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ラブホテル進化論 [著]金益見

[掲載]週刊朝日2008年3月14日号

  • [評者]青木るえか

■ラブホを見るのがわくわくしてくる

 私は「いにしえのラブホ愛好家」なので、私にとってのラブホテルというのは、20年ぐらい前に大久保駅のホームから眺められた「あずさ」や「キング」のネオン看板のラブホテルであり、室内はタタミでフトン敷き、100円玉挿入式エロビデオ装置つきテレビがあり、枕元には水差しとティッシュケース、というものである。いったいいつの時代だ。まあ、日活ロマンポルノ全盛時代、といったあたりだろう。

 島根県で泊まったホテルが明らかにそういうホテルを普通用に転用したもので、そこここにその残骸的なモノが残っており、もちろん100円玉挿入式エロビデオなどを楽しんだ。何かこの、たまらん“遺跡感”に感動させられた。以来、レトロラブホファンである。

 この本は「ラブホテルがいかに不思議な(しかし下世話な本能の求めるままに)工夫と進化をしていったか」を教えてくれる。レトロではなく「今」をさぐった本であるが、性の現場という淫靡さに「大手を振って歩けない日陰者」を意識しつつ、「いや本能の部分だからこそ好きなことやるぜ」と首が後ろに飛ぶ勢いで胸を張る、というこの状態が、ラブホテルを「ため息の出るような絢爛な安物」にしてしまったのだとよくわかります。

 うちの近所のインターチェンジ付近にも新しいんだか古いんだか近未来だかわからないラブホテルが寂しげに点在している。私の愛する「日活ロマンポルノ時代ラブホのすがれた感じ」というものだけではなく、「新たな、ラブホならではの、時間に取り残されたような、時間を超越したような空間」ができあがっていくのだとわくわくしてくる。そういうラブホテルに入って楽しみたいものだが機会が皆無なのが残念だ。

 ただし、「はじめに」には蛇足を感じた。こんなのはナシでさっさとラブホテル内部に切り込んでくれたらよかったのに。何せ「はじめに」だから最初に読まされちゃうもので、せめて「あとがき」にしてくれてたらよかった。

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