小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)の書評

写真:小野正嗣さん

小野正嗣 (作家・明治学院大学准教授)
1970年大分県生まれ。比較文学者(現代フランス語圏)。著書に『水に埋もれる墓』(朝日新人文学賞)『にぎやかな湾に背負われた船』(三島由紀夫賞)『森のはずれで』『マイクロバス』『浦からマグノリアの庭へ』『獅子渡り鼻』など。共訳書に『ミゲル・ストリート』『ガラスの宮殿』など。

マリッジ・プロット [著]ジェフリー・ユージェニデス

マリッジ・プロット [著]ジェフリー・ユージェニデス

■不安定で傷つきやすい若者たち  一見スノッブな小説だ。主人公たちはアメリカ東海岸の名門ブラウン大学の学生である。主人公の文学少女マデリン、大柄で才気煥発(さいきかんぱつ)の皮肉屋レナード、思慮深く内気なミッチェルの3………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年05月19日
[ジャンル]文芸

もうひとつの街 [著]ミハル・アイヴァス

もうひとつの街 [著]ミハル・アイヴァス

■無意識の王国へさまよいだす  しばらく前からひとつの噂(うわさ)が囁(ささや)かれているようだ。  1冊の不思議な本がいま書店の棚で息を潜めている。収められた言葉が読者の視線に触れるときに生じるあまりの快楽と衝撃ゆえ………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年05月05日
[ジャンル]文芸

とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢 [著]ジョイス・キャロル・オーツ [訳]栩木玲子

とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢 [著]ジョイス・キャロル・オーツ [訳]栩木玲子

■少女の狂気と日常のゆがみ  フランスのゴンクール賞作家に「好きな作家は?」と尋ねると、真っ先にあがったのがオーツだった。長いキャリアを持ち、ノーベル賞候補にも名を連ねるが、日本ではあまり知られていないアメリカ屈指の大………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年04月28日
[ジャンル]文芸

冬の旅 [著]辻原登

冬の旅 [著]辻原登

■転落する人生辿り問いかける  小説なんて所詮(しょせん)作り話の他人事(ひとごと)である。なのにそれが、漠然と誰もが感じている時代の空気を、どんな言葉よりリアルに感じさせる。だからいま我々は『冬の旅』を読まなければな………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年03月24日
[ジャンル]文芸

フリーダム [著]ジョナサン・フランゼン

フリーダム [著]ジョナサン・フランゼン

■壊れゆく家族で〈不自由さ〉描く  小説は何のために読まれるのか? 娯楽? 暇つぶし? 自分が主役の自由な世界をせっせと拡張すべく、スマホの画面の上を滑らせるのに忙しい指先には潰すだけの暇すらないのだから、現代のアメリ………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年03月10日
[ジャンル]文芸

(霊媒の話より)題未定 安部公房初期短編集 [著]安部公房

(霊媒の話より)題未定 安部公房初期短編集 [著]安部公房

■巨大な〈名〉の背後の〈!?〉な世界  文学部で教えていて恐ろしいことがある。安部公房の名前をあげても、〈?〉顔の学生ばかり。いや、この反応に〈!〉顔の教師だって作家の全貌(ぜんぼう)を知っているわけではない。でも学生………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年02月24日
[ジャンル]人文

デイヴィッドの物語 [著]ゾーイ・ウィカム

デイヴィッドの物語 [著]ゾーイ・ウィカム

■闇の底から浮かび重なる声  舞台は、ネルソン・マンデラ釈放後の1991年の南アフリカ共和国である。おそらくこの国ほど文学が国民の〈声〉となることが困難な土地はないだろう。長年にわたって人種隔離(アパルトヘイト)政策で………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年02月10日
[ジャンル]文芸

abさんご [著]黒田夏子

abさんご [著]黒田夏子

■読むことの不自由さからの解放  〈読む〉とはどのような行為なのか? 画面をありのままに見ることの困難さを繰り返し述べてきた国際的な映画批評家・蓮實重彦氏が映画について述べたことは、文学にも当てはまる。我々は読んでいる………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年02月03日
[ジャンル]文芸

フランス組曲 [著]イレーヌ・ネミロフスキー

フランス組曲 [著]イレーヌ・ネミロフスキー

■戦時下の人間描く一大絵巻  1940年6月、ナチスドイツはフランスに侵攻する。フランス軍は敗走を重ね、パリをはじめとする北部はドイツ軍に占領される。道から溢(あふ)れ出すほどの避難民の波。パリの裕福なペリカン一家もそ………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年01月20日
[ジャンル]文芸

われらが背きし者  [著]ジョン・ル・カレ

われらが背きし者  [著]ジョン・ル・カレ

■スパイ小説、語りに仕掛け  オックスフォードの元教員ペリーは彼の恋人で弁護士のゲイルと訪れたカリブ海のリゾート地で、ロシア人の富豪ディマからテニスの試合を申し込まれる。だが、武装した護衛に守られ、5人の子供たちと信心………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2013年01月06日
[ジャンル]文芸

ことり [著]小川洋子

ことり [著]小川洋子

■片隅に生きる慎ましい存在たち  我々は小鳥のさえずりを美しいと聴き入っても、その声を発する一羽一羽の物語を想像するまでには至らない。小鳥たちはかくも我々の身近にありながらかくも名もなき存在である。だが我々一人一人の生………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2012年12月09日
[ジャンル]文芸

2666 [著]ロベルト・ボラーニョ

2666 [著]ロベルト・ボラーニョ

■小説を怪物にする死と詩情と俗悪さ  〈寂寞(せきばく)〉ではなく、〈寂漠〉という文字が思い浮かんだ。寂しさの砂漠あるいは砂漠の孤独。チリに生まれ、青年期に母国の軍事クーデターに遭遇、メキシコ、フランス、スペインを渡り………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2012年11月18日
[ジャンル]文芸

無声映画のシーン [著]フリオ・リャマサーレス

無声映画のシーン [著]フリオ・リャマサーレス

■写真から甦る 忘れえぬ風景  スペインの作家がある日、北部の一地方の鉱山が閉鎖されることを知る。そこは彼が少年の頃に10年ほど暮らした山間の町でもあった。産業を失った町の末路を知る作家は深い郷愁にとらわれ、炭坑町で撮………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2012年10月07日
[ジャンル]人文

タイガーズ・ワイフ [著]テア・オブレヒト

タイガーズ・ワイフ [著]テア・オブレヒト

■勇猛な想像力で普遍性もつ異郷  読後、吠(ほ)えたくなった。あまりにも悲しいから。なのに腹が立つほどパワフルで魅惑的だから。  作者のテア・オブレヒトは、旧ユーゴスラビア出身で思春期にアメリカに移住した女性作家。デビ………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2012年09月30日
[ジャンル]文芸

黄金の少年、エメラルドの少女 [著]イーユン・リー

黄金の少年、エメラルドの少女 [著]イーユン・リー

■社会のひずみ映し、魂に触れる    本書は、村上春樹も受賞したフランク・オコナー国際短編賞の一回目の受賞者であり、いまや国際的評価の高い中国系英語作家イーユン・リーの短編集である。英語圏では英語を母語としない作家たち………[もっと読む]

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)
[掲載]2012年09月16日
[ジャンル]文芸

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