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新書の穴

大奥の美女は踊る―徳川十五代のお家事情 [著]雲村俊慥

[掲載]週刊朝日2007年02月02日号
[評者]青木るえか

■生き生きと下世話に書く大奥

 新書界は今、大奥と山本勘助ブームである。なぜかといえば大奥も山本勘助もテレビで流行ってるからだ。山本勘助はこないだ始まったばかりのNHK大河だからまだ流行るかどうかわからないが、大河が始まる時期、本屋は一大大河商売に沸く。ほとんど一カ月ももたずに消えるのだが。

 そんな大奥と大河ブームに沸く新書界から、今週は『大奥の美女は踊る』をご紹介します。

 本屋で大奥モノの新書を片っ端から立ち読みして、これがいちばん下世話っぽかったからです。

 一読してため息が出た。大奥ってのは夢の国ですね。テレビでやってるすべてが大奥の中にある。政治家、女性タレント、歌手、俳優、二世三世、ハンサム、バカ、グルメ、セックス、猟奇殺人、ちょっといい話、純愛物語、もうなんでもある。無いものはない。で、登場人物たちの行動は橋田寿賀子ドラマの登場人物のようにわかりやすい。

 ……そんなわけはないだろう。大奥ったって、そうハデなことばっかりなわけはない。ジミで退屈な日々が営々と繰り返されたにちがいない。が、どういうもんだか、本のタイトルに大奥とついただけで、フリーセックスの楽園みたいな匂いを(性生活について露骨に書いてないものほど)ぷんぷんふりまく文章になるのはなぜなんだ。すべては昭和四十年代の日活ロマンポルノの大奥モノのイメージから来ているのではないのか。

 この本は「見てきたのか」と言いたいぐらい大奥の話を事細かに、生き生きと下世話に書いてある。「オットセイ将軍の側室代表」なんていうタイトルの章なんか、読みたくてたまらなくなるではないか。「『これへ参れ』と家光が放ったひとことでお夏は裸の将軍の下敷きにされてしまった。間もなく懐妊」なんていう文章にも、大奥が夢の国だと思わせる浮ついたものがある。楽しくするすると、あっという間に読み終わったが、読み終えてから「これでいいのだろうか……大奥も、この本も」という気分にちょっと襲われる。

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