らしている。そして、それらを介して、「物」をつくりだし、保持してきた過去の世代、それらを受け渡していくべ………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2017年12月03日
[ジャンル]社会

憲法と世論―戦後日本人は憲法とどう向き合ってきたのか [著]境家史郎

憲法と世論―戦後日本人は憲法とどう向き合ってきたのか [著]境家史郎

■改憲望む有権者、データで分析  先月行われた総選挙の結果、与党をはじめ改憲勢力が議席の圧倒的多数を占めるようになり、改憲の発議も現実味を増してきた。  本書は、戦後に行われた憲法に関する世論調査の集計結果を網羅的に収………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2017年11月12日
[ジャンル]政治

国家がなぜ家族に干渉するのか―法案・政策の背後にあるもの [編著]本田由紀・伊藤公雄

国家がなぜ家族に干渉するのか―法案・政策の背後にあるもの [編著]本田由紀・伊藤公雄

■生き方断念せずにすむ保障こそ  近代の国家は家族に深く関与してきた。そのことにいまも変わりなく、大多数の国家は異性愛カップルにのみ婚姻資格を与えているし、少子化対策は最重要の政策課題とされている。  本書は、本年1月………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2017年10月22日
[ジャンル]政治

ナチスの「手口」と緊急事態条項 [著]長谷部恭男・石田勇治

ナチスの「手口」と緊急事態条項 [著]長谷部恭男・石田勇治

■為政者の濫用、いかに危険か  衆議院が解散され、22日には投票が行われる。自民党はかねてより「緊急事態条項」を憲法に設けようとしてきた(2012年発表「自民党憲法改正草案」)。総選挙では表立った争点とはならないとして………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2017年10月01日
[ジャンル]歴史

帝国と立憲―日中戦争はなぜ防げなかったのか [著]坂野潤治

帝国と立憲―日中戦争はなぜ防げなかったのか [著]坂野潤治

■デモクラシーの役割と課題問う  本書は、1874年の台湾出兵から1937年の日中全面戦争に至る歴史を、「帝国」対「立憲」という構図のもとに簡明に描き直す。著者によれば、「内に立憲、外に帝国」という二重基準でこの時代を………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2017年09月10日
[ジャンル]歴史

「維新革命」への道―「文明」を求めた十九世紀日本 [著]苅部直

「維新革命」への道―「文明」を求めた十九世紀日本 [著]苅部直

■商業の自由の擁護が原動力に  明治維新をもって日本の近代がはじまる。本書はこの「断絶」のイメージを払拭(ふっしょく)する。  本書によれば、維新には「社会と思想の構造変化」の前史があった。この「長い革命」があったから………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2017年08月13日
[ジャンル]歴史

「大衆」と「市民」の戦後思想-藤田省三と松下圭一 [著]趙星銀

「大衆」と「市民」の戦後思想-藤田省三と松下圭一 [著]趙星銀

■社会の民主的成熟に向けて議論  藤田省三と松下圭一は、戦後間もなく丸山眞男のもとで学び、1950年代後半から80年代にかけて民主主義をめぐる議論をリードした。「天皇制社会」や「安楽への全体主義」、「市民自治」や「シビ………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2017年08月06日
[ジャンル]政治 社会

一枚の切符―あるハンセン病者のいのちの綴り方 [著]崔南龍

一枚の切符―あるハンセン病者のいのちの綴り方 [著]崔南龍

■浄化の対象として隔離した歴史  いまハンセン病療養施設にいる人の平均年齢は85歳になった。同年代の著者は、10歳のときから岡山県長島の邑久(おく)光明園で暮らす。本書は、著者自身のエッセーと孫和代氏が著者から聴きとっ………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2017年07月16日
[ジャンル]社会

熟議民主主義の困難―その乗り越え方の政治理論的考察 [著]田村哲樹

熟議民主主義の困難―その乗り越え方の政治理論的考察 [著]田村哲樹

 先の国会では熟議が公然と蔑(ないがし)ろにされたが、市民社会ではどうだろうか。本書は、熟議の場が、議会や市民参加のフォーラムだけではなく多層的に存在することを強調する。熟議は家族や職場でも行われるし、自由民主主義の内部………[もっと読む]

[評者]齋藤純一(早大教授)
[掲載]2017年07月09日
[ジャンル]政治

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