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ここから本文エリア 新書の穴 「懐かしの昭和」を食べ歩く [著]森まゆみ[掲載]週刊朝日2008年05月02日号 ■カールを一袋食べたあとの満足感が胃を満たした 洋食ってほんとにおいしいですよね。外食でいちばん美味に当たる率が高いのは洋食屋ではないだろうか。それも、古い洋食屋。美味しいっていっても別にほんとの意味の美味ってことではなくて、食べ終わったあとの満足感というのか満腹感というのか。まずくたっていいんだ。油っぽすぎてあとで胸焼けがしたって、その時に、大好きなスナック菓子を食べ過ぎた時に得られる「わずかな後悔と、堕落に至るほどの満足」と同じような幸せを得られる。 『「懐かしの昭和」を食べ歩く』を読んで、というよりも載っている写真を眺めていると、それだけでもう、同じような満足感が胃を満たす。 懐かしの昭和、ってぐらいだから老舗が多くて、きっと食べたらいいお値段になるに違いないんだが、「きっとこれは、ものすごく美味しい!わけではなくて、しかし食べ終わったら満足するタイプの料理だな。カールを一袋食べ終わったあとの満足のように」と思わせる。うなぎの店も、寿司屋も台湾料理屋も、もちろん洋食屋も、載っている写真の、料理のテリみたいなものに、私の愛する洋食屋の肉と油とソースからなるあの濃い茶色の「安くて満足する世界」がまとわりついているのだ。ああ、でもここに載ってる店はきっと、どの店も高いな。もしかすると、食べ終わった時に、満足と値段のアンバランスで多少怒りはわくかもしれない。 ところで、この本はごく最近出たもので、雑誌連載を元にしたものであるけれど、その連載も2005年から。まだ5年も経っていない。しかしこの写真の古さ。保育社から出ている「カラーブックス」の写真のような古ぼけ方だ。昭和の雰囲気を出したくて、あえてこういう写真を撮ったのならカメラマンはエライもんだし、写真がこんなふうになってしまうような老舗の料理のパワーだとするとそっちのほうがもっとすごい。どっちなんだろう。料理パワーであってほしい。それならちょっと値段が高くても辛抱しようではないか。
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