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特集

働くを考える:若者が働きやすい社会のあり方とは(1)

2007年11月26日

本田由紀さんインタビュー   

写真教育社会学者 本田由紀さん
ほんだ・ゆき/東京大学大学院教育学研究科比較教育社会学コース准教授。1964年徳島県生まれ。日本労働研究機構研究員、東京大学社会科学研究所助教授などを経て現職。著書に『若者と仕事』『多元化する「能力」と日本社会』、共著に『「ニート」って言うな!』などがある。

 非正規雇用が労働者の3人に1人に増え、ニート、ワーキングプア、ネットカフェ難民といった言葉がマスコミをにぎわす今、若者の労働環境に異変が起きている。若者の労働や就職事情に詳しい、教育社会学者の本田由紀さんに話を聞いた。

■復活が閉ざされた現実

――ニートというと、「社会性がなく、働く意欲のない若者」といったイメージがありますが、本田さんは著書の中でそれは間違いだと言われています。

 日本では90年代以降、若者の失業者や非正規労働者が急速に増えました。この現象を説明するために、「最近の若者は働く意欲に欠ける」といった文脈で、「ニート」という言葉が使われるようになりました。でも統計を見れば明らかなように、働く意欲がなくて無職状態にある若者の数は、90年代以降増えていません。増えているのは、働く意欲はあるのに就職の間口が狭くなったため、正社員になれない若者です。そのような若者がその後もなかなか正社員になれない。社会人としてのスキルや経験を積む機会が与えられず、復活の道が閉ざされていることが一番の問題です。将来の展望が見えないまま低賃金、不安定な雇用のもとにいる若者たちの絶望はとてつもなく深い。未来のない使い捨てのような日々を送っているうちに、自分自身を否定するような気持ちになってゆくことは珍しくありません。

――そのような状況の背景にあるのは、企業を取り巻く環境の変化ですね。

 グローバル競争の激化や不況により、企業は90年代以降、正社員の採用を抑え、労働環境は厳しくなる一方です。さらに日本独自の制度や慣習が、問題を深刻にしています。日本ではこれまで、学校で将来の仕事に向けた準備や訓練をほとんど行ってきませんでした。そのかわり企業が新卒を採用した後、社会人として必要なスキルや能力を育ててきた。それだけに、新卒時に正社員になれなかった若者に対して、仕事に必要なスキルを身につけさせる仕組みがないのです。だから卒業時に一度非正社員になってしまうと、なかなか正社員へのルートに乗れないのです。

 若者と仕事の問題を真に解決するには、社会全体の構造から考え直さなくてはなりません。とはいえ、今まさに苦しんでいる人を救うための対症療法も必要です。障害者雇用のように一定数の正社員を採用する場合に何%かは新卒以外からとることを義務づけたり、当面の生活費と職業訓練を提供する場を設けたりするなどの対策が必要です。また日本は他の先進諸国に比べて、正社員と非正社員の賃金格差があまりにも大きい。同一労働同一賃金の原則のもと、正社員と非正社員の待遇格差を縮め、中間的な労働スタイルを取り入れるなど、両者の間をなだらかにして非正社員から正社員へと転換しやすくする仕組みも整えるべきです。

――現在、苦境にいる若者へのアドバイスをお願いします。

 アルバイトを続けるにしても、本が好きなら本関係というように、なるべく一貫性のある仕事を選んで経験を積んでほしい。また今の世の中は自己責任論が支配的で、就職できないのは自分が悪いからだと考える人が多い。その結果、精神疾患に陥ったり、死を選ぶ人さえいます。どうか自分を追いつめないでほしいと思います。最近は個人で入れるユニオンが広がり、抗議集会やデモなども活発化してきました。社会の問題に対してはきちんと声を上げて、自分たちの窮状を世に訴えることも大切です。

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