保阪正康(ノンフィクション作家)の書評

写真:保阪正康さん

保阪正康 (ノンフィクション作家)
1939年北海道生まれ。ジャーナリスト。著書に『東條英機と天皇の時代』『陸軍省軍務局と日米開戦』『安楽死と尊厳死』『医療崩壊』『官僚亡国―軍部と霞が関エリート、失敗の本質』など。主宰する「昭和史を語り継ぐ会」の会誌「昭和史講座」で菊池寛賞。

「衝動」に支配される世界―我慢しない消費者が社会を食いつくす [著]ポール・ロバーツ [訳]東方雅美

「衝動」に支配される世界―我慢しない消費者が社会を食いつくす [著]ポール・ロバーツ [訳]東方雅美

■直感的で配慮のない社会を裁断  現代文明論というべき書である。「インパルス・ソサエティ(衝動に支配される社会)」という語を剣として「社会経済システム全体が自己破壊に向かっている様子」を裁断している。  「欲しい」とい………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2015年05月24日
[ジャンル]政治 経済 社会

帰還兵はなぜ自殺するのか [著]デイヴィッド・フィンケル

帰還兵はなぜ自殺するのか [著]デイヴィッド・フィンケル

■戦闘ストレスの悲劇、鮮烈に  アフガニスタンとイラクに派兵された米軍兵士は約200万人、そのうち50万人はPTSD(心的外傷後ストレス障害)とTBI(外傷性脳損傷)に悩まされている。派兵前は善良な市民だったのに一転し………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2015年04月26日
[ジャンル]社会

エノケンと菊谷栄—昭和精神史の匿れた水脈 [著]山口昌男

エノケンと菊谷栄—昭和精神史の匿れた水脈 [著]山口昌男

■喜劇王と座付き作者の浅草  長年、故人が思いをこめて書いた稿を、編集者が形を整えて刊行した書である。文化人類学者の著者は、たまたまエノケン(榎本健一)に菊谷栄という座付き作者がいると聞き、それが執筆の動機であったとい………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2015年04月19日
[ジャンル]人文 社会

玉砕の島々―サイパン・グアム・ペリリュー・硫黄島 [著]平塚柾緒

玉砕の島々―サイパン・グアム・ペリリュー・硫黄島 [著]平塚柾緒

■歪んだ戦いの内実を誠実に記述  3年8カ月余続いた太平洋戦争で、特攻作戦や玉砕は軍事的責任が問われる戦術である。玉砕は最後の一人まで戦うとの戦闘行為だが、1943年5月のアッツ島玉砕を始まりとして、日本軍はなんどかこ………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2015年03月15日
[ジャンル]歴史

過剰診断—健康診断があなたを病気にする [著]H・ギルバート・ウェルチ、リサ・M・シュワルツ、スティーヴン・ウォロシン

過剰診断—健康診断があなたを病気にする [著]H・ギルバート・ウェルチ、リサ・M・シュワルツ、スティーヴン・ウォロシン

■生命観なく医療現場が肥大化  本書は過剰診断を、「決して症状が出たり、そのために死んだりしない人を、病気であると診断すること」と定義づける。ところが、この過剰診断が現代医療の場でどれほど行われているのか、実態はなかな………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2015年03月01日
[ジャンル]医学・福祉

零戦の子―伝説の猛将・亀井凱夫とその兄弟 [著]武田頼政

零戦の子―伝説の猛将・亀井凱夫とその兄弟 [著]武田頼政

■三者三様の昭和史を丹念に追う  昭和初年代から10年代に各様の生き方をした兄弟伝である。長男の亀井貫一郎は外務官僚から無産運動に転じて政治家に、次男の凱夫(よしお)は海軍軍人になり零戦のパイロットとして歴戦の勇士に、………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2015年02月22日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

ジョン・レディ・ブラック―近代日本ジャーナリズムの先駆者 [著]奥武則

ジョン・レディ・ブラック―近代日本ジャーナリズムの先駆者 [著]奥武則

■日本語新聞を創刊した英国人  本書を読み進むうちに、ジョン・レディ・ブラックという英国人の生き方に強い共感がわいてくる。ジャーナリズム史研究者はこの新聞人の名を知るだろうが、一般にはほとんど知られていない。  しかし………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2015年01月18日
[ジャンル]政治 社会

「戦場体験」を受け継ぐということ―ビルマルートの拉孟全滅戦の生存者を尋ね歩いて [著]遠藤美幸

「戦場体験」を受け継ぐということ―ビルマルートの拉孟全滅戦の生存者を尋ね歩いて [著]遠藤美幸

■兵士の体験を丹念に聞きとる  1944年6月、拉孟(らもう)(中国雲南地方の要衝)の日本軍守備隊1300人と中国の正規軍4万人余との間で、100日間に及ぶ攻防戦が始まった。守備隊は9月に全滅した。  その苛酷(かこく………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2015年01月11日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

本があって猫がいる [著]出久根達郎

本があって猫がいる [著]出久根達郎

■社会の一点に据えた視点に華  本書に、「龍馬の梅干」という短文が収められている。著者は、麺にも梅干を入れる極端な梅干好きだが、それを聞いた友人が土蔵から壺(つぼ)に入った天保6年の梅干が出てきたと届ける。坂本龍馬誕生………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2014年12月07日
[ジャンル]文芸

伊藤熹朔 舞台美術の巨人 [編]俳優座劇場

伊藤熹朔 舞台美術の巨人 [編]俳優座劇場

■職人芸に終わらず理論を確立  伊藤熹朔が逝ってから47年である。その職業名は、(1)舞台装置家(2)セットデザイナー(3)ステージデザイナー(4)舞台美術家というのだが、今では(5)セノグラファーと呼称するそうだ。ど………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2014年11月30日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

フランクリン・ローズヴェルト(上・下) [著]ドリス・カーンズ・グッドウィン

フランクリン・ローズヴェルト(上・下) [著]ドリス・カーンズ・グッドウィン

■アメリカの苦難、夫妻で乗り越え  本書によれば、フランクリン・ローズヴェルト元大統領とエレノア夫人は、アメリカの苦難の時期を乗り越えた同志であり、戦友といった関係のようだ。ジャーナリストのジョン・ガンサーがエレノアに………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2014年11月23日
[ジャンル]歴史 政治

シャボン玉 日本—迷走の過ち、再び [著]野坂昭如

シャボン玉 日本—迷走の過ち、再び [著]野坂昭如

■過ぎしことすべて我の血肉なり  「戦後70年」を目前にして、あの戦争は着実に同時代史から歴史にと移行している。軍事が描きだしたあれこれの光景は老作家の脳裏に沈殿している。  その光景をなぞりながら、今を浮きぼりにする………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2014年11月16日
[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

上野英信・萬人一人坑—筑豊のかたほとりから [著]河内美穂

上野英信・萬人一人坑—筑豊のかたほとりから [著]河内美穂

■庶民を記録した文筆家を追う  ルポルタージュ作家、あるいは記録作家として、上野英信は幾つかの秀(すぐ)れた作品を残している。爆弾三勇士に関わる論説、ドキュメントは、昭和史の中に貴重な視点を示した。本書では、「歴史上の………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2014年10月19日
[ジャンル]ノンフィクション・評伝

スターリン―「非道の独裁者」の実像 [著]横手慎二

スターリン―「非道の独裁者」の実像 [著]横手慎二

■20世紀はどんな時代だったのか  20世紀のある時期に誕生し、70年余の生命を保ち、そして崩壊したソ連の社会主義政権。その前半期を担ったのがスターリンである。彼の没後、指導部の一員だったフルシチョフは、「粗暴、大粛清………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2014年10月12日

民族浄化のヨーロッパ史——憎しみの連鎖の20世紀 [著]ノーマン・M・ナイマーク

民族浄化のヨーロッパ史——憎しみの連鎖の20世紀 [著]ノーマン・M・ナイマーク

■理性崩壊後の教訓を自らに課す  「民族浄化」という語は、1992年5月のボスニア戦争の初期から使われ、そしてユーゴ内戦とともに国際法上の犯罪と同一化された。「常に暴力」を伴い、「人類の生命にかなりの損害を与え」「戦争………[もっと読む]

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)
[掲載]2014年10月05日
[ジャンル]歴史

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