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「僕らはジャンプするしかないダンゴムシ」 ブラックマヨネーズ

2010年6月18日

  • 朝日新聞出版

写真写真よしだ・たかし/1973年、京都府生まれ。高校時代は弓道部に所属。卒業後、パチンコ屋の店員や実演販売などの仕事をへて芸人の道へ。当初コンビを組んでいた友人とわかれ、養成所で出会った小杉を口説く写真こすぎ・りゅういち/1973年、京都府生まれ。小学校時代は転校を繰り返し、暗い子だったと振り返る。高校卒業後、浪人生活、フリーターをへて芸人の道へ。昔はイケメンだったが、今は愉快な体形に写真吉田は小杉のツッコミに惚れブラマヨを結成した。「NSCにいたときから2種類のツッコミを使いわけていた」(吉田)、「そういうことを言うからハードルが上がる」(小杉)

黄色い声を拒絶する、真っ黒なオス臭さ。
それを、身も心も明るい愛情伝道師が包み込む。
名が体を表すブラックマヨネーズ、
見た目重視の現代日本に、全力でノーを突きつける。

 ぶつぶつ。

 2009年、ブラックマヨネーズ(ブラマヨ)のボケ担当吉田敬が出した本のタイトルである。01年から月刊誌に連載していたエッセーをまとめたものだ。04年、吉田はファン投票による「吉本ブサイク芸人ランキング」で上位に入った。そこから、

「俺に抱かれたくないと票を投じたやつの家を調べることなど他愛もないこと」(04年3月)

「抱かれたくないランキングに投票した奴らには(中略)罰を要求するかもよ?」(04年4月)

「ブサイクランキング4位で辛い生きるのが辛い!」(04年5月)

「来年は抱かれたいランキングに俺入れとけよ」(04年6月)

 ……いや、何カ月ぶつぶつ言い続けているのか。タイトルの「ぶつぶつ」は吉田のトレードマーク(?)である顔のぶつぶつではない、彼の怨念に満ちたつぶやきを指す言葉だったのだ。

 テレビで見ない日はないブラマヨ。だが改めて、彼らの存在は異彩を放っている。見た目に関しては彼らが積極的にネタにしている分、まだいい。より面白いのは吉田の内面だ。

 モテたいのに全然モテない、顔のいいやつが妬ましい。そんな「黒い情念」が、これほど売れてなお吉田からは発信されている。イケメンランキングで殿堂入りした同期の次長課長井上聡やチュートリアル徳井義実を評し、吉田はこう言い放った。

「あいつらは羽のついてるチョウチョ。僕はダンゴムシ。だから、ジャンプを繰り返すしかなかったんです」

●こび売らぬ硬派キャラ

 ネタなんだけど、何も自分たちをそこまで言わなくても……。もっとも、「そこから自分たちは這い上がったんだぞ」という自慢も多分に含まれてはいる。

 吉田がモテなかったのは、顔のせいばかりではない。彼のもう一つのトレードマークである「考えすぎ」「神経質」がモテ世界を遠ざけている。高校時代の友人で元相方でもある構成作家の和田義浩さんは、吉田の元彼女のことを思い出す。弁当屋で一緒にバイトをしていたが、別れた。

「女の子が釣り銭を渡すときの『○○円になります』の『ます』の部分が上がるのが気になる」

 そんな理由で、ケンカになってしまったらしい。吉田は言う。

「僕は、もう天性の陰気なんです。先輩にあいさつに行くときもできるだけ短く終わらせたい。先輩もやりたいことがあるんじゃないかと考えてしまうんで」

 そういえば、と関西ローカルの冠番組「マヨブラジオ」(読売テレビ)のプロデューサー、佐藤恭仁子さん。

「番組スタッフと明るくコミュニケーションをとるタイプじゃない。変なこびを売らず、朴訥。そんな硬派な魅力を感じます」

 本当は女性にも人気があるという。

 そんな吉田は考えすぎが高じてノイローゼ寸前にもなった。大阪時代、休みが8カ月間ない時があった。その割に給料は月25万円程度。仕事先でも「M―1」で知名度をあげた後輩の「笑い飯」や「千鳥」のほうがちやほやされていた。

●心臓が勝手に止まる?

 ふろに入る時、股間をギュッと握りしめないと気が済まなくなった。股間のモノがズルンと抜け出してしまうのではないかと感じていたからだ。ツッコミ担当の小杉竜一が言う。

「当時は『心臓がなんで動いてるかわからん』言うてたんですよ。勝手に動いてるってことは、勝手に止まることもあるんちゃうかって」

 吉田は、こう言う。

「残り2万回動くんやったら、2万回っていうメーターがほしかったです」

 見る人が見れば完全なノイローゼ。だが、相方の小杉はあまり気にならなかった。

「そんな話をしゃべれてる段階なら、大丈夫やろうと」

 吉田が死ななかったのは、彼とは正反対の小杉という男が相方だったから、なのかもしれない。誰とでも明るくコミュニケーションをとり、細かい考えは笑い飛ばす。

「楽屋とかで先輩の所にあいさつに行くと、何もしゃべることなくてもずっと先輩の顔見とるんです。『かまってくれ』って言ってる犬みたい」(吉田)

 そんな小杉も、小さいころから明るかったわけではない。(敬称略)

(インタビュー全文はAERA臨時増刊「読んでから笑え!」に掲載)

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