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新書の穴

癒しの島、沖縄の真実 [著]野里洋

[掲載]週刊朝日2007年03月23日増大号
[評者]鶴見太郎

■愛着と冷静な視点と

 復帰後、「沖縄」が与える印象は大きく変貌した。料理番組では沖縄料理を取りあげる場合があるし、沖縄出身者でなくとも沖縄民謡に一家言もっている人は少なくない。「団塊の世代」が退職後、永住先に沖縄を選ぶケースも多い。

 一方で、現代史にこだわる場合、沖縄は凄惨な戦場であり、戦後占領下に置かれた場所として消えない記憶を止める島々でもある。

 この両極のはざまで生まれる乖離を目の当たりにすると、どうしても、覚めた目線で現在の沖縄を見渡す必要に駆られてくる。

 本書の筆者は「本土」の出身であるが、学生時代、たまたま沖縄社会大衆党委員長・安里積千代(あさと・つみちよ)の選挙運動に関わったことから沖縄への関心を深め、復帰前の1967年、琉球新報社に就職した。その後、東京勤務から那覇の本社に移り、彼の地で家庭を持って現在に到った。こうした経歴が幾度となく鋭い社会批評を含んだ企画記事を送り出す基盤となった。

 沖縄には、厳格な長男継承を原則とする先祖の位牌管理の継承権であり、同時に財産継承権も意味する「トートーメー」の慣習がある。著者は、身を粉にして親の世話をした一人娘がこの風習で泣き寝入りさせられることの矛盾をキャンペーンで取り上げた。この連載は沖縄弁護士会を動かし、女性の墳墓・祭具継承権を認めた家裁の画期的な判断を引き出した。

 また、海外でたくましく生きる「ウチナーンチュ」(沖縄県人)を取り上げた1976年の連載は、90年から定期開催されている一大イベント「世界のウチナーンチュ大会」への道を開いた。

 他方、著者は、普天間飛行場移設問題に関連して本土から訪れた防衛庁長官に対し、客人には心からの歓待をもって応えようとする地元首長の流儀に“ゆかしさ”を感じるとともに、善良・素朴さを突き抜けた“したたかさ”がそこにないことを憂う人でもある。

 沖縄への愛着から長くこの地で報道に携わりながら、“余所者”としての冷静な視点も崩さない著者らしい見事な仕上がりである。

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