今年の雪はひどい。重みで家がつぶれたり、屋根から落ちてきた雪に当たって、毎日のように人が亡くなっている。それもほとんどがお年寄りだ。過疎化と高齢化が進む山村では、除雪作業もままならない。積雪量では「三八豪雪」(1963年の記録的大雪)に及ばないかもしれないが、なにしろ人手が足りない。こんな大雪になると知っていたら、もっと早めに手を打っていただろうに……と思っていると、不思議な本を発見。酒井與喜夫『カマキリは大雪を知っていた』である。
著者は「カマキリ博士」の異名をとる通信工事会社社長。「カマキリが高いところに産卵すると大雪」という言い伝えに注目して、カマキリ観察と降雪予報を結びつけた。もとはといえば酒井社長、電気屋を始めたのが三八豪雪の年で、テレビアンテナの設置工事をするうちに降雪予報を思いついたという。昔のアンテナは雪に弱かったから切実だ。
雪に埋もれないギリギリの高さが、カマキリにとって最適の産卵場所なのだそうだ。高すぎると鳥の餌になってしまうし、雪に埋もれるとうまく孵化できない。また産卵のタイミングも重要だ。カマキリは初雪の3カ月前にそれを予想して卵を産み付ける。
酒井は40年間もカマキリの卵を観察し続けて、最深積雪との関連を読み解いた。
なぜカマキリは降雪予測ができるのか。それは地球が発する微細な振動を感知しているからではないかと酒井は考えている。そこで本業の技術を活かし、地中音からその振動を測定するシステムも開発した。なお、酒井はカマキリの卵(卵嚢)と積雪の関係の研究によって、国立長岡技術科学大学から博士号(工学)を受けている。ほんとうのカマキリ博士だ。
酒井が監修している『冬を占う』(財団法人新潟県建設技術センター発行)という冊子では、今季の根雪は例年より1カ月早く、「地震による後遺症の為か、激震地を中心にやや大雪の気配」と予測していた。