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ここから本文エリア 特集 噺に使いたいヒントもらう 立川談四楼さん[掲載]2007年10月26日朝刊 ■秋の読書特集 第2特集 時を超え、あの時代に―歴史・時代小説 入門と同時に師匠の談志が言いました。「吉川英治の『新・平家物語』と『三国志』を読め。読まないと弟子として認めない」
こりゃ大変だとばかりに読み始めたのですが、どちらも大部、てこずりました。何しろ入門早々、付き人として猛烈に忙しいのです。談志は売れっ子で、付き人の私は朝から晩まで天手古舞(てんてこまい)、読書の時間がなかなか取れないのです。 しかし談志からは「どこまで読んだ。そこまでの感想を言え」とチェックが入ります。もう睡眠を削るしかないわけで、あれはきつい読書でしたねえ。 読めば面白いのに時間がない。それでも約3カ月で読了しました。すると不思議、それまで本名で呼ばれていた私に芸名がついたのです。それは立川寸志という前座名でしたが、晴れて弟子になれたことを実感したものです。 ヤル気を試された。その時はそう思ったのですが、浅はかですねえ。「源平盛衰記」は談志の十八番のネタ、弟子もいずれ手掛けることになるだろう。『三国志』からは中国の歴史とスケール、そしてデフォルメを学べという親心だったのです。そうとわかったのは後年のことでした。 とにもかくにも時代小説の入り口に立ちました。落語の時代背景は何といっても江戸、武家物、市井物と読み漁(あさ)るうち真打ちに昇進、そこへラジオで戦国物を朗読しないかという話なのです。 山岡荘八の『徳川家康』、ローカル局とは言えど月〜金のオビで、1日10分のオンエア、大長編ですから数年に及び、これで固定給ゲットと小躍りし、夢中で下読みに没頭しました。 天下分け目の関ケ原などはワクワクドキドキで、さあここをどう読もうと、声に出してみたりもしたのです。しかるにどうなったかというと、その企画はポシャったのです。まさにとらぬ狸(たぬき)の皮算用だったわけですが、もらえたであろうギャラに未練はあったものの、読書に後悔はありませんでした。それはそれは面白い小説だったのですから。 落語には廓噺(くるわばなし)という一大ジャンルがあります。そしてそれを演じることは真打ちの条件でもありますから、吉原や岡場所を扱ったものは、参考になればと目を通すことにしています。松井今朝子著『吉原手引草』もそんな動機で手にしたのですが、いやハマりました。 男が行方知れずの花魁(おいらん)を探し、吉原で働く様々な人を訪ねます。その繰り返しなのですが、その中から花魁の境遇や半生、容貌(ようぼう)までがクッキリと浮かび上がってくるのです。いや見事な技の冴(さ)えでしたねえ。 吉原について、新知識をずいぶん得ました。あの個所をあの噺のあの部分に使ったらどうだろうなどと、ヒントももらったのです。
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