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特集

〈どくしょ応援団夏休み特集〉読んであげれば自然に覚える 伊藤比呂美さん

[掲載]2007年07月19日

■耳から入る 言葉の力

 話す、読む、書く。成長とともに子どもは言葉のいろいろな機能を身につけてゆくが、その途上で登場するのが、文字、数字を覚える「あいうえお」や「123」の絵本だ。数あるなかから、おすすめをご紹介しよう。まずは文字の世界を感じてもらうこと。早く分からせようは、ゼッタイ禁物。楽しく読んであげることが大事とか。

写真伊藤比呂美(いとう・ひろみ)さん―詩人、作家。55年生まれ。『河原荒草』(高見順賞)『日本ノ霊異(フシギ)ナ話』などのほか、近著に『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』。3児の母。アメリカ在住。

 「楽しく読んであげる」は、小学校でも力を発揮する。朝の教室の盛り上がりも、ご紹介しよう。

〈読み聞かせにオススメ〉
「あいうえおの絵本」「ABCの絵本」「1・2・3の絵本」

          ○    ○    ○

 こどもと言葉って、考えたらとても不思議というか、面白いですよね。

 うちは一番上の子が小さいとき、「食べた」というときに「ばった」と言っていたんです。しかも活用までさせるから、大人も面白がって「カノコ語」なんて言っていました。

 2番目は単語の最初に「ん」をつけたんです。アフリカの言葉みたいでしょう。語尾には必ず「て」をつけるし。父親のことは「おーちゃん」。大人がつきあって「おーちゃん」なんて言っていましたが、ある日突然、「おとうさん」に。赤ん坊語を卒業して、普通の言葉をしゃべるようになりました。「ああ、面白い言葉が終わっちゃう」って、すごく残念でした。子育てすると、誰もが出合うことですけれどね。

 3人目は、アメリカで育ったから、「だっこ・ミー・プリシ」なんて言っていました。「プリシ」って、「プリーズ」なんです。車は「ブブカー」。1歳半くらいのころは、水気のものはすべて「ジュース」。初めて海を見たときも、しみじみと眺めてから「ジュース!」って。でも、3歳くらいで、いろんなことが整理されて、普通にしゃべれるようになる。

 この子には「あいうえお」を教えるために、カルタというか、ドリルのようなものを私が作りました。紙の右上に「ま」と大きく書いて、その下に私の似顔を描いて、□□。正解は「まま」ですね。果物を描いて、「□んごー」とか。そういうのをやらせました。

 アメリカで育てたからこういうことをしましたが、日本で育った上の2人は、字は自然に覚えました。絵本はとにかくたくさん読んでやっていましたから、いつの間にか「字」の意味を理解して、一人で絵本を開いているうちに、覚えました。

 たくさん本を読んでやったのは、自分が母親に読んでもらってよかったという記憶があるからです。はっきり本の名前を覚えているのは、井伏鱒二訳の「ドリトル先生シリーズ」だけですけれど。

 読みきかせって、子どもにはとても大きいことだと思うんです。だから「あいうえお」の本にしても、文字を覚えさせるためというより、「あいうえお」を素材にして、ことばというもののきもちよさを体験させてあげるんだ、そういうふうに考えて読んであげればいいんじゃないですか。下の子の父親はイギリス人なので、子どもに英語で「マザーグース」を読んでやっていました。英語圏はやっぱり「マザーグース」なんですね。

 ただ、仕事なんか持っていたら特にそうだけれど、寝かしつけるころは、本当に疲れているでしょう。それでも読むには、お母さんが好きな本じゃなければ読めない。子どものためになる、とかではなく、お母さんが好きな本を選ぶ。それがいいんだと思います。(談)


〈読み聞かせにオススメ〉 「あいうえおの絵本」「ABCの絵本」「1・2・3の絵本」

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