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新書の穴

万世一系のまぼろし [著]中野正志

[掲載]週刊朝日2007年02月16日増大号
[評者]青木るえか

■神話から憲法、天皇の戦争責任まで

 天皇について書かれた本や、皇族の書いた本が大好きで(皇太子が書いた『テムズとともに』〈学習院教養新書〉なんか大好きな本の1冊だ)、右派左派両陣営の主義主張を読んで楽しむ。

 やはり面白いのは右派モノに多い。語り口調が熱いし、思いの深さのあまり底の見えない沼のようになった主張なんかが出てくる。八木秀次の「女系天皇はダメよY染色体理論」が出てきた時は興奮した。天皇を論じるとなると、この21世紀の世の中、何事も冷静に論じようということになっていて、そうとんでもないご意見は出てなかったのだが、ひさびさの「真芯に当てた」感のあるご意見だった。信じるに足るかというより、朝風呂のように「浸かってしまうと頭ボンヤリ、ああとってもいい気持ち〜」にさせてくれる、そういう論が出てくると楽しい。

 これが左派陣営からの天皇関係論議で、こういうのはなかなか出てこないのだ。なにしろ真面目だしカタイ。思いの深さはひたすら真面目方向、議論の透明性をアップする方向に行ってしまう。

 そこで登場した『万世一系のまぼろし』だ。まぼろし、というと私などは「南京大虐殺のまぼろし」とか、右派方面の用語のような気がしており、それが「万世一系」を否定する方向で使われたのがまず新鮮であった。

 もしかすると、こちら方面での、新たなる展開が見られるのではないだろうか。

 と、期待しつつ読んでみたところ、とても真面目な本だった。万世一系ということについて一生懸命論じたいあまり、いろんなところに話がとっちらかってしまっているが、神話から憲法、天皇の戦争責任まで、気になることは述べずにはおれない、という愚直なまでの姿勢の本であった。

 まあ、朝日新聞社から出てる本だし、そういうことになるだろう。それに、いくらトンデモ系の議論でもけっこう信じちゃう人ってのもいるから、右でも左でも、そういう論議は注意深く出さないといけないか。そうですね。

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