原武史(放送大学教授・政治思想史)の書評

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原武史 (放送大学教授・政治思想史)
はら・たけし。1962年東京都生まれ。近現代の天皇・皇室研究のほか、鉄道や団地などの「空間政治学」を提唱。著書に『「民都」大阪対「帝都」東京』(サントリー学芸賞)『滝山コミューン一九七四』(講談社ノンフィクション賞)『昭和天皇』(司馬遼太郎賞)など。

初日への手紙 2―『紙屋町さくらホテル』『箱根強羅ホテル』のできるまで [著]井上ひさし

初日への手紙 2―『紙屋町さくらホテル』『箱根強羅ホテル』のできるまで [著]井上ひさし

■天皇の密使を柱に戦争末期再現  一昨年に公開された「昭和天皇実録」には、1945年6月12日、「海軍戦力査閲使長谷川清に謁(えつ)を賜(たま)い、第一回・第二回の戦力査閲に関する復命を受けられる」とある。同年7月18………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2016年01月24日
[ジャンル]文芸

鉄道への夢が日本人を作った—資本主義・民主主義・ナショナリズム [著]張イクマン

鉄道への夢が日本人を作った—資本主義・民主主義・ナショナリズム [著]張イクマン

■近代を規定する根強い物神崇拝  鉄道は、学校や軍隊などとともに、近代になって初めて整備される社会インフラの一つである。この点では明治になって近代化が始まる日本も例外ではない。  しかし、例えばアメリカでは20世紀初頭………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2016年01月10日
[ジャンル]社会

フォトアーカイブ 昭和の公団住宅―団地新聞の記者たちが記録した足跡 [編]長谷田一平

フォトアーカイブ 昭和の公団住宅―団地新聞の記者たちが記録した足跡 [編]長谷田一平

■郷愁とともに黄金時代を伝える  戦後の慢性的な住宅不足を解消すべく、高度成長の始まりとともに華々しく登場したものの、低成長へと移行した1970年代には住宅不足が解消され、早くも使命を終えてしまった集合住宅。それが公団………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年12月06日
[ジャンル]社会

戦後入門 [著]加藤典洋

戦後入門 [著]加藤典洋

■「左折の改憲」で対米従属脱する  加藤典洋は、果敢な批評家である。その果敢さが、時に大きな反発や誤解を巻き起こす。1997年刊行の『敗戦後論』が、当時台頭していたナショナリズムの流れに位置付けられて批判されたのは、ま………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年11月22日
[ジャンル]歴史

私の1960年代 [著]山本義隆

私の1960年代 [著]山本義隆

■沈黙を破り東大闘争を回顧  1968年を頂点とする大学闘争とは一体何だったのか。この問いに対する十分な答えは、いまだに得られていない。最大の原因は、闘争の中心人物が長らく沈黙を保ってきたことにあろう。  本書は、東大………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年11月15日
[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

新宗教と総力戦 [著]永岡崇

新宗教と総力戦 [著]永岡崇

■天理教と国家の関係をさぐる  幕末以降、日本では新たな宗教が次々と起こった。本書が対象とする天理教もその一つであり、昭和初期には新宗教のなかでも最大の教団へと発展する。しかし、これまでの研究では大本(いわゆる大本教)………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年10月18日
[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

日本鉄道歌謡史―1 鉄道開業〜第二次世界大戦、2 戦後復興〜東日本大震災 [著]松村洋

日本鉄道歌謡史―1 鉄道開業〜第二次世界大戦、2 戦後復興〜東日本大震災 [著]松村洋

■国土意識を形成、民衆の声も代弁  キューロクが9600形蒸気機関車の愛称であることを知っている人は、よほどのマニアだろう。本書の冒頭で、著者は八高線にキューロクやデコイチ(D51形蒸気機関車)の撮影に出掛けた過去を懐………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年09月20日
[ジャンル]歴史

鉄道デザインの心―世にないものをつくる闘い [著]水戸岡鋭治

鉄道デザインの心―世にないものをつくる闘い [著]水戸岡鋭治

■効率より空間と時間にこだわる  水戸岡鋭治さんは鉄道のデザイナーとして有名だが、全国の鉄道に乗っているわけではない。京浜工業地帯を走るJR鶴見線に同乗したときには、首都圏にもこんな線があるのかと驚かれ、運河や工場の夜………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年09月13日
[ジャンル]経済

下山事件 暗殺者たちの夏 [著]柴田哲孝

下山事件 暗殺者たちの夏 [著]柴田哲孝

■昭和史最大の謎、執着する覚悟  1949年7月5日に初代国鉄総裁の下山定則が行方不明となり、6日に遺体が発見された「下山事件」は、昭和史最大の謎の事件と言われている。そもそも下山は自殺したのか、それとも他殺だったのか………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年08月30日
[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

生きて帰ってきた男―ある日本兵の戦争と戦後 [著]小熊英二

生きて帰ってきた男―ある日本兵の戦争と戦後 [著]小熊英二

■父が息子に託す、希望こそが指針  小熊英二という人はどこまでも前向きだ。3・11のあとに反原発デモが高まり、一時は官邸前に20万人が集まったのに、2012年12月の総選挙では自民党が圧勝した。脱力感が漂うなか、著者は………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年08月16日
[ジャンル]歴史

終戦詔書と日本政治—義命と時運の相克 [著]老川祥一

終戦詔書と日本政治—義命と時運の相克 [著]老川祥一

■玉音放送の草稿修正箇所に注目  1945年8月15日の玉音放送は、天皇自身が詔書を読み上げることで儒教的な「天子」として振る舞おうとするものだった。だからこそ、陽明学者の安岡正篤(まさひろ)は「義命ノ存スル所」という………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年07月19日
[ジャンル]歴史 社会

権力の空間/空間の権力—個人と国家の〈あいだ〉を設計せよ [著]山本理顕

権力の空間/空間の権力—個人と国家の〈あいだ〉を設計せよ [著]山本理顕

■建築家が読む斬新なアレント  政治というのは抽象的な思考に回収されない。そうではなく、複数の人間が共生するための実践行為である以上、必ず具体的な空間を伴うはずである。だが、政治思想史の研究者の多くは、思想家が残したテ………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年06月21日
[ジャンル]社会

界 [著]藤沢周

界 [著]藤沢周

■人間の複雑怪奇、浮かび上がる  例えば、「市民」という政治学の用語がある。男だろうが女だろうが市民は市民であり、そこに違いがあってはならないはずだ。  しかし現実はより複雑である。この連作短編集は、男女の間に横たわる………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年06月14日
[ジャンル]文芸

宗教と政治の転轍点 保守合同と政教一致の宗教社会学 [著] 塚田穂高

宗教と政治の転轍点 保守合同と政教一致の宗教社会学 [著] 塚田穂高

■政党作る団体に切り込む行動力  泡沫(ほうまつ)候補という言葉がある。選挙で当選する見込みがきわめて薄い候補者のことだ。彼らは、たとえ一時的に話題に上がることはあっても、時間がたつにつれ忘れ去られてゆく。政治学の世界………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年05月17日
[ジャンル]政治 人文 社会

遊楽としての近世天皇即位式―庶民が見物した皇室儀式の世界 [著]森田登代子

遊楽としての近世天皇即位式―庶民が見物した皇室儀式の世界 [著]森田登代子

■「広場」に変貌した御所の南庭  江戸時代の天皇は幕府の厳重な管理のもとに置かれ、京都御所に事実上幽閉されていて、生身の姿を一般庶民にさらすこともなかった。そう思い込んでいる人々は多い。天皇の研究をしているにもかかわら………[もっと読む]

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)
[掲載]2015年05月10日
[ジャンル]歴史

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