佐伯一麦 (作家)の書評

写真:佐伯一麦 さん

佐伯一麦  (作家)
さえき・かずみ。1959年生まれ。作家。2017年4月より書評委員。

いのちなりけり吉野晩祷 [著]前登志夫

いのちなりけり吉野晩祷 [著]前登志夫

 役行者が開基と伝えられる吉野山金峰山寺蔵王堂の節分の豆撒(ま)きは、「福は内! 鬼も内!」と叫ぶ。これを著者は、亡くなる2カ月前に発表したエッセーで、〈山人の抜群のアイロニー(反語)ではないか。山人みずからの鬼とつねに………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2018年03月25日
[ジャンル]文芸

雑草はなぜそこに生えているのか [著]稲垣栄洋

雑草はなぜそこに生えているのか [著]稲垣栄洋

■イメージ覆す合理的な生存戦略  バス停の標識の際に咲いているネコノメソウ、庭の草むしりをした後でも、枯れずに復活して増えるツルマンネングサ……。雑草という草はなく、どの植物にも名前があって、それぞれの場所とやり方を選………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2018年02月11日
[ジャンル]科学・生物

「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす [著]佐光紀子

「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす [著]佐光紀子

 日本の男性が家事を分担する割合は世界平均の半分以下である、との耳の痛い指摘が冒頭にある。戦後の高度経済成長を支えた専業主婦願望もいまだに根深く、女性は家事をきちんとこなさなければならない、というプレッシャーが日本社会に………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2018年01月21日
[ジャンル]社会

おらおらでひとりいぐも [著]若竹千佐子

おらおらでひとりいぐも [著]若竹千佐子

■生き方を模索した現代の民話  おもしぇがっだな。読み終わったとき、脳内で呟(つぶや)く声があった。都市近郊の新興住宅に住む74歳の主人公の桃子さんは、子供を育て上げ、夫は15年前にあっけなく亡くなり、長く飼っていた犬………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2018年01月14日
[ジャンル]文芸

老愛小説 [著]古屋健三

老愛小説 [著]古屋健三

■全編に満ちる多彩な匂いの表現  スタンダールの翻訳者として知られ、内向の世代についての文芸評論もある古屋健三氏の初めての小説集で、「虹の記憶」「老愛小説」「仮の宿」の三つの中篇(ちゅうへん)を収録している。2002年………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年12月10日
[ジャンル]文芸

あるノルウェーの大工の日記 [著]オーレ・トシュテンセン

あるノルウェーの大工の日記 [著]オーレ・トシュテンセン

■臨場感あふれる埃と騒音の現場  手を使う労働に携わっている人たちが、それぞれの作業を通して感得した機微に触れたものを記したら、面白い読み物になるのではないか、とつねづね夢想してきた。その願いが本書によって存分に叶(か………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年11月19日

ティンパニストかく語りき [著]近藤高顯

ティンパニストかく語りき [著]近藤高顯

 中学の時に、私が初めてオーケストラの実演に接した曲が、ティンパニが大活躍するブラームスの交響曲第1番だったためか、縁の下の力持ちでありながら、第2の指揮者とも言われるティンパニの響きには特に耳を傾けるようになった。  ………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年11月05日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能

花びら供養 [著]石牟礼道子

花びら供養 [著]石牟礼道子

■静まった言葉が浮かび上がる美  水俣病を物語った『苦海浄土』を代表作とする石牟礼文学が、私にとって真に迫って感じ取れるようになったのは、アスベスト禍と東日本大震災に遭ってからのことだった。  本書の冒頭に置かれたエッ………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年10月22日
[ジャンル]歴史 社会 ノンフィクション・評伝

きょうの日は、さようなら [著]石田香織

きょうの日は、さようなら [著]石田香織

■実感に即した言葉、拾い集める  小説でしか表し得ない世界を現出させるために、ともすれば新人作家は、言葉を過剰に用いたり、現実をグロテスクに誇張して描いたり、深読みを誘引するかのように韜晦(とうかい)したりする。そうし………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年10月01日
[ジャンル]文芸

里山という物語―環境人文学の対話 [編]結城正美・黒田智

里山という物語―環境人文学の対話 [編]結城正美・黒田智

 今ではふつうに使われている「里山」という語の歴史は実は新しく、バブル崩壊後に盛んに喧伝(けんでん)されるようになったという。  人の手が入った循環する生態系としての里山に、日本の原風景につながる懐かしさを覚えることに疑………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年09月03日
[ジャンル]人文 ノンフィクション・評伝

飯場へ―暮らしと仕事を記録する [著]渡辺拓也

飯場へ―暮らしと仕事を記録する [著]渡辺拓也

■体験ルポと考察の“私民族誌”  本書を手にして、ラチェットレンチ、水準器、安全帯、ヘルメット、ユンボ、ワイヤカッター、コンクリートブレーカー……などが描かれた賑(にぎ)やかな表紙にまず引き込まれた。評者は、作家専業に………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年08月27日
[ジャンル]社会

シュレーディンガーの猫を追って [著]フィリップ・フォレスト/原理―ハイゼンベルクの軌跡 [著]ジェローム・フェラーリ

シュレーディンガーの猫を追って [著]フィリップ・フォレスト/原理―ハイゼンベルクの軌跡 [著]ジェローム・フェラーリ

■量子力学が生んだ文学的想像力  量子力学をテーマとした仏小説の翻訳が相次いで出版された。不確定性原理を基礎とする量子力学は、半導体などに応用され、相対性理論とともに現代物理学の根幹をなしている。不確定さを増し、現実と………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年08月13日
[ジャンル]文芸

琉球文学論 [著]島尾敏雄

琉球文学論 [著]島尾敏雄

 奄美群島内の加計呂麻島を舞台に、島尾敏雄と妻ミホとの戦時下での出会いの物語を越川道夫監督が映画化した「海辺の生と死」の試写を観(み)て、満島ひかりのうたう哀切な島唄に惹(ひ)きつけられた。映画でも唄(うた)われる「やま………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年07月16日
[ジャンル]社会

永遠の道は曲りくねる [著]宮内勝典

永遠の道は曲りくねる [著]宮内勝典

■生命の連続、宇宙的スケールで  3・11以降のいまを、地球的、いや宇宙的なスケールで描き切った長編小説である。戦争で約20万人の死者があった沖縄の海で始まり、23回の核実験が行われたビキニ環礁の海で終わる物語の主人公………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年07月02日
[ジャンル]文芸

小林秀雄と河上徹太郎 [著]坂本忠雄

小林秀雄と河上徹太郎 [著]坂本忠雄

 開高健は、5歳下の著者に対しての敬愛を氏らしい言い方で、「“カツアゲ(脅迫)の坂本”と業界で日頃から呼ばれている辣腕(らつわん)家」と表現していた。  1959(昭和34)年から36年間にわたって文芸誌「新潮」の編集部………[もっと読む]

[評者]佐伯一麦 (作家)
[掲載]2017年06月25日
[ジャンル]文芸

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