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もっと本を!!再読ガイド

「もっと本を!!再読ガイド」は、朝日新聞の土曜朝刊に挟み込まれてくる別刷り紙面「be」に掲載しています。この記事の下部から、書籍の購入ページへ飛ぶこともできます。

憂魂、高倉健 [編]横尾忠則

[掲載]2009年10月10日朝刊be

 不器用、寡黙、禁欲という必殺の三所(みところ)攻(ぜめ)で、俳優の高倉健は、高度経済成長時代の憂える大衆を、陰性の男気の世界へいざなっていた。

 60年代、まだ新進気鋭のグラフィックデザイナーだったころの横尾忠則さんも、いざなわれた一人である。それは「ヤクザ映画のような土着の日本的なるものから、デザインの主体性の回復を探る」という理屈から始まったが、やがてなまめかしく義兄弟の契りを交わした仲のように、熱情が高まっていく。

 38年ぶりに復刻されたこの写真集は、映画のスチールや秘蔵プライベート写真を横尾さんが入魂の迫力で編集している。「健さんラブ」の恍惚(こうこつ)をむきだしのまま具象化してしまった「作品」だ。

 諸般の事情で、71年に都市出版社から刊行されたオリジナル版はほとんど書店に出回らなかった。じつはその2年前に、「高倉健賛江」というタイトルで横尾さんが企画した写真集も、数冊の見本が刷られただけで出版中止になっていたのである。

 そんな不幸を背負わされてしまうところも、高倉健という土着日本的なるカリスマにひれ伏す者の宿命のように思えてならない。(保科龍朗)

■もっとはまりたい人へ 書店員のおすすめ

 リブロ池袋本店(マネージャー) 矢部潤子さん

〈1〉にっぽん劇場 1965―1970 [著]森山大道

〈2〉1968(上・下) [著]小熊英二

 青山ブックセンター六本木店(文芸担当) 間室道子さん

〈3〉九州美少女写真館 [著]稲原豊命

〈4〉裸の王様 アジア編 [著]寝転びギョラニストbigmouth

〈5〉同期 [著]今野敏

 高倉健は60年代、「網走番外地」などのヤクザ映画でスーパースターにのしあがった。汗まみれの肉体労働者から革命を夢想する学生運動の闘士まで、義理人情に殉じる筋肉質の男の生きざまに心底、共鳴したのだ。

 矢部さんが薦める〈1〉〈2〉は、暴力的にエネルギッシュな60年代のイメージをよみがえらせ、洗いなおす手がかりになる。

 〈1〉は60年代後半、25歳でフリー写真家になったばかりの森山大道が雑誌に連載した初期作品で構成した写真集。ザラついた質感の写真で横須賀や新宿をダイナミックに活写している。

 戦後ナショナリズムを論じた大著「〈民主〉と〈愛国〉」で知られる社会学者、小熊英二の近刊の〈2〉は全共闘運動から連合赤軍にいたる若者の「叛乱(はんらん)」の研究書だ。またもや読むだけで腕力が鍛えられそうな分量で上下巻とも千ページ超。「濃密な事実の掘り起こし方が粘着質で熱い」(矢部さん)

 間室さんが薦める〈3〉〈4〉は、どちらも風変わりな写真集だ。

 〈3〉は、九州の福岡、熊本で発行されている月刊誌「no!」の人気企画「美少女写真館」を単行本化したもの。被写体は街角で呼び止めた198人の女子である。「きれいだけど垢(あか)抜けていない。その『垢』こそがいとおしい」(間室さん)。〈4〉は「覆面をしたままアジアを放浪しつつ、公衆の面前で寝転んで魚眼レンズだけで撮った」という奇想天外、しかし企画倒れになっていない写真集だ。

 男同士の絆(きずな)にちなんで選んだ〈5〉は警視庁捜査1課の刑事が、懲戒免職になって不意に消えた「同期」の公安刑事を救おうとする警察小説。同性に思い入れる男の執念は、やわではない。

表紙画像

憂魂、高倉健

出版社:国書刊行会   価格:¥ 15,750

No image

にっぽん劇場―1965-1970

著者:森山 大道

出版社:月曜社   価格:¥ 3,360

表紙画像

1968〈下〉叛乱の終焉とその遺産

著者:小熊 英二

出版社:新曜社   価格:¥ 7,140

表紙画像

九州美少女写真館

著者:稲原 豊命

出版社:エヌオー出版   価格:¥ 1,470

表紙画像

同期

著者:今野 敏

出版社:講談社   価格:¥ 1,680

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