奥泉光(作家)の書評

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奥泉光 (作家)
1956年山形県生まれ。作家、近畿大学教授。著書に『滝』『ノヴァーリスの引用』(野間文芸新人賞)『「吾輩は猫である」殺人事件』『石の来歴』(芥川賞)『グランド・ミステリー』『浪漫的な行軍の記録』『新・地底旅行』『神器』(野間文芸賞)『シューマンの指』など。

メイスン&ディクスン〈上・下〉 [著]トマス・ピンチョン

メイスン&ディクスン〈上・下〉 [著]トマス・ピンチョン

■無数の細部が集積、異様な重力を放つ  評者は本書を読むのに一夏かかった。もちろんその間、他の活動を一切しなかったわけではないし、これ以外の本を一冊も読まなかったのではない。だが、今年の異様に暑い夏、どこへ行くにもこの………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2010年09月05日
[ジャンル]文芸

悪貨 [著]島田雅彦著 

悪貨 [著]島田雅彦著 

■精巧な贋金が波紋を広げながら  小説を贋金(にせがね)にたとえる発想は昔からあった。これは、文字で埋められた原稿用紙を紙幣にすりかえる、売文業者の営みが贋金作りのようだ、という意味でもあるが、なにより小説というものが………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2010年07月11日
[ジャンル]文芸

テロと殉教ー「文明の衝突」をこえて [著]ジル・ケペル

テロと殉教ー「文明の衝突」をこえて [著]ジル・ケペル

■災厄をもたらした、二つの大きな物語  私たちはさまざまな〈物語〉で世界を解釈しつつ日々を生きている。何かしらの〈物語〉が紡がれることなしに、私たちは自分の生きる世界について知りえない。それは個人や家族の小さな〈物語〉………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2010年05月23日
[ジャンル]政治 社会 国際

日本政治思想史 十七〜十九世紀 [著]渡辺浩

日本政治思想史 十七〜十九世紀 [著]渡辺浩

■江戸〜明治維新の思想、鮮やかに  書名からは専門的な学術書のように思えるだろうが、全然違う。著者も述べるように、専門知識を前提にしない一般向きに書かれた概説書である。というと今度は、無味乾燥な教科書が想像されるかもし………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2010年04月25日
[ジャンル]歴史 政治 人文

ジャズ喫茶論ー戦後の日本文化を歩く [著]マイク・モラスキー

ジャズ喫茶論ー戦後の日本文化を歩く [著]マイク・モラスキー

■即興演奏のように楽しい「研究」  前著『戦後日本のジャズ文化』(青土社)で、戦後文化にとってジャズという音楽の持った意味を、それをめぐる風俗や言説を含め広範に論じた著者が、他に類例のない独自の発展をとげたジャズ喫茶文………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2010年04月11日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能 社会

煙滅 [著]ジョルジュ・ペレック

煙滅 [著]ジョルジュ・ペレック

■特定の文字の不在が導く「物語」  これはとんでもない本である。どうとんでもないのかといえば、一九六九年に発表された仏語の原作は、三百頁(ページ)を超える長さがありながら、「e」の文字を一度も使っていないのである! い………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2010年02月28日
[ジャンル]文芸

エクスタシーの湖 [著]スティーヴ・エリクソン

エクスタシーの湖 [著]スティーヴ・エリクソン

■めまぐるしく語られる無数の断片  小説を読むという行為を、作家が作った虚構の家にしばし住んでみることだと、比喩(ひゆ)的に語ってみよう。その場合、虚構の家はどこにあるのかといえば、本のなかに最初からあるのではなく、活………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2010年01月17日
[ジャンル]文芸

掏摸 [著]中村文則 

掏摸 [著]中村文則 

■平凡を願いつつ孤立する哀しさ  いわゆるピカレスク小説は日本語でも数多く書かれてきたが、スリを生業とする男を主人公に据えた本小説は、大藪春彦、団鬼六、馳星周といった、この分野の先達がひらいてきた場所に、新たに魅力ある………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2009年11月22日
[ジャンル]文芸

JOHNNY TOO BAD [著]内田裕也 モブ・ノリオ

JOHNNY TOO BAD [著]内田裕也 モブ・ノリオ

■熱気と臭気放つ、これぞ小説  本を手に取った瞬間に、「これはキタかもしれない」と思った。なにしろ本の作りが独特だ。モブ・ノリオの小説と内田裕也の対談集が、無理やりくっつけられて一冊になっている。こうしたケレン味こそ、………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2009年11月15日
[ジャンル]文芸 アート・ファッション・芸能

ピアノ・ノート-演奏家と聴き手のために [著]チャールズ・ローゼン

ピアノ・ノート-演奏家と聴き手のために [著]チャールズ・ローゼン

■「音色」なぜ違う? 疑問が氷解  いまピアノを習っていたり、趣味で弾いたり、あるいは自分では弾かなくともピアノ音楽に関心を持つ人は、とにかく一度は本書を繙(ひもと)くべきだ。十九世紀から二十世紀、いわゆる西洋クラシッ………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2009年10月11日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能

音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 [著]岡田暁生

音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 [著]岡田暁生

■分かる悦び、もたらすものとは  タイトルから想像されるとおり、本書は一種のハウツー本である。あるジャンルの音楽に関して「分かる」「分からない」という言い方があるけれど、本書は、音楽を「分かる」ようになる、つまり、ある………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2009年09月06日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能 新書

ポケットの中のレワニワ 上・下 [著]伊井直行

ポケットの中のレワニワ 上・下 [著]伊井直行

■難民たちの「社会」再生の物語     戦争や飢饉(ききん)などが原因で住む場所を追われた人々を難民と呼ぶわけだが、「住む場所」というのは単なる居住地の意味ではなく、人々が社会生活を送る場所と考えられる。つまり難民とは………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2009年08月02日
[ジャンル]文芸

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代 [著]梅田望夫

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代 [著]梅田望夫

■指さないファンでいいじゃない  将棋ファンといえば、将棋を指すのが好きな人のことだと普通は思うわけなのだけれど、将棋を指さない将棋ファンも世間にはけっこう存在する。かくいう私がそうだ。つまりプロ将棋の観戦を趣味にして………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2009年07月05日
[ジャンル]IT・コンピューター 社会

作家とその亡霊たち [著]エルネスト・サバト

作家とその亡霊たち [著]エルネスト・サバト

■小説考えるヒント、連なる140編  著者のエルネスト・サバトは、訳者の紹介によれば、一九一一年生まれの、アルゼンチンの作家、評論家であり、百歳になろうとする現在までに発表した小説が僅(わず)か三作、評論集もそう数は多………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2009年06月07日
[ジャンル]文芸

このあいだ東京でね [著]青木淳悟

このあいだ東京でね [著]青木淳悟

■物語から離れて都市の風景描く  近代小説はさまざまなスタイルのなかで書かれ、読まれてきたわけであるが、そうしたスタイルの違いを越えて、小説というジャンルをジャンルたらしめている基本的な構造は何かと問うてみる。小説が小………[もっと読む]

[評者]奥泉光(作家)
[掲載]2009年05月03日
[ジャンル]文芸

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