鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)の書評

写真:鴻巣友季子さん

鴻巣友季子 (翻訳家、エッセイスト)
1963年東京都生まれ。翻訳家、エッセイスト。訳書にジョン・クッツェー『恥辱』、トマス・クック『緋色の記憶』、マーガレット・アトウッド『昏き目の暗殺者』、ルル・ワン『睡蓮の教室』、ブロンテ新訳『嵐が丘』、著書に『翻訳のココロ』『明治大正翻訳ワンダーランド』など。

バン・マリーへの手紙 堀江敏幸著 湯煎の力でゆるゆると道ならぬ道へ

バン・マリーへの手紙 堀江敏幸著 湯煎の力でゆるゆると道ならぬ道へ

 バン・マリーとは仏語で「湯煎(ゆせん)」「湯煎鍋」のこと。直火でがんがん熱するのではなく、湯を張った鍋を間に挟むことで、ゆるやかな温(ぬく)みをもたらす。著者はこれを自分の思考法に重ねあわせ、本や音楽をめぐる日々の発………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2007年07月22日
[ジャンル]文芸

ミノタウロス 佐藤亜紀著 「荒野」の果てになお残る情動の振幅

ミノタウロス 佐藤亜紀著 「荒野」の果てになお残る情動の振幅

 舞台は、二十世紀初頭、ロシア革命前後の、内戦が続くウクライナ。作者の得意とする題材で、冒頭から引きこまれる。主人公/語り手は、奇妙な経緯から地主に成り上がった男の次男、ヴァシリ・オフチニコフ。教養高く、世の中を舐(な………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2007年07月08日
[ジャンル]文芸

きみのためのバラ [著]池澤夏樹 

きみのためのバラ [著]池澤夏樹 

■「邂逅」のひととき鮮烈に切りとる  誰もいない森で倒れる木は音をたてない、というあの哲学命題を思いだしたのは、本書の「ヘルシンキ」という編を読んでいる時だ。人との言葉の齟齬(そご)に疲れた男が、北欧の森で孤独な木にな………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2007年06月17日
[ジャンル]文芸

臍の緒は妙薬 河野多恵子著 生と死、昔日との秘めやかな交感

臍の緒は妙薬 河野多恵子著 生と死、昔日との秘めやかな交感

 本書の四つの短編が描くのは、なにか密(ひそ)やかな係(かか)わりである。生者と亡者の、あるいは過ぎた日との秘めやかな交感。そこには、「遺(のこ)された者」という河野氏のライトモチーフの一つが感じられた。  例えば「星………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2007年06月03日
[ジャンル]人文

円朝芝居噺 夫婦幽霊 辻原登著 痛快なり!落語と翻訳と文学の迷宮

円朝芝居噺 夫婦幽霊 辻原登著 痛快なり!落語と翻訳と文学の迷宮

 二葉亭四迷訳のツルゲーネフ、森鴎外訳のアンデルセン。外国文学の翻訳を通して日本近代文学の文体は作られてきた。さて、その明治の翻訳に多大な影響を与えた人といえば、三遊亭円朝である。  ところが、円朝落語こそがじつは翻訳………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2007年05月27日
[ジャンル]文芸

「赤」の誘惑 フィクション論序説 蓮實重彦著

「赤」の誘惑 フィクション論序説 蓮實重彦著

 イメージの快い覆しと、たゆたい  人間を刺激する赤色が文学によく登場するのは本能か。しかし、本書の著者を辟易(へきえき)させるのは、分析哲学や文学理論の書に赤が氾濫(はんらん)していることだ。フィクション論では、サー………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2007年05月06日
[ジャンル]人文

世界文学ワンダーランド 牧眞司著 75冊、全部読みたい小説群

世界文学ワンダーランド 牧眞司著 75冊、全部読みたい小説群

 大ざっぱにいえば、厳格なルールのある韻文に対して、より自由なのが散文芸術であり、さらに散文の中から、物語の旧弊な約束事を断ち切って現れたのが欧米の〈小説〉だ。〈小説〉とは、因習の中にひらかれた作家たちの解放区、何でも………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2007年04月15日
[ジャンル]文芸

星新一 一〇〇一話をつくった人 最相葉月著

星新一 一〇〇一話をつくった人 最相葉月著

 人生が文体を生んだ…初の本格評伝  星新一は「ボッコちゃん」など、ユーモラスかつ未来を予見するような作品で、日本にSFとショートショートを根づかせた。文庫発行数は3千万部超。感情を排した透明な文体の裏には、しかし苦渋………[もっと読む]

[評者]鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
[掲載]2007年04月01日
[ジャンル]文芸

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