鷲田清一(大谷大学教授・哲学)の書評

写真:鷲田清一さん

鷲田清一 (大谷大学教授・哲学)
1949年京都市生まれ。大阪大総長をへて大谷大教授。現象学・身体論の視点から、医療や介護、教育の現場などに哲学の思考をつなぐ「臨床哲学」にも取り組む。著書に『モードの迷宮』(サントリー学芸賞)『「聴く」ことの力』(桑原武夫学芸賞)『「ぐずぐず」の理由』(読売文学賞)『メルロ=ポンティ可逆性』など。

戦争と万博 椹木野衣著 明るく薄っぺらな「晴れ舞台」を徹底解剖

戦争と万博 椹木野衣著 明るく薄っぺらな「晴れ舞台」を徹底解剖

 わたしの勤務先は、大阪万博の跡地の外れにある。いまは緑がずいぶん深くなり、高速のアスファルト道も周囲にすっかり溶け込んでいる。が、生活臭はまったくない。祭りの記憶もとっくに消え、それなりに美しく穏やかな風景、だが底知………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2005年04月24日
[ジャンル]人文 アート・ファッション・芸能

堅気の哲学 福田定良遺稿集 [著]福田定良

堅気の哲学 福田定良遺稿集 [著]福田定良

■えらぶらず、ぎりぎりまで考える    哲学の言葉というのは、なんだかえらそうにしている。やたら大上段に構えたり、だれにも見えていないものを見えるようにすると見得(みえ)を切ったり、まるで検問官のように、根源性とか深さ………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2005年03月20日
[ジャンル]人文

やりなおし教養講座 [著]村上陽一郎

やりなおし教養講座 [著]村上陽一郎

■「みっともない」からやめるのです    以前、高校生だった息子に「おやじの時代は壁があってよかったね」と、皮肉まじりに言われたことがある。同じころ、わたしと同世代の教師に、ひとりの女子高校生が、「男らしさや女らしさ、………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2005年02月20日
[ジャンル]教育 人文

肖像の眼差し [著]ジャン=リュック・ナンシー

肖像の眼差し [著]ジャン=リュック・ナンシー

■向こうから「乗りだして」くる顔    むかし、私は空いた時間に絵を、それも人物画ばかりを描いていた。三時間ほどモデルを凝視しながら、しかしまったく違う顔を描こうとしていた。海を見つめながら、小川で水浴びしている裸婦の………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2005年01月23日
[ジャンル]人文 アート・ファッション・芸能

原っぱと遊園地 [著]青木淳

原っぱと遊園地 [著]青木淳

 『原っぱと遊園地』とはまたおっとりした書名である。が、これは対立する二つの建築理念の比喩(ひゆ)なのだ。  「原っぱ」とは、そこで行われることが空間の中身を作っていく建築のこと。他方、「遊園地」とは「あらかじめそこで行………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2005年01月09日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能

クリスチャン・ボルタンスキー 死者のモニュメント [著]湯沢英彦

クリスチャン・ボルタンスキー 死者のモニュメント [著]湯沢英彦

 幼いときに使っていた私物の数々から始まり、家族アルバム、殺害死体の写真カード、ランプに囲まれた死者の生前の写真、そして遺品を入れた衣裳(いしょう)缶や無数の古着の陳列と、<死>とその記憶の消失をめぐって、制作を続けてき………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2004年11月14日
[ジャンル]人文 アート・ファッション・芸能

母に歌う子守唄 [著]落合恵子

母に歌う子守唄 [著]落合恵子

■「福祉」の未来を見つめる格闘と葛藤  深夜、ようやっと眠りに入った母の右手がふうっと浮いて、しきりに宙をさまよう。その手が白い壁に影をつくる。ふと、幼い頃にしてもらった影絵遊びを思う。風邪をこじらせて帰宅した日は、マ………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2004年10月31日
[ジャンル]文芸 医学・福祉 社会

人類の地平から アフリカの声 人類学的認識論のために(書評)

人類の地平から アフリカの声 人類学的認識論のために(書評)

 川田順造著 三角測量と強靭な視線が生む「語り」    じぶんの思考がぶれかけている、淀(よど)みだしていると感じたとき、すがるようにその声に耳を傾けたくなる思索者がわたしにはいる。そのひとり、川田順造の著作が、久しぶ………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2004年09月19日
[ジャンル]人文

戦後思想の一断面ー哲学者廣松渉の軌跡 [著]熊野純彦

戦後思想の一断面ー哲学者廣松渉の軌跡 [著]熊野純彦

■切迫感漂う亡き師の「総括」    動詞まで概念と化した、漢字だらけのごつごつした文体。集会のアジテーションをそのままビラに写したような口吻(こうふん)。漢和辞典を引き引き、読んだ記憶がある。空調のない真夏の日、首にタ………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2004年06月27日
[ジャンル]人文

地図を創る旅―青年団と私の履歴書 [著]平田オリザ

地図を創る旅―青年団と私の履歴書 [著]平田オリザ

■伝わらない不安、直視する「対話」    言葉が正確なひとである。端正に言葉を紡ぎだすひと、と言いかえてもよい。そのひとが一度だけ、他人にくってかかる場面を目撃したことがある。距離をとって、慈しみをもって、場面を見るの………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2004年06月13日
[ジャンル]文芸

負ける建築 [著]隈研吾

負ける建築 [著]隈研吾

■建築の「強さ」、とことん検証の評論集    タイトルを見て、安藤忠雄の『連戦連敗』という講義録の二番煎(せん)じかとおもった。いちばん強そうにみえる人が「敗退」の意味をかみしめる、そんな本かなともおもった。  ところ………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2004年05月30日
[ジャンル]アート・ファッション・芸能

<ほんもの>という倫理―近代とその不安 [著]チャールズ・テイラー

<ほんもの>という倫理―近代とその不安 [著]チャールズ・テイラー

■現代社会憂う、成熟した知性のささやき    もっともっと日本語で紹介されていい思想家だ。  チャールズ・テイラー。反帝国主義・反スターリニズムの立場から「第三の道」を模索するカトリック派マルクス主義者として出発したあ………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2004年04月18日
[ジャンル]人文

コーネルの箱 チャールズ・シミック著

コーネルの箱 チャールズ・シミック著

 Dime‐Store Alchemy:The Art of Joseph Cornell  作品と詩と訳文と、幸せな触れあい    ひとりの男(その名をアルフレッド・シュッツという)が、亡命先のニューヨークで、銀行に………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2004年02月15日
[ジャンル]文芸

絵画と現代思想 酒井健著

絵画と現代思想 酒井健著

 絵と思想の関係、あらわに浮かび上がり    地勢図ではなく、東京からそこに行くのに要する時間を軸に描かれた日本地図があるそうだ。見えないけれど、距離以上にリアルな地図。  ベンヤミンとクレー、メルロ=ポンティとセザン………[もっと読む]

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)
[掲載]2004年01月11日
[ジャンル]人文

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