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ここから本文エリア 新書の穴 ガストロノミ―美食のための知識と知恵 [著]ジャン・ヴィトー[掲載]週刊朝日2008年04月04日増大号 ■だれでも料理評論家の時代の学問 ガストロノミは、美食法、味の美学などと訳される。妙に日本語化された〈グルメ〉も同じような意味で使われる。 このところ、テレビではグルメ番組、大食い番組があふれ、一方では食品の安全性が問題になっている。食べるということが現代社会で大きな関心を呼ぶようになっている。 うまいとかまずいとかを客観的に、学問的にあつかうことができるだろうか。つまり、おいしさをことばで表現できるだろうか。フランス人はさすがにグルメの国で、ガストロノミという学問を発達させた。この本は、どうしてガストロノミが確立したか、それが政治、経済、美術などにどんな影響を与えたかを、見通しよく明らかにしている。たとえばミシュラン・ガイドによる星いくつ、というレストランの評価は、政治的、経済的効果をもたらすことができる。 私はグルメではないが、何人かのグルメ評論家を知っている。まったく料理がわからないのではないかとさえ思える人がいる。同じ評価でも、料理と美術ではまったくちがう。美術は限られた趣味であるが、食べることは万人共通にできるから、だれでも料理評論家になれる。あそこのラーメンはうまい、といったことはだれでもいえるから、すべて評論家として発言する権利がある。 だれでも一度は料理評論家になれるが、その評価を一貫して継続していくことはむずかしい。この本は、うまい、まずいの、だれにでもいえるような感想が、ガストロノミとして客観的な学問になることができるかを考えさせてくれる。ガストロノミという味の美学を伝統的に積み上げてきたのはフランスと中国であるが、ここではフランスを中心として料理の文化論が示されている。 はっきり結論はでないが、ガストロノミについて考えるための基本的な場がすっきり整理され、とりあえず見取り図が与えられている。その上で、私たちは現代の食文化のさまざまな現象について、あらためて考えてみたくなる。 ◇ 佐原秋生訳
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