■「小さな大人」ではない
小学生の校内暴力が増えているそうだ。特に教師への暴力は3年連続で3割超の増加。イスを投げたり殴ったり。
こういう報道があると、すぐに「親が悪い」「教師が悪い」「ゆとり教育の反動の詰め込み教育のせい」「そういや変な親が増えた」という話になる。だが、親や教師を責めて解決するのだろうか。
大人だって暴れるときは理由がある。腹の立つこと、イヤなこと、どうしても許せないこと。感情が爆発して暴力になる。まして子供は小さな大人じゃない。まだ感情も身体もうまくコントロールできない。子供たちの暴力の背後にあるものを、慎重に読み取らなければいけないのではないか?
精神科医・山中康裕の『子どものシグナル』は、著者が医療の現場で出会った子供たちの記録である。子供といっても幼児から10代まで幅広く、症状も不登校もあれば摂食障害、自閉的傾向などさまざまだ。
診察室で山中は子供たちに優しく語りかける。子供が泣いたり反発しても、それもまた意思表示として受け入れる。子供に絵を描かせたり、箱庭を作らせたり、「もしも3つの願い事がかなうとしたら」と質問したり。山中が考案した「交互なぐりがき投影・物語統合法」というのもある。事情を知らない人が見たら、たんに遊んでいるとしか思わないだろう。
山中は子供の絵や願い事から、さまざまなものを読み取る。だが原因追究だけが診察の目的ではない。こうして遊ぶうちに、子供たちが内側に溜め込んだものを吐き出し、まわりと折り合いをつけるきっかけを見つけることもある。
校内暴力急増を報じるマスコミのなかには、出席停止など「毅然とした」対応を求めるものもある。だが、それは子供を小さな大人だと勘違いした、誤った意見だ。大人は子供たちのシグナルを読み取らなければいけない。一人ひとりの子供にとって、これからの一生を左右する大切なことだ。むしろ最大の問題は、シグナルを読む余裕のない大人のほうにある。