中条省平(学習院大学教授)の書評

写真:中条省平さん

中条省平 (学習院大学教授)
1954年神奈川県生まれ。学習院大学教授。専門はフランス文学。著書に『最後のロマン主義者』『映画作家論』『文章読本』『反=近代文学史』『ただしいジャズ入門』『天才バカボン家族論「パパの品格」なんていらないのだ!』、訳書にバタイユ『マダム・エドワルダ』など。

出生の秘密 三浦雅士著 分析と統合の力業で日本近代文学を解読

出生の秘密 三浦雅士著 分析と統合の力業で日本近代文学を解読

 出生の秘密。一見使い古された言葉である。だが、三浦雅士がこの言葉にあたえた射程は恐ろしく遠大だ。これは日本近代文学の解読から人間誕生の瞬間にまでさかのぼる、気が遠くなるような分析と統合の力業なのである。  幼年期は人………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年10月02日
[ジャンル]人文

中井英夫戦中日記 彼方より 完全版 中井英夫著、本多正一編

中井英夫戦中日記 彼方より 完全版 中井英夫著、本多正一編

 中井英夫の『虚無への供物』はいまや、「新本格」なる推理小説流派のバイブルだが、中井の小説の本質は、全能者の権力を手にした錯覚をもって嬉々(きき)として死の遊戯に耽(ふけ)るポーの末裔(まつえい)たちの対極にある。人を………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年09月11日
[ジャンル]歴史 ノンフィクション・評伝

戦後日本のジャズ文化 映画・文学・アングラ マイク・モラスキー著

戦後日本のジャズ文化 映画・文学・アングラ マイク・モラスキー著

 60〜70年代の異様な活力の秘密明らかに  本書はジャズという音楽の受容史ではない。副題がしめすように、日本文化のさまざまな領域がジャズという刺激を受けていかに変容していったか。その動きを多角的に読み解く試みである。………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年09月04日
[ジャンル]歴史 アート・ファッション・芸能

コーネル・ウールリッチの生涯 フランシス・M・ネヴィンズJr.著

コーネル・ウールリッチの生涯 フランシス・M・ネヴィンズJr.著

 コーネル・ウールリッチの生涯 上・下  CORNELL WOOLRICH  FIRST YOU DREAM,THEN YOU DIE  謎多き作家の作品分析 隅から隅まで  江戸川乱歩の随筆を好む人ならば、乱歩がどれ………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年08月28日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

サウスバウンド 奥田英朗著 描写に冴え、少年のひと時の冒険物語

サウスバウンド 奥田英朗著 描写に冴え、少年のひと時の冒険物語

 奥田英朗の才能は予断を許さない。  直木賞を取った『空中ブランコ』など、賞のお墨つきで読んだ人は仰天したことだろう。精神科医が活躍するセラピー小説だが、主人公の方がよほど精神に問題があるという問題作なのだ。昨年最笑の………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年08月21日
[ジャンル]文芸

映像表現のオルタナティヴ 西嶋憲生編

映像表現のオルタナティヴ 西嶋憲生編

 一九六〇年代の日本映画は、既存の映画五社の危機を背景に、大胆な前衛的試みを開花させていった。  大島渚は、「日本の夜と霧」で、過去と現在、空間の内と外を自在に行き来する政治的討論劇を実現させるが、松竹はこれを封切り数………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年08月07日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能 ノンフィクション・評伝

生きていりゃこそ 森繁久彌・語り 久世光彦・文

生きていりゃこそ 森繁久彌・語り 久世光彦・文

 官能的な感動呼ぶ天才役者の芸と追憶  本書は、「大遺言書」として週刊誌に今も連載中の文章をまとめたものです。  大なり小なり遺言書というものは、そう遠くない将来に著者が亡くなることを想定しているわけですが、世間の予想………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年07月31日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能 ノンフィクション・評伝

サルトルの世紀 [著]アンリ・レヴィ/サルトル―「人間」の思想の可能性 [著]海老坂武

サルトルの世紀 [著]アンリ・レヴィ/サルトル―「人間」の思想の可能性 [著]海老坂武

 今年はサルトル生誕百年にあたる。  パリの巨大な国立図書館では「サルトル展」が開かれている。大規模な展覧会だが、新しい知見を示すより、「最後の文化英雄サルトル」のイメージを盛りあげる演出が露骨で、逆に、文化英雄のいない………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年07月24日
[ジャンル]歴史 人文 新書

そうだったのか 手塚治虫 天才が見抜いていた日本人の本質 中野晴行著

そうだったのか 手塚治虫 天才が見抜いていた日本人の本質 中野晴行著

 著者は前作『マンガ産業論』で、世界的にも稀(まれ)な日本マンガの成功の秘密を、社会経済史的にじつにすっきりと解明してみせた。本書でも、その持ち味である明快さは保たれている。  鉄腕アトムは天馬博士に発明された。博士は………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年07月17日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝 新書

ヨコモレ通信 辛酸なめ子著 辛らつで笑いあふれる消費文明探訪記

ヨコモレ通信 辛酸なめ子著 辛らつで笑いあふれる消費文明探訪記

 文字通り人をなめた筆者名です。おまけに人前でうっかり口に出したら品性を疑われかねないタイトル。しかし、そんなことで本書を敬遠したら、この上なく繊細で辛らつな消費文明レポート、今の日本で最も独創的なスペクタクル社会論を………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年07月03日
[ジャンル]文芸

ホモセクシャルの世界史 海野弘著 同性愛列伝で20世紀を浮き彫りに

ホモセクシャルの世界史 海野弘著 同性愛列伝で20世紀を浮き彫りに

 同性愛の罪で投獄された「世界一有名なホモセクシャル」、オスカー・ワイルドの代表作に『ドリアン・グレイの肖像』がある。絶世の美青年が主人公のこの小説にはホモセクシャルな気分がたちこめているが、本書の著者は、「ドリアン」………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年06月19日
[ジャンル]歴史 人文

ピエロ・デッラ・フランチェスカ 石鍋真澄著

ピエロ・デッラ・フランチェスカ 石鍋真澄著

 独自の解釈交え描く謎の画家の全体像  複製でしか見たことがないのにけっして忘れられない絵というものがある。私にとって、本書の画家ピエロの《モンテフェルトロ祭壇画》がそれにあたる。  伏し目がちの聖母がどこか東洋的な無………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年06月12日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能

澁澤龍彦との日々 澁澤龍子著

澁澤龍彦との日々 澁澤龍子著

 三島由紀夫や埴谷雄高が予言したように、澁澤龍彦の著作は、日本の知的風土を大きく変えた。  <知>が古い学問から脱して、人間の巨大な快楽的営みの一環となり、プラトンとボマルツォの怪物庭園が、同じ風景のなかで新たな光を放………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年05月22日
[ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝

目には見えない何か パトリシア・ハイスミス著

目には見えない何か パトリシア・ハイスミス著

 中後期短篇集1952−1982 POSTHUMOUS SHORT STORIES Volume2  人の心不可解さ、描写に醍醐味  始祖のポー以来、推理小説は不可解な犯罪を扱うが、謎はすべて論理的に解明されなければな………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年05月15日
[ジャンル]文芸

蜂起 森巣博著

蜂起 森巣博著

 作者はオーストラリア在住の国際的博奕(ばくち)打ちとして知られる。日本の「そと」でおのれの腕一本を頼りに生きるだけに、世間の思惑と「うち」の論理を最優先する日本の醜態に情け容赦のない鞭(むち)をふるう。  主人公は四………[もっと読む]

[評者]中条省平(学習院大学教授)
[掲載]2005年05月08日
[ジャンル]文芸

ここに掲載されている記事や書評などの情報は、原則的に初出時のものです。

ページトップへ戻る