松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)の書評

写真:松永美穂さん

松永美穂 (早稲田大学教授・ドイツ文学)
1958年愛知県生まれ。著書に『ドイツ北方紀行』『誤解でございます』、訳書にベルンハルト・シュリンク『朗読者』(毎日出版文化賞特別賞)、ジークフリート・レンツ『遺失物管理所』、マーレーネ・シュトレールヴィッツ『ワイキキ・ビーチ』など。

長い道 [著]宮崎かづゑ

長い道 [著]宮崎かづゑ

■療養所での樹木のような70余年  ハンセン病を発症して10歳のとき(昭和13〈1938〉年)に瀬戸内海にある長島愛生園に入園し、以来70年以上を園内で過ごしてこられた宮崎さんの自伝とエッセー。表題通りの長年の歩みが、………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年09月09日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

家族進化論 [著]山極寿一

家族進化論 [著]山極寿一

■霊長類の社会でいかに、なぜ  気宇壮大な本である。霊長類研究の第一人者である著者が、日本における研究の蓄積や最新の成果を踏まえつつ、霊長類の社会における「家族」の萌芽(ほうが)について、食生活や性行動、育児の仕方など………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年08月19日
[ジャンル]人文 科学・生物

冥土めぐり [著]鹿島田真希

冥土めぐり [著]鹿島田真希

■静かな充足、透明感ある文章  たいへんたいへん、横暴な親が急増中! 世間はともかく、日本語小説の世界ではそう見える。芥川賞前回受賞作の田中慎弥『共喰(ともぐ)い』は暴力的な性癖で周囲を傷つけまくる父親の話だったし、水………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年08月05日
[ジャンル]文芸

ゾンビ日記 [著]押井守

ゾンビ日記 [著]押井守

■不気味で静かな狂気の世界  東京の町を、ゾンビが徘徊(はいかい)している光景を想像してみよう。ただ無表情に、ぞろぞろと。行けども行けどもゾンビばかりで、生者は自分一人。そのことに気づいたとき、あなたならどうするだろう………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年07月22日
[ジャンル]文芸

女が嘘をつくとき [著]リュドミラ・ウリツカヤ

女が嘘をつくとき [著]リュドミラ・ウリツカヤ

■変わるロシア 嘘の中に真実  虚言癖のある人に、わたしも出会ってしまったことがある。いろいろと約束をして予定を立てた後、相手がいい加減なことを言っていただけとわかったときの失望と脱力感! 自分の言葉に責任をとらない人………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年07月15日
[ジャンル]文芸

恩地孝四郎 一つの伝記 [著]池内紀

恩地孝四郎 一つの伝記 [著]池内紀

■「温和な革新者」の創作の秘密  美しい本である。「本は文明の旗だ。その旗は当然美しくあらねばならない」と述べた恩地にふさわしい。カバーは両面カラー印刷で、真ん中の数センチを開けて上下から折り返されている。カバーに印刷………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年07月01日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能

居心地の悪い部屋 [編訳]岸本佐知子

居心地の悪い部屋 [編訳]岸本佐知子

■想像力に食い入る創造的短編集  タイトルどおり、相当な居心地の悪さ。奇妙で不気味な短編ぞろいで、ここまでそろうと「おみごと!」と叫びたくなる。暴力的シーンの連続、というような悪趣味な恐ろしさではない。むしろ人間という………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年06月17日
[ジャンル]文芸

雲をつかむ話 [著]多和田葉子

雲をつかむ話 [著]多和田葉子

■「犯人」たちに入り込んでいく  「物事の漠然としてとらえどころのないさま」。「雲をつかむ」の語義として広辞苑にはこう書かれている。そんなタイトルにふさわしく、本書にはふわふわと浮遊するような不思議なエピソードが盛りだ………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年06月10日
[ジャンル]文芸

母の遺産―新聞小説 [著]水村美苗

母の遺産―新聞小説 [著]水村美苗

■娘の苦しみ含め、三代の大河小説  最近は嫁姑(しゅうとめ)よりも、実の母娘の関係の方が難しかったりするようだ。昨今話題の「墓守娘」についての本などを読むと、切実にそう思ってしまう。老後は息子よりも娘に見てほしいと願う………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年05月13日
[ジャンル]文芸

未来国家ブータン [著]高野秀行

未来国家ブータン [著]高野秀行

■他の国とはまるで違う進化  昨年の国王夫妻の来日以来かなりのブームを巻き起こしているブータン。ヒマラヤの小国なのに国民の幸福度は世界一ともいわれ、そのユニークな国情に注目が集まっている。当然、さまざまな「ブータン本」………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年05月06日
[ジャンル]人文 国際

キレイならいいのか ビューティ・バイアス [著]デボラ・L・ロード

キレイならいいのか ビューティ・バイアス [著]デボラ・L・ロード

■なぜ女性だけ外見を問われるの  著者はスタンフォード大学で法律を講じる女性の教授。いつもセーターにコール天パンツという地味な服装だったが、大学の研究所長に就任した途端にファッションチェックが入り始めた、という個人的な………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年04月29日
[ジャンル]社会

批評とは何か [著]T・イーグルトン/M・ボーモント

批評とは何か [著]T・イーグルトン/M・ボーモント

■率直に語る、総括にして入門の書  いったい、どのくらいの時間をかけたのだろう。本書を手にして、まずそう思った。何しろ、五〇〇ページ近い長大なインタビューなのだ。何週間、何カ月? とにかく時間をかけてじっくりと話を聞き………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年04月22日
[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

女中がいた昭和 [編]小泉和子

女中がいた昭和 [編]小泉和子

■待遇、背景は? 多角的に考察  昨年、「家政婦のミタ」というドラマが大ヒットしたことは記憶に新しい。家族の中の他人、という家政婦の微妙な立場をテーマにしたドラマは多いが、「家政婦の〜」では有能だけれどロボットのような………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年04月15日
[ジャンル]歴史

共喰い [著]田中慎弥

共喰い [著]田中慎弥

■豪雨の前、父と息子に高まる緊張  いま話題の芥川賞受賞作を収めた一冊。表題作は70ページほどの短編だが、長編小説のような読みごたえだ。  河口付近の集落が舞台になっている。女性の「割れ目」に喩(たと)えられる川には、………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年02月19日
[ジャンル]文芸

領土 [著]諏訪哲史

領土 [著]諏訪哲史

■小説なのか?可能性に挑む  文学の世界に静かに殴り込みをかける、意欲的な短編集だ。  「幻視」や「残影」に貫かれた一冊。徹底して一人称の語り手によって語られる本書の世界は、短編ごとに舞台を変えながら、迷宮の相貌(そう………[もっと読む]

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)
[掲載]2012年01月29日
[ジャンル]文芸

ここに掲載されている記事や書評などの情報は、原則的に初出時のものです。

ページトップへ戻る