ここから本文エリア

RSS

現在位置:asahi.com>BOOK>ニュースな本> 記事

ニュースな本

ラリーバカ一代 [著]篠塚建次郎

[掲載]週刊朝日2007年02月02日号
[評者]永江朗

■ダカールラリー

 パリダカ、パリ・ダカールラリーの季節である。山道や砂漠を走る自動車レースだ。今年はポルトガルのリスボンからセネガルのダカールまでを競う。毎年のように死人が出る過酷なレースだ。

 パリダカといえばシノケンこと篠塚建次郎である。パジェロでパリダカ総合優勝を果たした男。パリダカが有名になったのも、パジェロが売れたのも、四駆ブームが起きたのも、篠塚の活躍があったればこそ。しかも彼はメーカーとの契約ドライバーではなく、三菱自動車の社員だった。篠塚建次郎『ラリーバカ一代』は、サラリーマンドライバーだったからこそ可能だったことについて書いた本。シノケン版サラリーマン応援歌である。

 ポイントは篠塚がなぜ一会社員であり続けたのかである。意外なことに、彼は普通の社員としての報酬しか受けていなかった。パリダカで優勝しても金一封程度。もし契約ドライバーだったら、何億、何十億という金を手に入れられたかもしれないのに。

 なぜ会社員であり続けたのか。彼はたんなる社員ドライバーではなかった。ディーラーに出向してクルマを売って歩いたり、整備専門会社に出向して整備の仕事も経験した。もちろんドライバーとして新車開発にも関われば、広報・宣伝の仕事もしている。つまり、ラリーバカではあったけれども運転バカではなく、会社の様々な現場を自分の目でよく見ていた。

 メーカーは宣伝のためにラリーに参戦する。その費用は一台一台のクルマを売ることによって捻出される。ディーラーのセールスマンも、工場の組立工も、ラリーを支えている。勝利の喜びはクルマに関わるみんなの喜びになる。その快感を知っていたから、篠塚は社員ドライバーでありつづけた。

 篠塚の退社直後、例のリコール隠しが露見した。本書にも篠塚の見解が記されているが、悔しさと失望感はいかほどだったか。

 今年も篠塚はパリダカに参加している。こんどは元会社員ドライバーとして。

ここから広告です

広告終わり

ニュースな本 バックナンバー

バックナンバー

このページのトップに戻る