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下流志向―学ばない子どもたち 働かない若者たち [著]内田樹

[掲載]週刊朝日2007年03月02日号
[評者]永江朗

■意欲低下

 教育再生会議について、高校の約77%は期待していないのだとか。ライセンスアカデミー進路情報研究センターという民間団体が行ったアンケート結果だ。そりゃそうだろう、教育学の専門家ゼロの会議で、出てくるのは塾禁止だの出席停止だの親孝行だのという話ばかり。ヤンキー先生は「出席停止だ」を着ボイスにして配信する始末。すぐに停止したらしいが。もっとも、先のアンケートに、データとしてどの程度の信頼性と意味があるのかは不明だけど。

 内田樹の『下流志向』は、書名だけ見るとピンとこないが、内容は副題の「学ばない子どもたち 働かない若者たち」についての講演録である。子どもたち、若者たちは、意識的に下流を志向しているのだという。

 内田は大学でフランス現代思想と合気道を教えている。子どもや若者に関する情報は、教え子や我が子とその周辺、そして書物から得たもので、彼もまた教育学の専門家でないことには、一応、留意して読む必要があるだろうが、それにしても刺激的な話だ。

 本書によると、今どきの子どもたちは学習意欲や労働意欲が低下しているらしい。それが学力低下やニートとなって表れる。意欲が低下するのは、彼らがものごとを「等価交換」として捉えているからではないか、と内田は言う。幼いときからお金で物を買うことを覚え、あらゆることを消費、取引として捉える癖がついている。子どもたちにとって勉強は「してやる」ものであり、それは何かと等価交換されるべきものなのだ。

 交換でトクをするためには、少なく払って多く得ればいい。だから勉強も労働もできるだけサボるのが賢い生き方だと子どもたちや若者は心底思っている、らしい。学力低下は怠惰の帰結ではなく、彼らの努力の結果であり、それによって彼らは自己有能感や達成感を得ているのだ。

 「学ぶことの意味を知らない人間は、労働することの意味もわからない」と内田は言う。塾禁止よりも、学ぶことの意味をだ。

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