[掲載]週刊朝日2009年10月2日号
■相手が花村萬月だとどういうわけか喜べない
新書というのは教養書なのでは……などと今さら言うのもどうかという昨今の新書事情。本書を見つけた時も「これはロックについての教養を深めるための本……なわけはない」とすぐわかった。
作家の花村萬月が、ロックを知る人にも知らない人にも「とにかくオレのロックはコレ。コレが正しい」と全面的に主張している本。その主張ぶりが、読む人によってはカチンとくる書き方だ。たぶんわざとやってるんだと思う。ビートルズはロックじゃない、ポップスだ、という説なんかは、確実にケンカ売る気(そして負ける気ナシ)で書いているとみた。
私はビートルズに思い入れがないのでそこはどっちでもいい。ただこういう書き方で書かれるとビートルズはロックだろ、と言いたくなる。私は花村萬月に「少年ナイフはロックか?」と問うてみたい。ロックと答えそうな気がする。だとするとビートルズはロックだ。
それはいいとして、この本では「ブルースロック」とか「ジャズロック」とか「プログレッシブロック」とかの章立てで、そのジャンルについて花村萬月が滔々と述べている。けっこう私の好きなミュージシャンが出てきてハッとさせられる。ピーター・グリーンは私も大好きだし、日本のロックバンドの歌詞がどうしようもないと書いていて「いや村八分がいるじゃん」と思ってページめくったら村八分が賞賛されていたりする。
著者の趣味と自分の趣味が似てたりするとうれしくなるもので、とくにそれがそれほどメジャーじゃない趣味だと「地下に潜っていた顔の知らない同志に出会った」ような喜びを感じるものだが、相手が花村萬月だとどういうわけかそういう気持ちになれない。文章の端々で威張っているからだろうか。しかし威張られるのが好きな人もいるので、そういう人はこの本でピーター・グリーンや村八分を聴いてみるキッカケを作ってくれればうれしい。……と、この文章も何かエラそうになってしまったが、それは花村萬月の悪影響だ。
著者:花村 萬月
出版社:集英社 価格:¥ 756