[掲載]週刊朝日2008年5月30日号
■本を出す気負いが皆無、阿藤さん、かっこいー!
阿藤快の話は面白い。私は「徹子の部屋」という番組が面白いと思ったことがあまりないが、阿藤快(当時は阿藤海)が出た回の面白さは忘れない。徹子じゃなくて阿藤快の話しっぷりがとにかく面白かった。その後、大井競馬場で阿藤さんと話をしたことがあり、その時もたいへん面白かった(私の唯一の芸能人接触体験。それが阿藤さんで嬉しい)。なんというか、人に対する接し方が自然、かつ相手を気持ちよくさせる。それが芸能人ぽいクールさと同居してるんですよ。かっこいー。
その阿藤さんが書いた『ぶらり「快」的うまい旅』。旅番組の多い阿藤さんだが、仕事じゃないひとり旅での思いがけない出会いを描く……というような凡人の考えるものではなくて、仕事のロケで行った先の話とかがばんばん出てくる。仕事で行ってるからこんなにうまいウニを大量に食えるんだろうよ、と他のタレントが書いてたらハラがたつところだ。しかしこれが阿藤快だと「よかったねえ阿藤さん!」という素直な気持ちになれる。これも人徳というものか。カメラマンの撮ったちゃんとした写真でも挿入すればいいものを、いかにも使い捨てカメラで撮ったようなテキトーな写真が載っていて、そのへんの気のヌケ方が阿藤さんぽい。本を出すにあたっての気負いが皆無。
この「気負いのなさ」が、読み終わるとたいへん不思議だ。これがいわゆる本屋の「タレント本」の棚に並んでいるカラー写真入り書籍ならよくわかる。そういうものは今までたくさんあったから。でもこれ新書だ。新書ってもっと、著者が考えを物申したかったり世に問いたかったり研究を発表したかったりするもんではないのか。昨今いろんな新書が出てるが、どんなモノにも上品から下品まできっちり“野心”はあった。でも阿藤さんにはそれがない。少しも。
最近読んでいちばん「新書じゃなくてもいい」と思ったのがこの本でした。でも阿藤さん好きだしぬるま湯的面白さがある本だからいいんだけど。
著者:阿藤 快
出版社:ソフトバンククリエイティブ 価格:¥ 819
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