[掲載]週刊朝日2008年8月29日号
■甘海老の味噌漬けなんてほんと旨そうだ
各国料理の中では日本料理がいちばんつまらんのではないかと思っている。「暮しの手帖」で紹介されていた吉兆の料理に、フォアグラだのキャビアだの鯛だの牛肉だのコッテリした高級食材をキモの部分にバンバン使っているので、やっぱりそういうモノの力を借りなきゃ日本料理はダメなのかよ、とますます「日本料理ダメ論」に自信を持ったりしていた。
そんな「反日本料理」の私が気になっていたのが魯山人なのだった。マンガ『美味しんぼ』でも有名なエピソード「トゥール・ダルジャンでカモをワサビじょうゆで食った」、これ、聞いた時に「きっとそれはうまいんじゃないか」と思ったのだ。山口瞳が食べたという「白磁の大皿一面のフグの刺身」も何かうまそうだった。魯山人の日本料理は旨いのではないか。魯山人の焼き物とかは写真集その他たくさん見る機会があるのに、料理についてはなかなか触れたものがない気がしていたので、この本はたいへんありがたかった。
読み始めるとまず、私が日本料理を厭悪するところの日本料理的スローガン「持ち味を味わう」などというものが出てきてくじけそうになるが、その次に「美味いものを食べるのではなく、美味く食べる」と出てくる。例のトゥール・ダルジャンでカモのエピソードでも、本ワサビを持っていけなかったからダメなんぞと言わず、「この頃は粉(ワサビ)のほうがいい」とその場でウソを言ってまわりの人間に「これこそ最高の食い方」と信じさせたという「攻めの姿勢」が魯山人である。
その後は、魯山人の料理の作り方が細かく紹介される。甘海老の味噌漬けなんてほんと旨そうだ。大根おろしで食う魯山人式すき焼きは、私のようなゴテゴテ味に馴らされた者には物足りなさそうだけど、きっと魯山人に「これは旨い、食え」と言われたら旨く感じるだろう。この本を読むと、性格的に問題あるとか言われた魯山人も、強気と弱気のいりまじった、料理好きのおっさんだ。まあ会えばイヤなやつかもしれないが。
著者:山田 和
出版社:平凡社 価格:¥ 840
著者:湯木 俊治
出版社:暮しの手帖社 価格:¥ 5,040
著者:雁屋 哲
出版社:小学館 価格:¥ 550
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