[掲載]週刊朝日2009年11月27日号
■阪神と日本軍は負け方が同じ
吹きまくっている。
というのが一読した感想。しかしその吹き方が、江夏と岡田ともなると、淡々としているところが逆に結構な迫力で、自分の棚への上げっぷりも堂々たるもの。そのへんが読みどころだ。
いろんなことを蒸し返して恨み言を述べている。たとえば江夏が、昭和48年、巨人と優勝争いをしてる最中に、阪神のフロントから「カネかかるから優勝せんでええ(大意)」と言われた、ということをあたかも大事のように語っているが、この話はもう30年前ぐらいから野球関係の本や雑誌にはイヤっちゅうほど書かれている……。それから、「江夏の21球(広島─近鉄日本シリーズ最終戦)」の時に、江夏がマウンドにいるのに古葉監督がブルペンで次のピッチャー用意して江夏がブチ切れたって話。これも聞き飽きている。が、あたかも「当時の秘話」のようにして語られる。それだったら、チラッと出てきてあまりつっこまれることもなく流された「阪神球団を牛耳っていたナゾの歯医者さん」をもっと深く追求していただきたかった。この歯医者は、週刊朝日で連載していた野村克也(当時解説者)が公式に活字にして多くの人に知られることになった約30年前の有名人だ。この人の活躍ぶりを当時モロに関係者だった江夏と岡田に活写してほしかった。
と、ゴシップ方面からばかり楽しんで読んでしまったが、この本の眼目は「いかに阪神がダメだったか」「今後いかに阪神を勝てるようにするか」で、これは最近ボコボコ出ている「どうして日本は戦争に負けたか」という本と構造がよく似ているのである。片や国家紛争で片や娯楽だが、戦い方のミスとか、理にかなっていない人員の起用とか、まるっきり同じ。その同じっぷりを見るに、「阪神の監督を日本軍に入れても、日本軍の参謀に阪神の采配振るわせても、行きつく先はカタストロフ」であり、野球は娯楽だからいいけどやはり戦争をしてはいけない、という誓いを立てたくなる。反戦の書。
著者:岡田 彰布・江夏 豊
出版社:角川書店(角川グループパブリッシング) 価格:¥ 740
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