鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)の書評

写真:鴻巣友季子さん

鴻巣友季子 (翻訳家、エッセイスト)
1963年東京都生まれ。翻訳家、エッセイスト。訳書にジョン・クッツェー『恥辱』、トマス・クック『緋色の記憶』、マーガレット・アトウッド『昏き目の暗殺者』、ルル・ワン『睡蓮の教室』、ブロンテ新訳『嵐が丘』、著書に『翻訳のココロ』『明治大正翻訳ワンダーランド』など。

カデナ [著]池澤夏樹 

カデナ [著]池澤夏樹 

■68年4人のひと夏、重い題材軽やかに  ここ数年、池澤氏が個人編集を行ってきた世界文学全集には、母国・母語を離れて書く越境作家が多く選ばれ、旧来の西洋古典とは違うコンセプトで話題だが、本書でも描かれるのは、人種、文化………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年12月06日
[ジャンル]文芸

マーク・トウェインの投機と文学 [著]チャールズ・H・ゴールド

マーク・トウェインの投機と文学 [著]チャールズ・H・ゴールド

■お金に魅入られた作家の実像  素朴な筏(いかだ)でミシシッピ河を下るハックルベリーの生活は、自由と平等のシンボルでもある。自然を愛し経済社会を皮肉る朗らかなユーモア作家。それが一般読者にとってトウェインのイメージだが………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年11月22日
[ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝

若い芸術家の肖像 [著]ジェイムズ・ジョイス 

若い芸術家の肖像 [著]ジェイムズ・ジョイス 

■みずみずしさ、新訳でさらに  「むかし むかし、そのむかし、とても たのしい ころのこと……」と、幼児語のお話に始まり、「古代の父よ、古代の藝術(げいじゅつ)家よ、永遠に力を与えたまえ」と、作家を目指す神学生の日記で………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年11月15日
[ジャンル]文芸

女中譚 [著]中島京子 

女中譚 [著]中島京子 

■本歌取り連作、語り手替われば  オフィーリアは恋人役なのにハムレットの10分の1ぐらいしか台詞(せりふ)がないそうだが、名作の中には「喋(しゃべ)らせてみたい沈黙(寡黙)の人物」というのが時々いる。中島京子は目の付け………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年10月11日
[ジャンル]文芸

ヘヴン [著]川上未映子

ヘヴン [著]川上未映子

■答えの出ない「善悪」に直球勝負  本作における作風の変貌(へんぼう)ぶりには心底驚いた。川上未映子といえば、ごく尖鋭(せんえい)な言語感覚の持ち主だが、一方、そうした細かいデリカシーをいつか抜け出して、より広いフィー………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年09月20日
[ジャンル]文芸

グランド・マザーズ [著]ドリス・レッシング

グランド・マザーズ [著]ドリス・レッシング

■緊密な文体で抑制の美学発揮  2007年、長年ノーベル文学賞「候補」に挙げられてきた英国作家レッシングが、同賞最高齢の88歳でついに受賞した。『黄金のノート』などで名は知られながら、邦訳書は意外と少ない。受賞を機に、………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年09月06日
[ジャンル]文芸

終の住処/世紀の発見 [著]磯崎憲一郎

終の住処/世紀の発見 [著]磯崎憲一郎

■巧みな文体、輪郭ぼやけた時間  磯崎憲一郎の小説に流れる「時間」はふしぎな形(なり)をしている。時間はある処(ところ)では無いがごとく希薄であり、ある処では異様に凝縮されているのだ。  芥川賞受賞作「終の住処」の勤め………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年08月23日
[ジャンル]文芸

夜想曲集―音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 [著]カズオ・イシグロ

夜想曲集―音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 [著]カズオ・イシグロ

■人を隔てる「壁」、滑稽さで描く  若い頃ミュージシャンを目指したという作者初の短編集だ。  各編には色々な「音楽家」が登場する。往年の大物歌手、無名のバックプレーヤー、夢を諦(あきら)めてスターと結婚した女……。そこ………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年07月26日
[ジャンル]文芸

f植物園の巣穴 [著]梨木香歩

f植物園の巣穴 [著]梨木香歩

■すべては長雨の夜の歯痛から  穴は、人を誘う。オルフェウスの神話から、おむすびころりん、村上春樹の井戸のモチーフなど、穴に引かれる話は数知れず。穴は異界への入り口だ。  梨木香歩といえば、前作『裏庭』では植物の鬱蒼(………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年07月12日
[ジャンル]文芸

1Q84 BOOK 1・2 [著]村上春樹 

1Q84 BOOK 1・2 [著]村上春樹 

■「根源悪」を追究、何かが変わった  なにか吹っ切れた感じがする。あのとき感じた「意志」は実践されたのだ——7年ぶりの新作長編を読みだしてすぐにそう思った。前作の中編『アフターダーク』には、深い森から踏みだす決意のよう………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年06月07日
[ジャンル]文芸

ハーンと八雲 [著]宇野邦一

ハーンと八雲 [著]宇野邦一

■境界を行き来し自在に素描  ハーンといえば、怪談などの再話を通して日本を世界に紹介した文学者小泉八雲として広く認識されている。しかし本書が提案するのは、「ハーンを少し〈日本〉から解放して読む」ことである。八雲はハーン………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年05月24日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

やんごとなき読者 [著]アラン・ベネット

やんごとなき読者 [著]アラン・ベネット

■女王陛下が読書熱にとりつかれ  なんとチャーミングな本だろう。英国の女王陛下が齢(よわい)八十近くにして突如、猛烈な読書熱にとりつかれるという、オプシマス(晩学者)の目覚めを描いた王室コメディー。王室風刺はイギリス文………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年05月03日
[ジャンル]文芸

墜ちてゆく男 [著]ドン・デリーロ

墜ちてゆく男 [著]ドン・デリーロ

■テロを生き延びたあとの世界で  また一冊、「文学になにができるか」を問うような小説が翻訳された。本書の題材は、9・11テロ。ここに、ユダヤ系哲学者アドルノの「アウシュビッツを経た今、詩を書くことは野蛮である」という言………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年04月12日
[ジャンル]文芸

ねたあとに [著]長嶋有 

ねたあとに [著]長嶋有 

■延々うだうだの果て、脱力爆弾の威力  アフリカの子らが餓死している時に己の文学は無力だとかつてサルトルは言った。と、先月この書評欄で書いたが、再び書く。『ねたあとに』は芥川賞作家が大江健三郎賞受賞後、朝日新聞に連載し………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年03月22日
[ジャンル]文芸

機械という名の詩神 [著]ヒュー・ケナー

機械という名の詩神 [著]ヒュー・ケナー

■テクノロジーこそがつくった文学    日本でのワープロ最初期を思い起こせば、「機械で書いたものに魂がこもるか?」などの批判があった。今は「パソコン・ケータイが小説のあり方を変えるか?」という議論が盛んだ。本書は、19………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年03月08日
[ジャンル]文芸 人文

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