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韓流 ドラマ大国の舞台裏 書くのも「女」、そして見るのも「女」(1)

朝日新聞出版

2011年07月29日

写真:ソウルの繁華街・明洞。日本人観光客目当てに、日本語字幕入りの韓国ドラマのDVDが売られていた(撮影 Lim Dang)拡大ソウルの繁華街・明洞。日本人観光客目当てに、日本語字幕入りの韓国ドラマのDVDが売られていた(撮影 Lim Dang)

写真:ソウル郊外、富川市にある野外セット場。レトロな建物が並び、1930〜70年代が舞台のドラマや映画の撮影に使われる。(撮影 Lim Dang)拡大ソウル郊外、富川市にある野外セット場。レトロな建物が並び、1930〜70年代が舞台のドラマや映画の撮影に使われる。(撮影 Lim Dang)

表紙画像 出版社:朝日新聞出版 価格:¥ 1,500

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 韓国ドラマには、恋愛ストーリーが欠かせない。なぜか。

 ある意味、答えは簡単だ。

 ドラマの主な視聴者層が「女」だからだ。いま女性たちがどんな恋愛をしたいと空想しているか。その恋愛ファンタジーを提供するのが、視聴率上昇の早道と作り手は心得ている。

「統計的な調査でも、チャンネル選択権を持つのは女性だ。女性視聴者の心理を動かすことが重要なのだ」(MBCドラマ局長チョン・ウニョン)

 社会的成功という意味では女性は男性に比べ不利。だからドラマは活動的で魅力的な女性を彼女たちの「あこがれのヒロイン」として登場させる。泣かずにいられない悲しい運命の女性を登場させるのも、視聴者の感情を揺さぶる狙いでは同じだ。

■最強カードは何か

 韓国のドラマ作家も大半が女性。韓国放送作家協会によると、ドラマ作家は350〜400人、その約9割が女性という。作品が放送される「現役」は50人程度という厳しい世界だ。

 なぜ女性作家が圧倒的なのか。恋愛ファンタジーを巧みに書けるのは、やはり女性作家だから? 必ずしもそうではあるまい。むしろ社会環境が大きいのだ。

 ドラマ作家志望者が集まる韓国放送作家協会教育院のパク・チンスク院長の説明だ。

 「ドラマ作家になるなら人生をよく知る必要がある。20代半ばでは無理。30代半ばまで習作を続ける例が多い。男子学生は兵役があり、軍隊を終えてから作家として独り立ちするまで経済的に我慢できない。働かなければならないからだ。でも女性は実家の援助を受け、根気強く勉強を続けられる」

 「家族ドラマ」の比重が高いせいもある。嫁姑関係、日常の繊細な感情。男の作家には難しいかもしれない。韓国人は「家族あっての自分」との意識が強い。ドラマの家族関係は人脈図が描けるほど濃密だ。

 女性の恋愛ファンタジーを満たす「最強カード」は何か?

 「シンデレラ物語」だ。

 「理想の王子さまがいつか私の前に現れる」。この空想が様々なバリエーションとなって韓国ドラマのいまに脈々と流れているのである。

 「韓国を始め、アジアの視聴者は恋愛ドラマが好きなのよ」

 パリを舞台に、貧しい女の子と財閥御曹司の恋を描いた古典的シンデレラ物語の金字塔「パリの恋人」(2004年)を書いたドラマ作家、キム・ウンスクは成功の「必然」を語る。

 「企画案を持っていくと、5人の演出家に『こんなのは底の浅いハリウッド映画の亜流だ』と却下された。でも私はシンデレラ物語は大衆にアピールするコードだし、『もう飽き飽き』というのは逆にそれほど見ていて楽しいという意味だと思った。明確な設定に新鮮な台詞、新しいキャラクターを作れば面白いドラマになる、と」

 「パリの恋人」は韓国で最高視聴率57.4%と大ヒット、日本の韓国ドラマファンにも長く愛されている作品だ。

■しゃれたつもりが…

 昼は塾で子供たちに国語を教えながら演劇の脚本を書き、「お金がなくて家にテレビもなく、ドラマなど見ることもなかった」キム・ウンスクが、「パリの恋人」の成功で一躍ドラマ作家の新星となったこと自体、シンデレラ物語だと言っていい。

 5人の演出家に却下されたキム・ウンスクの企画案を「面白いよ」と採用したのがSBSの若手演出家シン・ウチョル(現在はフリー)。彼自身、担当していた単発ドラマの番組が終わり「仕事にあぶれた状態」だった。一緒にコーヒーショップを転々としてプランを練った作品のヒットは、彼を人気演出家に押し上げた。以降、2人は不動のコンビを組む。

 キム・ウンスクは、ドラマの法則も「パリの恋人」で学んだ。最終回の最後に、「この物語はすべて作家の想像でした」とオチをつけたら、視聴者から非難が殺到したのだ。「しゃれたつもりだったのに。視聴者って何てヤボなの」とあきれた。でもすぐ、それが視聴者というものだと悟り、己の未熟さを反省した。視聴者は「夢中で見たドラマを作家が汚した」と怒ったのである。

 ドラマは放送された瞬間から作家の手を離れ、視聴者の所有物になるのだ。

 家庭中心だった韓国ドラマの女主人公のストーリーが、職場での仕事と恋愛が主題となるのは1990年代から。トレンディードラマの時代である。

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