斎藤美奈子(文芸評論家)の書評

写真:斎藤美奈子さん

斎藤美奈子 (文芸評論家)
1956年新潟県生まれ。文芸評論家。編集者を経て94年『妊娠小説』でデビュー。他に『紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像』『モダンガール論』『文章読本さん江』(小林秀雄賞)『麗しき男性誌』『物は言いよう』『それってどうなの主義』など。

とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起 伊藤比呂美著 女友達から届く手紙のような長篇詩

とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起 伊藤比呂美著 女友達から届く手紙のような長篇詩

 伊藤比呂美の本には、詩でもエッセーでも小説でも対談でも、遠く離れた場所にいる女友達から来た、直近の消息と心境を知らせる手紙みたいな効用がある。細かい事情はわからなくても、本を通して彼女の近況を気にしてきた読者は日本中………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年08月05日
[ジャンル]文芸

いい子は家で 青木淳悟著 変身もあり、ヘンテコな家族の日常

いい子は家で 青木淳悟著 変身もあり、ヘンテコな家族の日常

 一昨年、初の小説集『四十日と四十夜のメルヘン』(新潮社)で「すげえ新人が登場した!」と読書界を震撼(しんかん)(または当惑)させた青木淳悟の第2作品集はとびきりヘンテコリンな家族小説だった。  今般の文学界は家族の小………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年07月22日
[ジャンル]文芸

言語学者が政治家を丸裸にする 東照二著 人心も選挙も制す、言葉の力を分析

言語学者が政治家を丸裸にする 東照二著 人心も選挙も制す、言葉の力を分析

 不見識な発言で、先日も閣僚が辞任したばかり。政治家の発言が軽くなっていませんか、と思っている人は多いことだろう。政治家のスピーチには辟易(へきえき)、と思っている人も大勢いるにちがいない。  私もその口だけれども、で………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年07月08日
[ジャンル]政治 人文

フランスから見る日本ジェンダー史 棚沢直子・中嶋公子編

フランスから見る日本ジェンダー史 棚沢直子・中嶋公子編

 曖昧な共犯関係を相対化  学問や思想っていうものは、だいたい西欧の理論の上に成り立っている場合が多い。ジェンダー論もご多分にもれずである。しかし歴史や文化が異なれば、男女や家族の関係にズレがあるのは当然だろう。  1………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年06月24日
[ジャンル]人文

私たちは本当に自然が好きか 塚本正司著 文化から問う「みどり」の百科全書

私たちは本当に自然が好きか 塚本正司著 文化から問う「みどり」の百科全書

 「自然好き」を自任する人は多いと思うけれども、はたして私たち日本人が真に「自然好き」かとなると、じつは甚だあやしいのである。  証拠はいくらだってある。思い出してみてほしい。あなたの住まいの近隣で、近年どれほどの樹木………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年06月17日

コップとコッペパンとペン 福永信著 時間感覚と予定調和を攪乱の醍醐味

コップとコッペパンとペン 福永信著 時間感覚と予定調和を攪乱の醍醐味

 福永信を読むとは、稀有(けう)な読書体験をするってことだ。  実際彼は、小説を現代アートの一種と思っている節さえあり、『アクロバット前夜』では横書きに印刷された文章がページをまたいで延々と右に続いていく造本で読者をコ………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年05月27日
[ジャンル]文芸

美術館の政治学 [著]暮沢剛巳

美術館の政治学 [著]暮沢剛巳

■日本独自のあり方と歩み改めて認識  たまたま入った美術館で現代アートの企画展などに遭遇し、ふと感じる「しまった」という気分。著者いわく。  〈確かに「現代美術」の多くは一般的なポピュラリティに乏しく、また作品鑑賞にあ………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年05月20日
[ジャンル]人文 アート・ファッション・芸能

わたしたちに許された特別な時間の終わり 岡田利規著

わたしたちに許された特別な時間の終わり 岡田利規著

 ラブホ4連泊の「青春」とイラク戦争  若手の演劇人が虎視眈々(こしたんたん)といい小説を書いてるんだよねという印象を私は最近もっている。宮沢章夫や松尾スズキがそうであったように、前田司郎も本谷有希子も、戯曲と小説、両………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年04月22日
[ジャンル]文芸

我、自衛隊を愛す―故に、憲法9条を守る [著]小池清彦・竹岡勝美・箕輪登

我、自衛隊を愛す―故に、憲法9条を守る [著]小池清彦・竹岡勝美・箕輪登

■血を流す立場からの選択は  護憲派の中には自衛隊の存在そのものを認めない人も多い。しかし、憲法9条の改定で直接的な影響を被るのは自衛隊。現実的に血を流すのも自衛隊員だ。内部の人たちは9条をどう見ているのだろうか。  ………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年03月25日
[ジャンル]人文

ひとり日和 [著]青山七恵

ひとり日和 [著]青山七恵

■自立の物語、鉄道と駅を舞台装置に  今期芥川賞受賞作である。いろんな感想を私も聞きました。「絶賛されていたけど、どこがいいわけ?」「女の子の自立の物語なんだろうけどなんか薄味」。そして若い女性作家に必ずついて回る「こ………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年03月11日
[ジャンル]文芸

ニッポンの小説―百年の孤独 [著]高橋源一郎

ニッポンの小説―百年の孤独 [著]高橋源一郎

■日本語の文学を考え、疑う  タカハシさんは小説家である。小説とは何かを考えずにはいられず、そして考えたことを人に伝えずにはいられないタイプの小説家でもある。だからこんな本まで書いてしまった。  『ニッポンの小説』。こ………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年03月04日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

植物診断室 [著]星野智幸

植物診断室 [著]星野智幸

■独身40男の物語に潜む父性の解体  主人公は「結婚できない男」(覚えていますか昨年のテレビドラマ)みたいな独身貴族の40男だ。中堅の商事会社に勤め、横浜のタワーマンションの21階に住み、趣味はベランダ園芸の上を行くジ………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年02月04日
[ジャンル]文芸

「アメリカ 非道の大陸」/「海に落とした名前」 [著]多和田葉子

「アメリカ 非道の大陸」/「海に落とした名前」 [著]多和田葉子

■旅の途上、着地することなき物語  はじめて多和田葉子の本を手にとったあなたは、おそらく面食らうだろう。それはあなたがこれまでに知っている「小説らしい形」とはいろんな意味でちがっている。  『アメリカ 非道の大陸』は、………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2007年01月14日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

ことばの力 平和の力―近代日本文学と日本国憲法 [著]小森陽一

ことばの力 平和の力―近代日本文学と日本国憲法 [著]小森陽一

■作家の言葉で戦争を問い直す  著者は2004年にできた「九条の会」の事務局長だ。もちろん漱石や賢治の研究で知られる日本近代文学研究者でもある。副題が「近代日本文学と日本国憲法」かぁ。小森陽一らしい荒技だなあと、そんな………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2006年12月17日
[ジャンル]文芸 社会

性と暴力のアメリカ [著]鈴木透

性と暴力のアメリカ [著]鈴木透

■「特異な国」はなぜできたか  普通の国(?)の例として、私どもはよく「アメリカでは……」という言い方をする。これは正しい認識なのだろうか。いいえ、とんでもない、というのが本書を貫く主張である。厳格な性道徳と性解放が併………[もっと読む]

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)
[掲載]2006年11月19日
[ジャンル]歴史 社会 新書

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