鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)の書評

写真:鴻巣友季子さん

鴻巣友季子 (翻訳家、エッセイスト)
1963年東京都生まれ。翻訳家、エッセイスト。訳書にジョン・クッツェー『恥辱』、トマス・クック『緋色の記憶』、マーガレット・アトウッド『昏き目の暗殺者』、ルル・ワン『睡蓮の教室』、ブロンテ新訳『嵐が丘』、著書に『翻訳のココロ』『明治大正翻訳ワンダーランド』など。

星座から見た地球 [著]福永信

星座から見た地球 [著]福永信

■無数の星々へのやさしいまなざし  福永信は虚構の成り立ちとストイックに向きあってきた作家だ。小説の安易な約束ごとには流されない。さあ、手にとってほしい。あなたのことが書いてある。あなたが生まれる前のこと、子どもの頃の………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年08月22日
[ジャンル]文芸 科学・生物

悪と仮面のルール 中村文則著 人の死、生の歪み、償いはあるのか

悪と仮面のルール 中村文則著 人の死、生の歪み、償いはあるのか

 「悪」のつく小説が最近多い。『「悪」と戦う』『悪貨』、間もなく出る『悪の教典』、そして本書。ここに『悪人』や『1Q84』なども含めて評論すれば、21世紀日本版の「文学と悪」が書けそうだ。  父殺しと自己の抹消を扱った………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年07月25日
[ジャンル]文芸

シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々 [著]ジェレミー・マーサー

シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々 [著]ジェレミー・マーサー

■パリの異邦人を異邦人が活写  カナダの事件記者だった作者がパリで住みついたのは、セーヌ川左岸に立つ風変わりな書店。貧しい作家にただで食事とベッドを与えるその書店とは、伝説の「シェイクスピア&カンパニー」だった。数々の………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年07月18日
[ジャンル]人文 ノンフィクション・評伝

そんな日の雨傘に [著]ヴィルヘルム・ゲナツィーノ 

そんな日の雨傘に [著]ヴィルヘルム・ゲナツィーノ 

■居場所がない男  「箱男」ならぬ「靴男」の登場である。彼は「自分に存在許可を出した覚えがない」と戸惑い、〈消えたい病〉を患っている——安部公房の箱男はある日突然、段ボールの中に入って匿名の存在になったが、ゲナツィーノ………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年07月04日
[ジャンル]文芸

これからの「正義」の話をしようーいまを生き延びるための哲学 [著]マイケル・サンデル

これからの「正義」の話をしようーいまを生き延びるための哲学 [著]マイケル・サンデル

■何が「正しい」か大学の大人気授業  好きになれない異性が「友だちになってくれないと飛び降りる」と自殺を仄(ほの)めかしてきたらどうする? 先月書評した小説『「悪」と戦う』には実際そういう場面が出てくるのだが、ハーバー………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年06月13日
[ジャンル]人文 社会

夜と灯りと [著]クレメンス・マイヤー 

夜と灯りと [著]クレメンス・マイヤー 

■暗いなかに残る生のぬくもり  「彼が街灯りをどんな風に眺めるか教えてくれたらどんな人間かあててみせよう」とホームズが言ったかどうか知らないが、人間が灯りを見つめる姿は、その人の暮らしや生きてきた道のりを冗舌に語る。そ………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年06月06日
[ジャンル]文芸

「悪」と戦う [著]高橋源一郎

「悪」と戦う [著]高橋源一郎

■「本は生物」、実践として表現  私たちの多くが生きているのは、自由選択とそれによる幸福追求の社会だ。古代のように規定された「善」という概念は成立しがたい。ならば、その対語の「悪」とはなにか?——刊行前には、作者自ら毎………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年05月30日
[ジャンル]文芸

ベイツ教授の受難 [著]デイヴィッド・ロッジ

ベイツ教授の受難 [著]デイヴィッド・ロッジ

■セクシーな女学生が指導を請いに  英米文学には「キャンパス・ノベル」という緩やかなジャンルがある。その中でも本書は「地方都市のあまり有名でない大学の、あまり冴(さ)えない文系教授」を主人公にしたコミカルで風刺的なタイ………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年05月09日
[ジャンル]文芸

闇の奥 [著]辻原登

闇の奥 [著]辻原登

■魔境へ…魅入られた者、捜索する者  まず、題名が衝撃的な一つのマジックだ。本作は文芸誌に連作として間断的に発表されたが、その時は全く別の、ばらばらの題名だったはず——それが長編として、コンラッドの『闇の奥』と同名のタ………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年05月02日
[ジャンル]文芸

ナニカアル [著]桐野夏生

ナニカアル [著]桐野夏生

■林芙美子と戦時下の個人の戦い  「私は根っからの詩人だ。詠嘆調の美文を見ると、虫酸(むしず)が走るのをどうにもできない」「嘘吐(うそつ)き、嘘吐き、と言霊(ことだま)が私を痛め付け……」そうつぶやく林芙美子の熱い息を………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年04月18日
[ジャンル]文芸

古書の来歴 [著]ジェラルディン・ブルックス

古書の来歴 [著]ジェラルディン・ブルックス

■修復が明かす500年  「紙の本」が無くなると言われる時代に、この稀覯(きこう)書を巡る歴史ミステリーはあえて書かれた。紙から電子媒体への移行は従容と受け入れるつもりの私だったが、やがてこんな小説も成立し難くなるかと………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年03月28日
[ジャンル]文芸

愛するものたちへ、別れのとき [著]エドウィージ・ダンティカ

愛するものたちへ、別れのとき [著]エドウィージ・ダンティカ

■荒廃を浄化する生命の強健さ  1950年代から現在までの武力抗争の絶えないハイチと、NYブルックリンを舞台に、作者とその伯父一家の歩んだ道のりを描く自伝的小説である。  作中の牧師は、生まれた瞬間から人は死に向けて旅………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年03月07日
[ジャンル]文芸

書物の変―グーグルベルグの時代 [著]港千尋/紙の本が亡びるとき [著]前田塁

書物の変―グーグルベルグの時代 [著]港千尋/紙の本が亡びるとき [著]前田塁

■文字を巡る環境の激変を考察  ブログや電子本、世界規模で物議をかもすグーグルによる書物の電子データ化……文字を巡る環境は今世紀に入って激変し、「グーテンベルグからグーグルへ」などと言い表される。こうした問題を扱う評論………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年02月28日
[ジャンル]文芸 IT・コンピューター

時間のかかる読書―横光利一『機械』を巡る素晴らしきぐずぐず [著]宮沢章夫

時間のかかる読書―横光利一『機械』を巡る素晴らしきぐずぐず [著]宮沢章夫

■ああ!すがすがしいまでの停滞  すばらしい! ロラン・バルトも言ったではないか。一心不乱に読み通すだけが読書ではない。本の面白さに刺戟(しげき)され「顔をあげながらする読書」もあると。本書の著者は、原稿用紙50枚の短………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年02月07日
[ジャンル]文芸

水死 [著]大江健三郎

水死 [著]大江健三郎

■木と水との融和へ、父子三代の生と死  「作家は自身が一冊の本なんだ。一作だけ翻訳しても彼の身体の一部を切りとったにすぎない」——ある欧州の作家/翻訳家にそう言われたことがある。また、「作家の全作品が長い道筋として感知………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2010年01月10日
[ジャンル]文芸

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