まさか5票差とは。私もびっくりしたけど、小泉さんはもっとびっくりしただろう。郵政民営化法案の衆院可決である。否決なら解散だとかなんとか、脅かしまくってもこの結果。内容的には否決も同然ではないか。
反対が多いのはなぜか。既得権にしがみつく我利我利亡者だらけだからか。特定郵便局長らと郵政族の陰謀か。そんなことはないだろう。
反対が多い一番の原因は、誰もいまの郵便局に不満を持っていないからだ。これが道路公団のことなら、料金が高いとかムダな道路を造ろうとしているとか、いろいろ不満はあるけど。郵便はちゃんと届くし、配達員は愛想がいい。変える理由は見当たらない。
東谷暁の『民営化という虚妄』を読んで、私の素人感覚はさほど間違ってないかもしれないな、と思った。
著者は元編集者のフリージャーナリスト。かつて人気エコノミストを採点した『エコノミストは信用できるか』(文春新書)が話題になった。
東谷によると、郵政を民営化しなければならない理由は皆無である。郵貯があるから特殊法人は赤字を垂れ流す、というのはウソだし、特定郵便局長会が強大な集票力を持っていたのは昔の話。
まあそれでも、民営化したほうがもっと安く便利になるというのならいい。ところが東谷が伝える諸外国の例はとんでもなく悲惨だ。行政改革の優等生といわれたニュージーランドは、民営化による極端なサービス低下に国民の不満が爆発。結局は行革見直しになった。サッチャーのイギリスでも失敗、ブレアが尻拭い。ドイツは民営化によって郵便局が半分以下に減った。何でも民営化するアメリカだって、郵便事業はいまでも国営のまま。フランスも国営で、カナダは公社。民営化は世界の流れでもなんでもない。
民営化したら万事良くなるなんていうのは幻想である。曖昧な期待だけで変化を望むと、取り返しのつかないことになる。