鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)の書評

写真:鴻巣友季子さん

鴻巣友季子 (翻訳家、エッセイスト)
1963年東京都生まれ。翻訳家、エッセイスト。訳書にジョン・クッツェー『恥辱』、トマス・クック『緋色の記憶』、マーガレット・アトウッド『昏き目の暗殺者』、ルル・ワン『睡蓮の教室』、ブロンテ新訳『嵐が丘』、著書に『翻訳のココロ』『明治大正翻訳ワンダーランド』など。

アラブ、祈りとしての文学 [著]岡真理 

アラブ、祈りとしての文学 [著]岡真理 

■苦難の地で小説が書かれる意味  アフリカの子供たちが餓死している時に己の文学は無力だと、かつてサルトルは語った。本書はそれへの応答の書とも言えよう。難民問題や戦闘の続くアラブの地で、著者は人の生き死にを目の当たりにし………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年02月08日
[ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝

猫を抱いて象と泳ぐ [著]小川洋子著 

猫を抱いて象と泳ぐ [著]小川洋子著 

■チェス題材に哀切甘美な寓話世界  小川洋子が今度の小説で素材に選んだのはチェスだ。話題をさらった『博士の愛した数式』では、数学の美が日常の味わいを深め、日常の風景が数字の秩序をいちだんと輝かせるという奇跡を生みだした………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2009年01月18日
[ジャンル]文芸

図書館-愛書家の楽園 [著]アルベルト・マングェル

図書館-愛書家の楽園 [著]アルベルト・マングェル

■「原始の夢」の過去・現在・未来つなぐ  もとより人間にはふたつの望みがあった。ひとつははるか高みにまで手を伸ばし、空間を征服する欲望であり、そこからバベルの塔が建てられ、その罰として言葉をばらばらにされた。もうひとつ………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年11月30日
[ジャンル]人文

日本語が亡(ほろ)びるとき-英語の世紀の中で [著]水村美苗

日本語が亡(ほろ)びるとき-英語の世紀の中で [著]水村美苗

■〈読まれる言葉の連鎖〉への参加  本書の題名と、「優れた英語話者の教育が日本の急務」といった提言だけで、様々な議論が巻き起こりそうだ。だが、これは「国民総バイリンガル化」を奨(すす)める書では全くないし、いわんや「英………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年11月16日
[ジャンル]文芸 人文

世界一高いワイン「ジェファーソン・ボトル」の酔えない事情 [著]ベンジャミン・ウォレス

世界一高いワイン「ジェファーソン・ボトル」の酔えない事情 [著]ベンジャミン・ウォレス

■渾身の力で追うボトルの真贋は…  1985年12月、1本の古い古い赤ワインが、ロンドンの競売会にて10万5千ポンド(当時約3千万円)で米国人に落札された。「最も高いワイン」は名を轟(とどろ)かせ、シトロエン社は「この………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年11月02日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

マイクロバス [著]小野正嗣 

マイクロバス [著]小野正嗣 

■言葉なき人間を言葉で描く強い意志  本書の表題作を読んでいると、虚構内に客観的な自然描写というものが真にはあり得ないことを絶え間なく突きつけられる。その意味では、ガルシア・マルケスを彷彿(ほうふつ)とさせた。  併録………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年10月26日
[ジャンル]文芸

火を熾(おこ)す [著]ジャック・ロンドン 

火を熾(おこ)す [著]ジャック・ロンドン 

■淡々とした文章に緊張感と凄み  長編『野性の呼び声』『白い牙(きば)』で知られる作家だが、文章の淡々とした味わい、緊張感、凄(すご)みは、むしろ短編でいかんなく発揮されている、と私は思う。じつはロンドンは短編がいいの………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年10月12日
[ジャンル]文芸

博物館の裏庭で [著]ケイト・アトキンソン

博物館の裏庭で [著]ケイト・アトキンソン

■見えないものも見える力強い語り  1行目を読んだとたん、これは正真正銘「偉大なる英国小説」の伝統をひく小説だ!と胸がときめいた。ヨークの町のペットショップを起点に、一族の壮大なサーガがこんな風に語られだす。「あたしは………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年09月14日
[ジャンル]文芸

夜 [著]橋本治 

夜 [著]橋本治 

■ある日、男はプイと出ていき戻らない  男がある日、プイと出ていってそれきり戻らない。長い月日が流れ、ある日また何事もなかったかのように帰ってくる。いったい男の心にはなにが起きたのか? 『夜』は、そうした男の不可解さを………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年08月31日
[ジャンル]文芸

アンのゆりかご―村岡花子の生涯 [著]村岡恵理 

アンのゆりかご―村岡花子の生涯 [著]村岡恵理 

■「よい翻訳」貫いた使命感の人  戦前までの翻訳家に共通していたのは、自らの仕事を一種ミッション(使命)と捉(とら)えていたことではないか。村岡花子もまた、使命感の人であり、戦時下に進められた『赤毛のアン』の訳業は、文………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年07月27日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

時が滲む朝 [著]楊逸 

時が滲む朝 [著]楊逸 

■書くべき人が、書くべき言語で書いた  天安門事件の頃から北京五輪前夜までの約20年間。その中国の軌跡とある男の半生を併せて描いた本作は、日本語を母語としない作家の芥川賞初受賞で話題だ。昭和10年制定の同賞は「各紙誌に………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年07月20日
[ジャンル]文芸

ザ・ロード [著]コーマック・マッカーシー

ザ・ロード [著]コーマック・マッカーシー

■世界は終わり、荒涼とした道を淡々と  荒涼、沈黙、神なき世界。父と息子は冬にそなえて南へと向かう。空には雲がたれこめ、寒さが募る。荒れた庭で死んだライラックの枝がもつれあい、去っていった息子の母は夢に現れるのみ。家の………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年06月29日
[ジャンル]文芸

小説の設計図 [著]前田塁 

小説の設計図 [著]前田塁 

■小説が「わかる」とはどういうことか  夕陽(ゆうひ)に向かって走るメロス、世界の中心で叫ばれる愛に、100万人が同じように感動するなんて、やっぱりヘン。そこには、「読む」という徹底した個人行為と相容(あいい)れないも………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年06月08日
[ジャンル]人文

東京島 [著]桐野夏生

東京島 [著]桐野夏生

■リアリズムも超越した不敵な野心作  一作ごとに話題を集める作者の新刊である。「無人島への漂着」という古典的なモチーフを、現代文学においてどう料理してみせるのか?  那覇港を出帆したクルーザーがほどなく難破、一組の夫婦………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年05月25日
[ジャンル]文芸

バートルビーと仲間たち [著]エンリーケ・ビラマタス

バートルビーと仲間たち [著]エンリーケ・ビラマタス

■書けなくなった作家の饒舌な物語  今年1年の、いや、いっそのこと、今世紀10年のベスト翻訳書に挙げてしまおう。  『バートルビーと仲間たち』だって?! まず題名にのけぞった。町田康の小説に「ビバ! カッパ!」と叫ぶ河………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2008年04月27日
[ジャンル]文芸

ここに掲載されている記事や書評などの情報は、原則的に初出時のものです。

ページトップへ戻る