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グレート・ギャツビー [著]スコット・フィッツジェラルド [訳]村上春樹

[掲載]週刊朝日2006年12月22日号
[評者]永江朗

■雰囲気変える「ぼく」→「僕」

 古典名作の新訳ブームが続いている。今年は光文社古典新訳文庫も創刊され、けっこうな売れ行きだという。実際、翻訳が新しくなると、こんなに変わるのか、と驚くことも多い。

 スコット・フィッツジェラルド著、村上春樹訳『グレート・ギャツビー』がベストセラーリストに入っている。そういえば新訳ブームのきっかけのひとつは、村上訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(サリンジャー著、白水社刊)だった。

 『キャッチャー〜』のときと同じように、ときどき新潮文庫の野崎孝訳と比べながら読んでみた。当たり前のことだけど、ストーリーは同じで、それぞれの文章の意味も同じだ。でも雰囲気が違う。野崎訳は「ぼく」で、村上訳は「僕」。言い回しはずいぶん違う。特に最後の文章の印象が。

 新潮文庫の解説で野崎孝は、1957年にいちど出した翻訳を17年後の1974年に文庫化するにあたって、かなりの改訂を加えたと書いている。それでも30年たつと古く感じる。野崎訳もいいけど、村上訳のほうがいま読むにはしっくりくる。訳者あとがきにあるように、現代の物語として成功している。

 80年前の原著を現代の物語として再生させるのが正しいのかどうかはわからない。でも、この成功と破滅の物語は、バブルとその崩壊と長く続く不況を経験した今の私たちこそ、読むべきものではないかと思う。私たちは小ギャツビーみたいなものだ。

 ベストセラーランキングに入っているのは、新書サイズの「村上春樹 翻訳ライブラリー」版。しかしここは愛蔵版をオススメしたい。和田誠装幀のハードカバー、函入りは美しいし、紙の質も違う。そして愛蔵版には付録「『グレート・ギャツビー』に描かれたニューヨーク」が別刷りでついている。村上春樹のニューヨーク案内で、こちらも和田誠のイラストがふんだんに入っている。値段はライブラリー版の3倍以上だけど、その価値はじゅうぶんにある。

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