(DO科学)親子で読もう科学の本:1 進化っておもしろい! 長谷川眞理子さん
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はせがわ・まりこ 早稲田大学政経学部教授。1952年生まれ。東京大学理学部、同大学院博士課程修了。専門は行動生態学。動物や人間の性差とその進化について幅広く研究している。著書、訳書多数。
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長い夜。とっつきにくい科学の本を読むには、絶好のチャンスと積極的に受け止めましょう。同じテーマを親子で学び、それを土台に議論を深める。今年の秋は、そんな使い方をしてみませんか。DO科学が、3週にわたって、そのお手伝いをします。第1週は、生き物の「進化」。地球にすむ生物は150万種とも1500万種ともいわれます。なぜ、そんなに多種多様なのでしょうか。秘密を読み解く案内人を、早稲田大学教授の長谷川眞理子さんにお願いしました。
○早大教授・長谷川眞理子さん、おすすめの15冊
生き物って多様な種類がいますけど、みんなホントにきれいにできてます。ミミズだって私はきれいだと思う。感動します。なんでこんなによくできた、いろんな生き物がいるのか、それを説明する根元の理論が「進化」です。
■もってこいの話題
なぜ私たちがここにいるのか。そういうことを親子で話し合えたら楽しいじゃありませんか。親は人生歩いた分、いろいろ言いたいことがある。子どもは知らないことばかり。そんな親子に進化って、もってこいの話題なんです。
進化なんて、何億年も過去の話って思いがちですが、そんなことはない。今起こっている最中の進化もあるんです。まずそんな進化の現場から見ていきましょうか。
ピュリツァー賞を取ったジョナサン・ワイナーの「フィンチの嘴(くちばし)」(樋口広芳他訳、ハヤカワ文庫、945円=以下もすべて税込み)は、ダーウィンが訪れたガラパゴス諸島でフィンチという鳥が今も進化している様子を映画で見るように紹介してくれます。
「ダーウィンの箱庭ヴィクトリア湖」(丸武志訳、草思社、2625円)は魚のお話。書いたティス・ゴールドシュミットはアフリカ・タンザニアでシークリッドという魚を調べていました。この魚は1万数千年の間に300種に分かれたんです。でも、それがわかったとたんに外来魚の影響で消える。泣けちゃいます。人間の前で生態系はいかにもろいか……。
ワクワクするような本をというのなら、未来の奇妙な生き物を紹介するドゥーガル・ディクソンの本から「フューチャー・イズ・ワイルド」(土屋晶子訳、ダイヤモンド社、2520円)はいかが。2億年後の過酷な環境では、生物はこんなふうになる。「ひぇーおもしろい」と進化をもっと本格的に知りたくなるはずです。
もう一つ、ハラルト・シュテュンプケの「鼻行類」(日高敏隆他訳、平凡社ライブラリー、840円)は鼻で歩く、新発見の哺乳(ほにゅう)類についての詳しい解説。もちろん想像上の動物なんですけど、初めて見たときは、私も「これはなんだ」と思いました。こういう想像力って、研究者が自分の熟知している専門を推し進めていくと考えつくんでしょうけど、親子でやってみてもきっとおもしろい。
スタニスワフ・レムのSF「ソラリス」(沼野充義訳、国書刊行会、2520円)にも似た味わいがありますね。生命が地球以外の惑星で進化し、それが地球と全く違うなら、私たちは生命と気づくだろうか。そういうテーマで、常識がひっくり返ります。
■何の目かあてっこ
準備体操が終わったところで、次は本格的に進化に入門できる本を1冊。カール・ジンマーの「進化大全」(渡辺政隆訳、光文社、6090円)がお薦めです。写真がいいから、ぱらぱらとつまみ食いするだけで楽しい。著者はジャーナリスト。正確でかつ、お茶を飲みながらでも読めるんです。表紙にある動物の目を、「何の目」とあてっこするのもいいかな。
日本できちんと進化学を学んだ最初の世代の河田雅圭さんの「進化論の見方」(紀伊國屋書店、2345円)は、少し前の本になりますけど、現実の科学としての進化を説いていて骨太です。井村裕夫さんの「人はなぜ病気になるのか」(岩波書店、2940円)は医学という視点から見た進化に関する本ですが、ヒトの未来を考える上ではとても大切ですね。
■生命の連鎖に興奮
カンブリア紀の変な動物たちは有名ですが、私たちヒトも、親の親の親の……とたどると、あそこにたどり着く。私が今ここにいるのは、生命の連鎖が一度もとぎれなかったからなんだ、と思うと、どきどきします。その興奮が、リチャード・フォーティの「生命40億年全史」(渡辺政隆訳、草思社、2520円)によく描かれている。「生きる意味ない」とかいう若い人がいるのなら、そんなことを話し合ってみたい。
小さな子どもと一緒に読むのならバージニア・リー・バートンの「せいめいのれきし」(石井桃子訳、岩波書店、1680円)にしましょう。あの名作「ちいさいおうち」を描いた絵本作家です。
マット・リドレーの書いた「ゲノムが語る23の物語」(中村桂子他訳、紀伊國屋書店、2520円)も、少し大きなお子さんなら大丈夫です。ゲノム解読などで遺伝子と進化の関係がかなりはっきりしてきましたが、23対あるヒトの染色体1本ごとに、いろいろな遺伝子について広い立場から解説してあります。「遺伝子が操る」ということばに、簡単にひきずられちゃいけないことが、あらためて思い知らされます。
■恐竜も欠かせない
子どもの大好きな恐竜も、生命の歴史を語るのに欠かせない存在です。今回は、恐竜発見史を描いたエドウィン・コルバートの「恐竜の発見」(小畠郁生他訳、早川書房、2625円)をお薦めしたいと思います。絶滅したすごい生き物の化石が見つかった。人はこれをどう考えたのか。出てくる人は変な人ばかりですけど、科学の進歩を考えるにはいい材料です。
米国のスティーブン・グールドと英国のリチャード・ドーキンスは、進化研究のいまを考えるうえでは、やはり欠かせませんね。
グールドでは最初のエッセー集「ダーウィン以来」(浦本昌紀他訳、ハヤカワ文庫、840円)でしょうか。米の進化学者の仕事はまず、聖書の創世記を信じる人たちと議論することなんですけど、この中にもそういう章があって、じっくり読みたいですね。ドーキンスは「利己的な遺伝子」(日高敏隆他訳、紀伊國屋書店、2854円)かな。ちょっと難しいかもしれませんが。
最後に私の本。なんで多くの動物でオスとメスの見てくれがちがうのか。不思議です。これを進化的に考えた「クジャクの雄はなぜ美しい?(増補改訂版)」(紀伊國屋書店、1890円)です。オスとメスで進化のあり方が違うのって、実は、二つの性の対立とかけ引きなんです。進化って身近で、ホントにおもしろい!
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