佐伯一麦 (作家)の書評

写真:佐伯一麦 さん

佐伯一麦  (作家)
さえき・かずみ。1959年生まれ。作家。2017年4月より書評委員。

あるノルウェーの大工の日記 [著]オーレ・トシュテンセン

あるノルウェーの大工の日記 [著]オーレ・トシュテンセン

■臨場感あふれる埃と騒音の現場  手を使う労働に携わっている人たちが、それぞれの作業を通して感得した機微に触れたものを記したら、面白い読み物になるのではないか、とつねづね夢想してきた。その願いが本書によって存分に叶(か………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年11月19日

ティンパニストかく語りき [著]近藤高顯

ティンパニストかく語りき [著]近藤高顯

 中学の時に、私が初めてオーケストラの実演に接した曲が、ティンパニが大活躍するブラームスの交響曲第1番だったためか、縁の下の力持ちでありながら、第2の指揮者とも言われるティンパニの響きには特に耳を傾けるようになった。  ………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年11月05日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能

花びら供養 [著]石牟礼道子

花びら供養 [著]石牟礼道子

■静まった言葉が浮かび上がる美  水俣病を物語った『苦海浄土』を代表作とする石牟礼文学が、私にとって真に迫って感じ取れるようになったのは、アスベスト禍と東日本大震災に遭ってからのことだった。  本書の冒頭に置かれたエッ………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年10月22日
[ジャンル]歴史 社会 ノンフィクション・評伝

きょうの日は、さようなら [著]石田香織

きょうの日は、さようなら [著]石田香織

■実感に即した言葉、拾い集める  小説でしか表し得ない世界を現出させるために、ともすれば新人作家は、言葉を過剰に用いたり、現実をグロテスクに誇張して描いたり、深読みを誘引するかのように韜晦(とうかい)したりする。そうし………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年10月01日
[ジャンル]文芸

里山という物語―環境人文学の対話 [編]結城正美・黒田智

里山という物語―環境人文学の対話 [編]結城正美・黒田智

 今ではふつうに使われている「里山」という語の歴史は実は新しく、バブル崩壊後に盛んに喧伝(けんでん)されるようになったという。  人の手が入った循環する生態系としての里山に、日本の原風景につながる懐かしさを覚えることに疑………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年09月03日
[ジャンル]人文 ノンフィクション・評伝

飯場へ―暮らしと仕事を記録する [著]渡辺拓也

飯場へ―暮らしと仕事を記録する [著]渡辺拓也

■体験ルポと考察の“私民族誌”  本書を手にして、ラチェットレンチ、水準器、安全帯、ヘルメット、ユンボ、ワイヤカッター、コンクリートブレーカー……などが描かれた賑(にぎ)やかな表紙にまず引き込まれた。評者は、作家専業に………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年08月27日
[ジャンル]社会

シュレーディンガーの猫を追って [著]フィリップ・フォレスト/原理―ハイゼンベルクの軌跡 [著]ジェローム・フェラーリ

シュレーディンガーの猫を追って [著]フィリップ・フォレスト/原理―ハイゼンベルクの軌跡 [著]ジェローム・フェラーリ

■量子力学が生んだ文学的想像力  量子力学をテーマとした仏小説の翻訳が相次いで出版された。不確定性原理を基礎とする量子力学は、半導体などに応用され、相対性理論とともに現代物理学の根幹をなしている。不確定さを増し、現実と………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年08月13日
[ジャンル]文芸

琉球文学論 [著]島尾敏雄

琉球文学論 [著]島尾敏雄

 奄美群島内の加計呂麻島を舞台に、島尾敏雄と妻ミホとの戦時下での出会いの物語を越川道夫監督が映画化した「海辺の生と死」の試写を観(み)て、満島ひかりのうたう哀切な島唄に惹(ひ)きつけられた。映画でも唄(うた)われる「やま………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年07月16日
[ジャンル]社会

永遠の道は曲りくねる [著]宮内勝典

永遠の道は曲りくねる [著]宮内勝典

■生命の連続、宇宙的スケールで  3・11以降のいまを、地球的、いや宇宙的なスケールで描き切った長編小説である。戦争で約20万人の死者があった沖縄の海で始まり、23回の核実験が行われたビキニ環礁の海で終わる物語の主人公………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年07月02日
[ジャンル]文芸

小林秀雄と河上徹太郎 [著]坂本忠雄

小林秀雄と河上徹太郎 [著]坂本忠雄

 開高健は、5歳下の著者に対しての敬愛を氏らしい言い方で、「“カツアゲ(脅迫)の坂本”と業界で日頃から呼ばれている辣腕(らつわん)家」と表現していた。  1959(昭和34)年から36年間にわたって文芸誌「新潮」の編集部………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年06月25日
[ジャンル]文芸

開高健-生きた、書いた、ぶつかった!、美酒と黄昏 [著]小玉武

開高健-生きた、書いた、ぶつかった!、美酒と黄昏 [著]小玉武

■定説をやんわり修正して説得力  昭和5(1930)年に生まれ、平成元(89)年に58歳で亡くなった開高健は、昭和という時代と格闘し続けた作家だった。ベトナム戦争への従軍や、アマゾンへの冒険を伴う釣行など、旺盛な行動力………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年06月11日
[ジャンル]人文

現代子ども文化考―「子ども」に寄り添って [著]山中恒

現代子ども文化考―「子ども」に寄り添って [著]山中恒

 皇国少年たちを描いた「ボクラ少国民」シリーズ、また『転校生』(原作は『おれがあいつで あいつがおれで』)など大林宣彦監督により映画化された作品の原作者として知られる著者は、高校生のときに宮沢賢治の『どんぐりと山猫』を読………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年05月28日
[ジャンル]人文

日本手話とろう教育―日本語能力主義をこえて [著]クァク・ジョンナン

日本手話とろう教育―日本語能力主義をこえて [著]クァク・ジョンナン

■固有の言語を使う権利の尊重を  ろうの知人から、東日本大震災時の避難所でコミュニケーションがとれず苦労したことを筆談で教えられた。また、会議などで手話通訳が付くことはあるが、たわいもない雑談が交わされているようなとき………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年05月14日
[ジャンル]政治 医学・福祉 社会

名誉と恍惚 [著]松浦寿輝

名誉と恍惚 [著]松浦寿輝

■スリリングな展開に潜む悦楽  音楽や映画、舞台といった芸術は、作品が要求する物理的な時間に観衆も立ち会うことを余儀なくされる。その点、文学は、読む速度は読者にゆだねられ、切れ切れの時間を繋(つな)いで読み通すことも可………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年04月23日
[ジャンル]文芸

海と生きる作法 漁師から学ぶ災害観 [著]川島秀一

海と生きる作法 漁師から学ぶ災害観 [著]川島秀一

■恵みと災い、両面受けいれ共生  三陸の気仙沼市出身の民俗学者である著者は、東日本大震災による津波で実家が流失し、母を亡くした。気仙沼は生鮮カツオの水揚げ日本一を誇る港町で、震災の年も宮崎や高知、三重などの漁船が来港し………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年04月02日
[ジャンル]社会

  • 1

ここに掲載されている記事や書評などの情報は、原則的に初出時のものです。

ページトップへ戻る