2006年12月05日12時19分のアサヒ・コム
		アサヒ・コムBOOK

メインメニューをとばして、本文エリアへ朝日新聞社からアスパラクラブクラブA&A携帯サービスWeb朝日新聞サイトマップ文字拡大・音声

天気住まい就職・転職BOOK健康愛車教育サイエンスデジタルトラベル囲碁将棋社説コラムショッピングbeどらく

ここから本文エリア現在位置asahi.comトップ >  BOOK > 新書の穴記事

新書の穴

ワキから見る能世界 [著]安田登

[掲載]週刊朝日2006年12月8日増大号
[評者]鶴見太郎

■謎めいたワキの足跡

 能の中でも夢幻能と呼ばれる分野は、ふつうワキである諸国遊行の僧がたどり着いた先で、いわくありげなシテの里人に出会うことから物語が始まる。里人の多くは亡霊であり、生前残した解かれることのない宿業を内に孕ませながら、自身の物語を語る機会を待っている。

 進行するにつれ、シテの持つ過去が明らかにされていくのに対し、ほとんどの場合、ワキの側にそれに当たるものは起こらない。その意味で同じ能でも、ワキの方がはるかに謎めいた存在といえる。

 この個性のない登場人物は、いったいどんな足跡を持つのだろうか。

 本書は、ともすればシテ方中心に論じられることの多い能の世界を、ワキの側から見る鑑賞の手引きとしながら、彼らの内面に迫る。そこで露になるのは、シテにここまで自身を語らせるほど、空虚になれるワキの側にもまた、壮絶な物語が隠されている点である。若武者・平敦盛を手にかけたことで、武勇による殊勲を空しく思い、出家した熊谷次郎直実が象徴するように、自分を無個性化しようと思い至ったワキにとっては最早その来歴すら意味のないこととなる。

 著者は長らくワキ方の能楽師として数多くの舞台を経験し、近年では海外での公演やワークショップの開催にも積極的にかかわってきた。台湾では、共に仕事した現地の学生が別れ際に台湾人が抱える孤独を自分に吐露したとき、そこにシテとワキの関係を直観する鋭敏な感覚の持ち主でもある。

 考えてみれば、特定の場所に対する因縁からこの世に晴らせぬ思いを抱きながら、予期せぬ来訪者と出会うことで、思わぬ表現への道を開く設定は、何も日本ばかりに限定されるものではない。事実、最近の新作能では、オーストラリアを舞台にアボリジニをシテとする演目さえ試みられている。形がしっかりと継承されていく以外に、何かを機縁としながら、そこに新しい要素が付け加わる、芸能が本来持つ立ち位置を見事に表した一冊である。


ここから広告です
広告終わり

関連情報

    書籍詳細

    表紙画像

    ワキから見る能世界

    • 著者: 安田 登
    • 出版社: 日本放送出版協会
    • ISBN: 414088195X
    • 価格: ¥ 777

    別ウインドウで開きますこの本を購入する ヘルプ

    powered by amazon.co.jp

     
    ここから検索メニュー

    検索 使い方

    検索メニュー終わり

    朝日新聞サービス

    ここから広告です
    広告終わり
    ▲このページのトップに戻る

    asahi.comトップ社会スポーツビジネス暮らし政治国際文化・芸能ENGLISHマイタウン

    ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
    asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
    | 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |
    Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.