■この人は国家が好きなのだ
もうすぐ自民党の総裁選が始まるが、安倍晋三が当選するのはほぼ確実だろう。自民党総裁になるということは、総理大臣になるということでもある。
安倍晋三『美しい国へ』は、同書「おわりに」によると、政策提言のための本ではなく、「わたしが十代、二十代の頃、どんなことを考えていたか、わたしの生まれたこの国に対してどんな感情を抱いていたか、そしていま、政治家としてどう行動すべきなのか、を正直につづったもの」なのだそうだ。
祖父が岸信介で、父が安倍晋太郎という血筋の自慢に始まり、北朝鮮による日本人拉致問題で自分がいかに活躍したかを語り、憲法改正の必要性や軍備の必要性を語っている。
自慢話の部分を除くと、新鮮味がまるでないのが驚きだ。改憲論も日米安保論も靖国擁護論も、みんなどこかで読んだような話ばかり。まあ、オリジナリティありすぎの人が首相になるよりマシかもしれないけれども。
書名も含めて全体から伝わってくるのは、この人は国家というものがとても好きなのだ、ということ。特攻隊員の日記を引いたうえで安倍は述べる。「たしかに自分のいのちは大切なものである。しかし、ときにはそれをなげうっても守るべき価値が存在するのだ、ということを考えたことがあるだろうか」と。そういう人もいるかもしれないが、誰かに「国家のために命をなげうて」と命令されるのは、私はごめんだ。ついでに言うなら、A級戦犯とは、他人に「命をなげうて」と命じておきながら、自分はそうしなかった人びとのことではないのか? 愛国心を語る政治家は信用できない。
報道によると、安倍は首相になったら教育に力を入れていきたいと語っているそうだ。本書では、サッチャーが行ったイギリスの教育改革をモデルにしたいと述べている。「教育の目的は、志ある国民を育て、品格ある国家をつくることだ」と安倍はいう。それって、国家のために命をなげうつ国民を育てようってこと?