(DO科学)親子で読もう科学の本:2 数のふしぎに挑戦!
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せやま・しろう 群馬大学教育学部教授。1946年生まれ。東京教育大学理学部数学科卒。専門は位相幾何学。「何はともあれ、数学に親しんでもらうこと」が授業のモットー。著書に「トポロジー:柔らかい幾何学」(日本評論社)など。
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この秋は、親子で科学の本を! 2回目のテーマは「数学」です。学校時代にさんざん苦しんだせいか、苦手だという人が多いのですが、その美しさにひそかに魅力を感じる人も少なくありません。最近は、本屋さんでも人気商品の一つになっているとか。絵本から数学者物語まで、とくに隠れファンでなくても楽しめる数学入門の本を群馬大学教授の瀬山士郎さんに教えてもらいました。
○群馬大教授・瀬山士郎さん おすすめの16冊
数学って何かとっつきにくいですよね。正面切ってやろうとすれば確かに難しい分野も多いのですけど、とりあえずは数学のおもしろさがわかれば十分。そんな本がいくつもあります。
■違う世界が見える
たとえば、数学者の野崎昭弘さんと画家の安野光雅さんが一緒に書いた「赤いぼうし」(童話屋、1523円)。論理パズルを扱っているんですが、「こうだとするとああなるはずだけど、ああなっていないのでこうではないね」って、背理法という論証のしかけが子どもでもわかるんです。すごい本です。親子で一歩一歩進んで、最後までいったら、違う世界が見えてくるはずです。
安野さんの「はじめてであう すうがくの絵本」(3冊セット、5040円=福音館書店)もいい。何でこれが数学なの、って思う話題をいくつも扱っていますが、実はどれも数学の基本に通じているんです。ウォルター・ウィックの「視覚ミステリーえほん」(林田康一訳、あすなろ書房、1890円)は、不可能な形とか、逆さにすると凸凹が反転してしまう図形とか、不思議な写真を集めていて、感性を磨いてくれます。
■計算がおもしろい
計算って機械的にやるといやになっちゃうけれど、そうでない計算もあります。私の本ですが「計算のひみつ」(さ・え・ら書房、1260円)。1から9まで足すと45。じゃ、その九つの数を足したり引いたりして10ができるかっていうとできない。その理由を一緒に考えると、子どもがおもしろがるのはうけあいです。
新井紀子さんの「ハッピーになれる算数」(理論社、1260円)。文系から数学者になった人ならではの本です。詩や評論でドイツを代表する文筆家、エンツェンスベルガーの「数の悪魔」(丘沢静也訳、晶文社、1680円)には、ある種の規則から出てくるきれいな数や、おもしろい並びの数が出てきます。手を動かして、計算のトレーニングをしながら読むといいかと……。
数学者の興味にまで突っ込んだ本では、マーカス・デュ・ソートイの「素数の音楽」(冨永星訳、新潮社、2520円)がピカイチ。リーマン予想という、素数に関する難題が「主人公」なんですが、そんなことは知らなくて大丈夫。難しいところは飛ばして読んでも、十分おもしろい。
でたらめに並んでいるとしか思えない素数にも法則があって、そのエッセンスが自然現象にもからまっているなんてすごい話。おもしろければ、「何の役に立つ?」なんて、いわなくていい。素数ってその最たるものじゃないかな。
同じ難問でも、「フェルマーの最終定理」(サイモン・シン著、青木薫訳、新潮社、2415円)は有名です。ピタゴラスの定理を知ってれば、問題の意味はわかるけど、なかなか解けない。解決までのストーリーに興奮します。
■数学者の頭の中は
エッセーも数学者の頭の中を知るいい手がかり。アルブレヒト・ボイテルスパッヒャーの「数学はいつも苦手だった」(石井志保子訳、日本評論社、2625円)の中の、数学者と物理学者と工学者の対話なんて愉快。訳者も、猿橋賞を取った数学者ですが、「これは自分で書きたかった本」だそうです。実際に書けるところに、欧米の文化の厚さを感じますね。デービスとヘルシュによる「数学的経験」(柴垣和三雄他訳、森北出版、5040円)は、数学に本格的に取り組みたい人に薦めます。
数学者ってユニークな人がたくさんいるのに、その名前は意外なほど知られてませんね。アインシュタインは誰でも知っているのに、数学論理の基礎を固めたゲーデルとなると、「それってダレ」ということになる。
伝記では、「放浪の天才数学者エルデシュ」(ポール・ホフマン著、平石律子訳、草思社、1890円)が出色でしょう。96年に亡くなるまで、どこにも所属せず、自宅を持たずに論文を書き続けた。どんな問題に取り組んだかを紹介しながら、この自由人の魅力を語っています。
18世紀の大数学者の伝記である「オイラーその生涯と業績」(エーミール・フェルマン著、山本敦之訳、シュプリンガー・フェアラーク東京、2940円)もいい本です。オイラーには、業績を守るための秘密主義などなくて、開けっぴろげ。現代の数学者事情を反映した「フェルマーの最終定理」と読み比べるといいのでは。
■つながる論理・音楽
「天才スマリヤンのパラドックス人生」(レイモンド・スマリヤン著、高橋昌一郎訳、講談社、1890円)は自伝です。数学者で論理学者で音楽家でマジシャン、というキャラクターがたいへん魅力的です。「ヒルベルトの挑戦―世紀を超えた23の問題」(ジェレミー・グレイ著、好田順治他訳、青土社、2940円)にも数学者の活躍がよく描かれています。
最後に、とっておきの本を。まずは、ダグラス・ホフスタッターの「ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環(20周年記念版)(野崎昭弘他訳、白揚社、6090円)から。論理と図形と音楽をテーマにしたすごい本で、数学を知るためのバイブルといっていいほど。柳瀬尚紀さん、はやしはじめさんも翻訳に参加していて、とても読みやすい。初版から20年を記念して、エッセーが追加されています。
次は、「第四次元の小説」(ハインライン他著、三浦朱門訳、小学館、1533円)という数学小説です。メビウスの帯に乗って違う世界に入ってしまう地下鉄とか、フェルマーの定理を悪魔に解かせるとか……、不思議な短編がいっぱい。こういうファンタスティックなところで、数学と出あうのも悪くないんじゃないかな。
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