田中貴子(甲南大学教授)の書評

写真:田中貴子さん

田中貴子 (甲南大学教授)
1960年京都府生まれ。甲南大学教授。専門は国文学(中世文学)。著書に『〈悪女〉論(『悪女伝説の秘密』に改題)』『あやかし考―不思議の中世へ』(サントリー学芸賞)『日本ファザコン文学史』『安倍晴明の一千年』『百鬼夜行の見える都市』『検定絶対不合格教科書古文』など。

はじめの穴 終わりの口 [著]井坂洋子

はじめの穴 終わりの口 [著]井坂洋子

■静かに生を刻みつけるために  ことん。小さな硬い玉が、お腹(なか)の下のほうでかすかに鳴る。気にしないで書き物をしていると、ささっ、と首筋を撫(な)でてゆく小さな風を察する。いつもの生活。なのに、こんな感じを抱くのは………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2011年01月23日
[ジャンル]文芸

デカルトの骨―死後の伝記 [著]ラッセル・ショート

デカルトの骨―死後の伝記 [著]ラッセル・ショート

■「近代」との歩み、頭蓋骨までも  虎は死して皮を残す、という。では、人間は? 業績、著書、あるいは伝説だろうか。いや、そんなものは時の移ろいの中でははかない。確実に残る、といえるのは、骨、だけである。  『方法序説』………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2011年01月09日
[ジャンル]人文 ノンフィクション・評伝

ゴーレムの生命論 [著]金森修

ゴーレムの生命論 [著]金森修

■人工生命体、なぜ「怪物」化される  歌人・西行が死体の骨の片々を集めて「人」を造った、という話が中世の説話集『撰集抄(せんじゅうしょう)』にある。しかし、秘法を駆使して造った「人」は風流を解さず、言語を持たない「もの………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年12月05日
[ジャンル]科学・生物 新書

京都の近代と天皇 御所をめぐる伝統と革新の都市空間一八六八—一九五二 [著]伊藤之雄

京都の近代と天皇 御所をめぐる伝統と革新の都市空間一八六八—一九五二 [著]伊藤之雄

■親しまれ男女密会の場にも  「次の天皇の即位は京都御所で行われます」。京都御苑の隣にある中学校の生徒だった私は、社会科の授業でそんな話を聞いたことがある。そのためか、即位の礼が皇居で行われたとき、少しだけ違和感を抱い………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年11月21日
[ジャンル]歴史 政治

昭和の創作「伊賀観世系譜」―梅原猛の挑発に応えて [著]表章

昭和の創作「伊賀観世系譜」―梅原猛の挑発に応えて [著]表章

■批判のための批判、超越した遺作  不世出の能役者にして能作者の世阿弥については知っているが、その父である観阿弥のことを問われて即答できる人は能楽ファン以外には多くない。観阿弥の出身地はどこ?という質問に明確な答えを返………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年11月07日
[ジャンル]歴史 アート・ファッション・芸能

今夜は最高な日々 [著]高平哲郎著 

今夜は最高な日々 [著]高平哲郎著 

■こんな時代があったのだ  1980年代、土曜日の夜中を騒がせたテレビ番組があった。タモリがホスト役を務め、ゴージャスなゲストが毎回登場するバラエティー、その名も「今夜は最高!」である。80年代は評者の20代とぴったり………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年10月24日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能 ノンフィクション・評伝

オスは生きてるムダなのか [著]池田清彦 

オスは生きてるムダなのか [著]池田清彦 

■メスだけで生殖できる生き物も  こんにちは。子どもなんでも相談室です。今日のご相談は小学5年生の男子からいただきました。「テレビ番組で、メスだけで子孫を残すことのできる魚を見ました。ということは、オスは必要ないのでし………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年10月03日
[ジャンル]科学・生物 ノンフィクション・評伝

アッシジの聖フランチェスコ [著]ジャック・ルゴフ

アッシジの聖フランチェスコ [著]ジャック・ルゴフ

■「私」による聖人像、史料を精査し描く  世界の観光客が訪れ続けるイタリアの町、アッシジ。風光明媚(ふうこうめいび)な都市は、中世の聖人、フランチェスコゆかりの土地でもある。アッシジのフランチェスコといえば、日本人にも………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年09月26日
[ジャンル]歴史 人文 新書

世界で最も危険な書物-グリモワールの歴史 [著]オーウェン・デイビーズ

世界で最も危険な書物-グリモワールの歴史 [著]オーウェン・デイビーズ

■古代から現代へ魔術書の謎追う  夕暮れ方、ふと立ち寄った古書店の片隅で見つけた見慣れない本。開いてみると呪文らしきものや奇妙な図形が……。これはもしや魔術書ではないか。そう、世界中のすべてのことが叶(かな)うという書………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年09月19日
[ジャンル]人文 ノンフィクション・評伝

千野香織著作集 [著]千野香織 

千野香織著作集 [著]千野香織 

■研究者の人生、詰まった1冊  美術史の枠を超え、ジェンダー論や近代における「美術」の問題を提起し続けた千野香織氏。氏の没後8年半を経て、ようやく著作集が刊行されたことを喜びたい。  収載されているのは、論文やアンケー………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年09月05日
[ジャンル]文芸 アート・ファッション・芸能

神父と頭蓋骨 北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展 [著]アミール・D・アクゼル著 

神父と頭蓋骨 北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展 [著]アミール・D・アクゼル著 

■宗教家と科学者の間を生きる  古い骨のかけらが、歴史を変えることがある。  北京原人の頭蓋骨(ずがいこつ)は、サルからヒトへの進化の過程を証明する重要な手がかりという。カトリックが認知していない進化論を信奉するテイヤ………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年08月29日
[ジャンル]科学・生物 ノンフィクション・評伝

蕪村へのタイムトンネル [著]司修 

蕪村へのタイムトンネル [著]司修 

■俳人と「ぼく」の半生が重なる  俳人の蕪村は摂津国生まれだが、20歳の頃江戸へ出るまでの経歴がよくわかっていない。  戦前生まれの「ぼく」は、1975年、大井川河口に向かうが、何を間違ったのか焼津港に行き着く。蕪村の………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年08月08日
[ジャンル]文芸

国語辞書一〇〇年 日本語をつかまえようと苦闘した人々の物語 倉島長正著

国語辞書一〇〇年 日本語をつかまえようと苦闘した人々の物語 倉島長正著

■日本語体系化の軌跡  辞書とは引くものではなく、読むものである。芥川龍之介が大槻文彦の編纂(へんさん)になる『言海』を「読む」楽しみを語っていたことは有名で、これで「よく寝るから寝子(ねこ)」という「猫」の語源の解釈………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年07月25日
[ジャンル]文芸 人文

ペンギン・ハイウェイ [著]森見登美彦 

ペンギン・ハイウェイ [著]森見登美彦 

■未知なるものに分け入る少年  郊外に住む小学4年生の「ぼく」は、まだ海を見たことがない。なのに、街には突然ペンギンが出没する。どうやら歯科医院の「お姉さん」がその現象にかかわっているらしい……。  京都も大学生も出て………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年07月18日
[ジャンル]文芸

禅問答入門 [著]石井清純 

禅問答入門 [著]石井清純 

■模範解答というものはない  「禅問答」といえば、難解なことのたとえとして知られる。藤原定家の技巧に富んだ和歌を揶揄(やゆ)して「達磨(だるま)歌」と称したのが古い例だ。ちなみに、「達磨」とは禅宗の一派の祖師である。 ………[もっと読む]

[評者]田中貴子(甲南大学教授)
[掲載]2010年07月04日
[ジャンル]文芸 人文

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