(DO科学)親子で読もう科学の本:3 脳って?心って? 大津由紀雄さん
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おおつ・ゆきお 1948年、東京都生まれ。81年マサチューセッツ工科大学で博士号取得。慶応義塾大学言語文化研究所教授。専門は言語の認知科学(生成文法)。ことばの世界のすばらしさを一人でも多くに知ってもらいたいと願う。
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心って何だろう、どこにあるんだろう。そんなことを考えて頭が痛くなったことはないでしょうか。専門家たちも頭を悩ましてきた、この問題にも、ようやくおぼろげながら手がかりが見えてきています――「この秋は、親子で科学の本を!」、最後の回は、慶応義塾大学教授の大津由紀雄さんの案内で、「脳と心」がテーマ。心を科学することは自分のことを見つめることでもあります。難しいなんて、決めてかからずに、家族そろって頭をひねるのも、また楽しからずや、ではないでしょうか。
○慶応大教授・大津由紀雄さん、おすすめの15冊
人間ならみんな頭の中に「脳」をもっています。「心」もみんな持っているって思ってますね。もう一つ深めて、脳って何だろう、心ってなんだろうと考え始めるときに問題は始まります。
■動物やロボットは
まずは私の大好きなこの本。哲学者の野矢茂樹さんの「はじめて考えるときのように」(植田真・絵、PHP、1628円)
は、誰にでもわかることばで「考えること」を考えさせてくれる。挿絵もすばらしいし、親子であれこれ考えながら読むのに最適の本。人間は考える心を持っているけれど、じゃあ、動物はどうか。コンピューターはどうか、と考えだすとおもしろいんです。
ヒトに近い霊長類、チンパンジーのアイちゃんやアユムくんとつきあいの長い松沢哲郎さんの「進化の隣人 ヒトとチンパンジー」(岩波新書、777円)
でチンパンジーの心についての話を読んでみましょう。人間と並ぶほど高い知性をもちうるチンパンジーは、じゃあ、他人のことはどこまでわかるのかな、そんなところから、チンパンジーと人間の心は、どこが同じでどこがどう違うかがだんだんわかってきます。
今、ロボット学者たちは、ロボットに心を持たすことができないかと一生懸命研究しています。そういう人たちが集まった「けいはんな社会的知能発生学研究会」の議論をまとめた「知能の謎 認知発達ロボティクスの挑戦」(講談社ブルーバックス、1029円)
は、研究者の枠にははまらず、好奇心にあふれたワンパクたちが、ワクワクしながら楽しいことに取り組んでいる雰囲気がよくわかります。「知能は社会から文化まで広がりを持つ」なんて彼らでなければいえないことかも。
脳が引き起こすいろいろな不思議現象を紹介しながら、心と脳の神秘に案内してくれるのは、神経科学者とサイエンスライターの合作である「脳のなかの幽霊」(V・S・ラマチャンドラン、サンドラ・ブレイクスリー著、山下篤子訳、角川書店、2100円)
です。続編も最近出ました。
もう少し幅広く見るなら、別冊日経サイエンス「脳から見た心の世界」(日経サイエンス社、1995円)
。数字や味に形を感じたり音に色を見たりする共感覚だとか、ストレスと身体、テレビ依存症だとか、日常生活に根ざした話題をテーマにした興味深い話が集められています。
少しアカデミックになりますが、「脳はどこまでわかったか」(井原康夫編著、朝日選書、1470円)
には、最新知識がまとめられていて便利です。現代脳科学からみた早期教育や「ボケ」の問題などについてもわかりやすく、信頼できる解説があります。最先端の研究法まで知りたい方には、教科書として、「マインド 認知科学入門」(ポール・サガード著、松原仁監訳、共立出版、3360円)
をお薦めします。
■ことばの世界では
心の動きというのはことばに一番よく表れます。人間だけの知識で、しかも、人間なら誰でも持っているんですから。「探検!ことばの世界」(ひつじ書房、1680円)
は私の本ですが、日本語と英語の例を使いながら、ことばの世界の楽しさと豊かさを体験してもらおうという本です。
ことばに、生まれながらに決まっている部分があることは間違いないでしょうが、生後の学習などに影響される面も重要です。言語や視覚を中心に幅広く研究している心理学者が書いた「言語を生みだす本能」(スティーブン・ピンカー著、椋田直子訳、NHKブックス、上下各1344円)
はそんな視点で、事例をたくさん挙げながら、巧みに読者を引き込みます。
じゃあ、ヒトの心はどこからどんな風に生まれるのか。ヒトのゲノムが解読されて、ヒトにはもともと「文法遺伝子」があるのではないかなどといわれることがあります。でも、たぶん問題はそんなに簡単じゃない。ピンカーさんの弟子の手になる「心を生みだす遺伝子」(ゲアリー・マーカス著、大隅典子訳、岩波書店、2940円)
は、遺伝子の働きを丁寧に探りながら、心がどのように編み出されるかを探っています。
■学ぶという働きは
人間をすっぽりくるみ込んでいる社会や文化という観点から、心の重要な働きである「学び」をとらえようとする稲垣佳世子さん、波多野誼余夫さんの「人はいかに学ぶか」(中公新書、756円)
は定評のある本です。自ら学ぶ存在としての人間、学習における文化の役割などを実証的に描き出しています。教育のあり方を考えるのにも最適です。
心は赤ちゃんにもあります。下條信輔さんの「まなざしの誕生 赤ちゃん学革命」(新曜社、2310円)
は、生まれもった力で、赤ちゃんが周囲の世界の情報を収集し、自らの世界を構築していく姿を描きます。人間の可能性の源泉を見る思いがします。
私たちが日常使う「論理」ってどういうものか考えるのも、心を知るいいきっかけです。心理学者の福澤一吉さんの「議論のレッスン」(生活人新書、714円)は議論の仕組みを綿密に、検討しています。自分の考えを見つめなおすよいきっかけになります。
■あっと驚く体験は
ちょっと頭を使う本が多かったかな。最後は、あっと驚く体験ができる本にしましょう。知覚心理学者で、錯視のデザインも手がける北岡明佳さんの「トリック・アイズ グラフィックス」(カンゼン、1974円)は、視覚から来る情報が、心をまごつかせます。なんでこんなことが起こるんだろう、と理由が知りたくなったら、「視覚のトリック」(ロジャー・シェパード著、鈴木光太郎他訳、新曜社、2520円)
を手に取りましょう。きっと答えが見つかるはずです。
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