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慶應幼稚舎 [著]石井至

[掲載]週刊朝日2010年8月27日号

  • [評者]青木るえか

■要は「選ばれた人間のヤンチャ」か

 この本を読むと、慶應幼稚舎というのはイヤラシイ選民意識を幼いうちから植えつける小学校である、ということがよくわかる。

 慶應幼稚舎といえば、あらゆる部門(知名度、難易度、虚栄心を満足させる度など)で日本一と思われている私立小学校であり、名前だけは知ってても内実はわからない人がほとんどだろう。でも先に言っちゃうと日本に慶應幼稚舎なんて学校はいらんと思う。内実なんて知らなくていい。

 と思うに至る詳細がぎっしり書いてある。幼稚舎糾弾の書ではなくて、幼稚舎が「皆さんが思っているような金持ちコネ学校じゃなくて、もっと崇高壮大な理念を持ちつつヤンチャでもある素晴らしい学校です」ということが書いてある幼稚舎賛美の本だ。ひんぱんに出てくるのが「先ず獣身を成して後人心を養え」というお言葉。のびのびとした子供たちの集まる学校、ということで何かとこの「獣身を成して〜」が登場。本書冒頭には、バスで騒ぐ幼稚舎生のわんぱくぶりを紹介。入学試験でも、お勉強ができるこまっしゃくれたイイコではなく「幼稚舎の先生方がいっしょに勉強していきたいと思うような魅力にあふれている子ども」を採るのが主眼だ、という。なるほど詰め込み勉強が役に立つような試験では一見ない。でもおしゃべりするなとか、前の子を追い抜かすなといった「お約束」が守れないと落ちるらしい。これって相当「訓練された子」じゃないか。

 で、慶應閥の子や医者の子は1つのクラスにまとめるとか、ご立派な理念を掲げてる割にはやってることが大学のサークルみたい。要は「選ばれた人間のヤンチャ」が愛でられるという、はげしくイヤラシイ小学校だ。

 卒業生のナマの声も紹介していて、ラッパーのUZIさんてのが幼稚舎を「どんな大金を積んでも決して得ることのできない『絆』」「とてつもなく頑丈な、決して色あせることない」と語ってらっしゃる。だから日本語ラップはダメなんだよ、と思った。

表紙画像

慶應幼稚舎 (幻冬舎新書)

著者:石井 至

出版社:幻冬舎   価格:¥ 777

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