星野智幸(小説家)の書評

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星野智幸 (小説家)
1965年米ロサンゼルス生まれ。2年半の新聞記者生活を経て、メキシコへ留学。主な著書に『最後の吐息』(文藝賞)、『目覚めよと人魚は歌う』(三島由紀夫賞)、『ファンタジスタ』(野間文芸新人賞)、『俺俺』(大江健三郎賞)、『夜は終わらない 』など。

ジャッカ・ドフニ―海の記憶の物語 [著]津島佑子

ジャッカ・ドフニ―海の記憶の物語 [著]津島佑子

■繰り返す迫害への静かな怒り  文学とは、つらい現実から逃避する場ではなく、そんな現実と戦う現場であり、読み手にその力をもたらすものだと教えてくれた作家が、津島佑子だった。遺作の本書も、強靱(きょうじん)な力を与えてく………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年05月15日
[ジャンル]文芸 社会

手話を生きる―少数言語が多数派日本語と出会うところで [著]斉藤道雄

手話を生きる―少数言語が多数派日本語と出会うところで [著]斉藤道雄

■ろう者の表現を取り戻すために  「ろう者とは、日本手話という、日本語とは異なる言語を話す、言語的少数者である」  本書の中ほどで紹介されている、ろう者による1995年のこの輝かしい宣言を読んだとき、私にとって世界は急………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年05月01日
[ジャンル]政治 社会 ノンフィクション・評伝

我々の恋愛 [著]いとうせいこう

我々の恋愛 [著]いとうせいこう

■欲望のからむ三角関係を崩して  欲望の三角形という言葉をご存知だろうか。ルネ・ジラールという思想家の説で、自分が何かを欲望するのは、他人がそれを欲望するからだという原理。例えば夏目漱石の『こころ』で、「先生」が「お嬢………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年04月24日
[ジャンル]文芸

ミッドナイト・ジャーナル [著]本城雅人

ミッドナイト・ジャーナル [著]本城雅人

■新聞記者はどうして必要なのか  今や新聞は、読まれないだけでなく、信頼されない。新聞記者として社会人の経歴をスタートさせた私でも、今の新聞は組織を守ることに追い込まれ、どちらを向いているかわからない報道をしがちだと感………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年04月10日
[ジャンル]文芸

夜、僕らは輪になって歩く [著]ダニエル・アラルコン

夜、僕らは輪になって歩く [著]ダニエル・アラルコン

■ペルー内戦、損なわれた心の記録  ペルーのロスト・ジェネレーション(失われた世代)を描いた本作は、これから我々が失うものを予言している。  ペルーでは1980年代から90年代初頭にかけて、極左組織による無差別テロの嵐………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年03月06日
[ジャンル]文芸

へろへろ―雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々 [著]鹿子裕文

へろへろ―雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々 [著]鹿子裕文

■笑いと怒りの老人ホーム建設記  腹の底から愉快な気分になりたいけれど、今の世の厳しい現実を見下すような笑いはゴメンだ、とお悩みの方には、本書を勧める。  認知症の高齢者を管理するのでなく、その混乱にただつき合うという………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年02月28日
[ジャンル]政治 医学・福祉 社会

台湾生まれ 日本語育ち [著]温又柔

台湾生まれ 日本語育ち [著]温又柔

■母語というルーツを探る旅  限りなく小説に近いエッセイの秀作だ。フィクションという意味ではなく、言葉では説明できないこの社会での力関係やマイナーな感覚を、それでも言葉で示そうと格闘し、成し遂げた文章だからだ。  両親………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年02月21日
[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

図書館大戦争 [著]ミハイル・エリザーロフ

図書館大戦争 [著]ミハイル・エリザーロフ

■現実を塗り替える読書の魔力  この作家は、言葉の呪術的な力を熟知している。麻薬のような本書は、書物自体が教祖と化して、いくつもの教団が形成され、謀略と裏切りに満ちた血なまぐさい抗争を繰り広げる物語だ。その教団は「図書………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年02月07日
[ジャンル]文芸

ムシェ 小さな英雄の物語 [著]キルメン・ウリベ

ムシェ 小さな英雄の物語 [著]キルメン・ウリベ

■移民や難民支えた庶民たちの叙事詩    日本の文学を読んでいて、常々、決定的に欠けていると感じる分野がある。移民や難民の小説である。在日朝鮮人だけでなく、日本には少なくない数の、ルーツを異にする移民、難民が存在してい………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年01月31日
[ジャンル]文芸

プーチンの実像—証言で暴く「皇帝」の素顔 [著]朝日新聞国際報道部 駒木明義、吉田美智子、梅原季哉

プーチンの実像—証言で暴く「皇帝」の素顔 [著]朝日新聞国際報道部 駒木明義、吉田美智子、梅原季哉

■強権志向者が抱える孤独  長らくチェチェン紛争からロシアを見てきた私には、最高権力者であるプーチンとは、強権志向の半独裁者であり、暗殺の横行する社会を許す冷血漢だと映っていた。なぜロシアの人々はそんな指導者を求めるの………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2016年01月10日
[ジャンル]政治 社会 国際

誰が「橋下徹」をつくったか―大阪都構想とメディアの迷走 [著]松本創

誰が「橋下徹」をつくったか―大阪都構想とメディアの迷走 [著]松本創

■「言葉」を乗っ取られた社会  「彼が政治家になった7年半で、ずいぶん荒っぽい言葉が社会に蔓延(まんえん)するようになった。それまではネットの中にとどまっていた攻撃的で排他的、汚い言葉遣いで誰かを罵(ののし)るような人………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2015年12月20日
[ジャンル]政治 社会

脳はすごい ある人工知能研究者の脳損傷体験記 [著]クラーク・エリオット

脳はすごい ある人工知能研究者の脳損傷体験記 [著]クラーク・エリオット

■意識下の「自分」との出会い  例えば駐車場の車まで歩くのに、まず右足を出して、次に左足を出して、また右、そして左、などと意識しなくてはならないとしたら、日常はとてつもなく重くなるだろう。  この本の著者は、車の追突事………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2015年12月13日
[ジャンル]科学・生物 ノンフィクション・評伝

K—消えた娘を追って [著]ベルナルド・クシンスキー [訳]小高利根子

K—消えた娘を追って [著]ベルナルド・クシンスキー [訳]小高利根子

■虐殺はこうして生み出される  1970年代半ば、軍政時代のブラジル。サンパウロ大学助教授の女性が失踪し、その父で作家のKが捜索を始める。まず近所の人々に相談すると、警察に伝手(つて)があるという者が何人か現れる。そこ………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2015年11月29日
[ジャンル]文芸

Masato [著]岩城けい

Masato [著]岩城けい

■異国の地、母の孤独と子の成長  タイトルでもある語り手の真人は、父親の転勤により、12歳前後でオーストラリアに引っ越し、英語ができれば将来有利だからという理由で、現地の小学校に入れられる。最初は話せずにからかわれた英………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2015年10月18日
[ジャンル]文芸

あなたを選んでくれるもの [著]ミランダ・ジュライ

あなたを選んでくれるもの [著]ミランダ・ジュライ

■自分が他ならぬ、自分である奇跡  例えばメキシコの市場で、身動きもとれないほどの人波にもまれながら、はてしない永遠の感覚にとらわれてめまいを覚えることがある。私は仕事に疲れ、日本社会に疲れ、つかの間の離脱を求めて、メ………[もっと読む]

[評者]星野智幸(小説家)
[掲載]2015年10月04日
[ジャンル]人文 社会

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