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新書の穴

ぼくの特急二十世紀 大正昭和娯楽文化小史 [著]双葉十三郎

[掲載]週刊朝日2008年05月09日号
[評者]海野弘

■モダン・エイジの愉しき青春が甦る

 このところ、走り去り、見る見る小さくなっていく二十世紀の後ろ姿をなつかしむ本が出版されつつある。この本は、二十世紀の大衆文化を見つづけてきた愉しき記録の語り下ろしである。

 ちなみに「特急二十世紀」はハワード・ホークスの映画の題であるが、もともとは、アメリカ大陸を弾丸のように駆け抜けた豪華列車「二十世紀特急」(トゥエンティ・センチュリー・エクスプレス)にちなんでいる。モダン・エイジのシンボルであった。

 戦後の映画少年であった私には双葉十三郎の名はなつかしい。映画批評というものがあった時代である。この本を読むと、双葉、淀川長治、植草甚一といった戦後の映画批評家は、1930年代のモダニズムの中で育ったことがよくわかる。戦争で洋画もジャズも中断したのであるが、これが戦後に復活したわけである。

 1910年生まれの著者は、1920、30年代に青春を迎える。しかし戦争で抑圧されてしまうが、戦後、第二の青春を生きたのであった。

 双葉が青春時代に最も愛読したのは『新青年』という雑誌だったという。探偵小説が売り物であったが、モダンなエッセイや流行情報が人気を集めた。

『新青年』に刺激をされたのだろうが、文藝春秋社で1930年に『モダン日本』という雑誌を出した。そのあたりのことをもとにした『丘を越えて』という映画がつくられた。私は『モダン日本』のバックナンバーを見る機会があった。そんなこともあって、この本の1930年代のあたりが実に面白かった。

 そして戦後の進駐軍文化の中で、アメリカ映画やジャズが甦ってくる。このあたりは、私の知っている時代に入ってくるから、さらに身近に感じられる。

 この本は、1950年代でほぼ終わっている。ハリウッドの黄金時代の終わりと重なっているのだ。映画があれほど輝いていた時代がかげりはじめている。そのラストがちょっと哀しい。

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