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ここから本文エリア 特集 kokoroの健康講座2:大野裕「こころの伴走者」(1)2007年10月29日
書棚に並ぶ精神疾患を扱った本を眺めていて、ふと手に取った経験はないだろうか。 それが、あなた自身の深い悩みの気づきでも、だれかの伴走者になるための目覚めでも、きっとあなたを成長させる――認知療法の第一人者は、気さくに静かに力をくれた。 ■「うつ」は増えているのか ――「うつ」が身の回りで話題にのぼったり、新聞の見出しになるような機会が増えている気がします。 大野 うつ病の患者さんが増えたというデータはありませんが、そうした兆候に自ら気づいて精神科などを受診される方が増えているのは確かです。身近に診療施設ができ、さまざまな啓発活動も功を奏して、症状の軽いうちから受診されるようになってきた。そのこと自体は好ましく思います。 ただ、受け皿になる医療態勢の整備は遅れていて、病院の精神科などでは3分診療が一般的ですし、時間をかけて診療してくれる施設だと何カ月待ちといった状況です。それでも日本の場合は、体の変調をうったえて直接精神科に行かれる方と、他の診療科に行かれる方が半々ですから、患者さんからのアクセスはよいほうではないでしょうか。 うつの初期症状を「心の風邪引き」といったり、うつ病を「心の病」と呼んだりすることがありますが、誤解しないでいただきたいのは、心の全体が病むわけではないのです。心が温かいとか優しいなどというように、心の概念はもっと幅広いはずで、そういう範囲まで含めて病気になっているといわれると、それはちょっと違うのじゃないかと思います。 ならば何かといえば、うつ病は精神機能の一部が不全に陥ってしまう疾患です。精神的なエネルギーが低下すると抑うつ的な症状が表れてきますが、それが亢進して、精神機能の働きがうまくいかずに自分がすごく辛くなったり、日常生活に支障をきたすような場合に、治療が必要であると判断される。その時にはきちんとした医療の介助が必要ですし、投薬なども必要になってきます。 問題なのは、そういう状態になった方で医療機関を受診されるのは全体の3割ほどで、7割の方は、自分の力だけで解決しないといけないとか、自然に治癒するのではないかと期待して、つい一人で頑張りすぎてしまう。それがかえって症状を進めてしまうことが往々にしてあるわけですね。 ◇ 大野裕(おおの・ゆたか) 1950年生まれ。精神科医。慶應義塾大学医学部卒業。同学部精神神経科専任講師などを経て現在、同大学保健管理センター教授。うつや不安障害に対する認知療法の第一人者。アエラにて「Dr.大野のこころの読みグスリ」を連載中。
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