原武史(放送大学教授・政治思想史)の書評

写真:原武史さん

原武史 (放送大学教授・政治思想史)
はら・たけし。1962年東京都生まれ。近現代の天皇・皇室研究のほか、鉄道や団地などの「空間政治学」を提唱。著書に『「民都」大阪対「帝都」東京』(サントリー学芸賞)『滝山コミューン一九七四』(講談社ノンフィクション賞)『昭和天皇』(司馬遼太郎賞)など。

武者小路実篤とその世界 [著]直木孝次郎

武者小路実篤とその世界 [著]直木孝次郎

■90歳代でなお鋭い仮説を提起  直木孝次郎の名を初めて知ったのは、1964年発表の「持統天皇と呂(りょ)太后」という論文であった。天武天皇とその皇后だった持統天皇が、漢の皇帝高祖(劉邦)とその皇后の呂后を意識していた………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2016年05月29日
[ジャンル]歴史 人文 ノンフィクション・評伝

シニア左翼とは何か [著]小林哲夫

シニア左翼とは何か [著]小林哲夫

 昨年夏から秋にかけて、国会前には連日のように安保関連法案に反対する人々が集まった。そこで注目されたのはSEALDs(シールズ)と呼ばれる大学生たちであったが、人数では60代以上の世代の方がまさっていた。著者は彼らを「シ………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2016年05月08日
[ジャンル]社会

温泉妖精 [著]黒名ひろみ

温泉妖精 [著]黒名ひろみ

 ラーメンについて辛口の評価を下すブログで点数の高い店に行ったら、大した味でなくがっかりした——この種の体験をした人もいるだろう。本書の主人公の女性は、ゲルググというハンドルネームをもつ男性の温泉に関する辛口のブログを愛………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2016年04月10日
[ジャンル]文芸

バラカ [著]桐野夏生

バラカ [著]桐野夏生

■震災の暗黒郷を描き、時代を照らし出す  あの日の震災で、福島第一原発がすべて爆発した。東京は避難勧告地域に指定されて住民は西に逃げた。首都機能は大阪に移り、天皇も京都御所に移住した。2020年のオリンピックは大阪に開………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2016年03月27日
[ジャンル]文芸 社会

たんぽぽ団地 [著]重松清

たんぽぽ団地 [著]重松清

■時空を超える不思議な一体感  児童文学作家の古田足日(たるひ)は1972年に『ぼくらは機関車太陽号』を出版した。「赤旗日曜版」に掲載されたこの物語は、学校行事について自ら考え行動する団地の小学生たちを主人公とし、彼ら………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2016年03月20日
[ジャンル]文芸

わが記憶、わが記録—堤清二×辻井喬オーラルヒストリー [編]御厨貴・橋本寿朗・鷲田清一

わが記憶、わが記録—堤清二×辻井喬オーラルヒストリー [編]御厨貴・橋本寿朗・鷲田清一

■自覚的に背負った矛盾とユートピア  晩年の辻井喬さんに何度かお会いしたことがある。御茶ノ水や銀座や北京のホテルで、私が勤める大学の大教室で、さらには朝鮮学校無償化除外に反対する会場などで対話を重ねてきた。  もっぱら………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2016年02月21日
[ジャンル]人文 ノンフィクション・評伝

都市と暴動の民衆史―東京・1905—1923年 [著]藤野裕子

都市と暴動の民衆史―東京・1905—1923年 [著]藤野裕子

■暴力を誘発、「男らしさ」の論理  1905年、日露戦争の講和条約に反対する集会をきっかけとして、日比谷焼打(やきうち)事件が起こった。この事件から18年の米騒動までの間、東京をはじめとする都市では民衆暴動が相次いだ。………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2016年02月07日
[ジャンル]歴史

初日への手紙 2―『紙屋町さくらホテル』『箱根強羅ホテル』のできるまで [著]井上ひさし

初日への手紙 2―『紙屋町さくらホテル』『箱根強羅ホテル』のできるまで [著]井上ひさし

■天皇の密使を柱に戦争末期再現  一昨年に公開された「昭和天皇実録」には、1945年6月12日、「海軍戦力査閲使長谷川清に謁(えつ)を賜(たま)い、第一回・第二回の戦力査閲に関する復命を受けられる」とある。同年7月18………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2016年01月24日
[ジャンル]文芸

鉄道への夢が日本人を作った—資本主義・民主主義・ナショナリズム [著]張イクマン

鉄道への夢が日本人を作った—資本主義・民主主義・ナショナリズム [著]張イクマン

■近代を規定する根強い物神崇拝  鉄道は、学校や軍隊などとともに、近代になって初めて整備される社会インフラの一つである。この点では明治になって近代化が始まる日本も例外ではない。  しかし、例えばアメリカでは20世紀初頭………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2016年01月10日
[ジャンル]社会

フォトアーカイブ 昭和の公団住宅―団地新聞の記者たちが記録した足跡 [編]長谷田一平

フォトアーカイブ 昭和の公団住宅―団地新聞の記者たちが記録した足跡 [編]長谷田一平

■郷愁とともに黄金時代を伝える  戦後の慢性的な住宅不足を解消すべく、高度成長の始まりとともに華々しく登場したものの、低成長へと移行した1970年代には住宅不足が解消され、早くも使命を終えてしまった集合住宅。それが公団………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年12月06日
[ジャンル]社会

戦後入門 [著]加藤典洋

戦後入門 [著]加藤典洋

■「左折の改憲」で対米従属脱する  加藤典洋は、果敢な批評家である。その果敢さが、時に大きな反発や誤解を巻き起こす。1997年刊行の『敗戦後論』が、当時台頭していたナショナリズムの流れに位置付けられて批判されたのは、ま………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年11月22日
[ジャンル]歴史

私の1960年代 [著]山本義隆

私の1960年代 [著]山本義隆

■沈黙を破り東大闘争を回顧  1968年を頂点とする大学闘争とは一体何だったのか。この問いに対する十分な答えは、いまだに得られていない。最大の原因は、闘争の中心人物が長らく沈黙を保ってきたことにあろう。  本書は、東大………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年11月15日
[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

新宗教と総力戦 [著]永岡崇

新宗教と総力戦 [著]永岡崇

■天理教と国家の関係をさぐる  幕末以降、日本では新たな宗教が次々と起こった。本書が対象とする天理教もその一つであり、昭和初期には新宗教のなかでも最大の教団へと発展する。しかし、これまでの研究では大本(いわゆる大本教)………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年10月18日
[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

日本鉄道歌謡史―1 鉄道開業〜第二次世界大戦、2 戦後復興〜東日本大震災 [著]松村洋

日本鉄道歌謡史―1 鉄道開業〜第二次世界大戦、2 戦後復興〜東日本大震災 [著]松村洋

■国土意識を形成、民衆の声も代弁  キューロクが9600形蒸気機関車の愛称であることを知っている人は、よほどのマニアだろう。本書の冒頭で、著者は八高線にキューロクやデコイチ(D51形蒸気機関車)の撮影に出掛けた過去を懐………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年09月20日
[ジャンル]歴史

鉄道デザインの心―世にないものをつくる闘い [著]水戸岡鋭治

鉄道デザインの心―世にないものをつくる闘い [著]水戸岡鋭治

■効率より空間と時間にこだわる  水戸岡鋭治さんは鉄道のデザイナーとして有名だが、全国の鉄道に乗っているわけではない。京浜工業地帯を走るJR鶴見線に同乗したときには、首都圏にもこんな線があるのかと驚かれ、運河や工場の夜………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年09月13日
[ジャンル]経済

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