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自白の理由―冤罪・幼児殺人事件の真相 [著]里見繁

[掲載]週刊朝日2007年03月30日増大号
[評者]永江朗

■富山県警強姦冤罪事件

 富山県で発覚した冤罪事件はほんとうにひどい。強姦・強姦未遂で逮捕された人が、服役後にまったくの無実だと分かったのだ。しかも冤罪が晴れたのは、別件で真犯人が捕まったから。

 さらにひどいのは、この件に関して富山県警が、当時の捜査関係者を誰も処分しないと決めたこと。1人の人間の人生をめちゃくちゃにしておいて、誰も責任を問われないとは。いや、人生をめちゃくちゃにされたのは服役した男性だけではない。その家族や友人の生活も破壊された。「無責任」とはこのことだ。

 冤罪の背景にあるのは自白偏重の捜査だ。富山の事件ではアリバイを握りつぶし、自白を強要した。江戸時代じゃあるまいし、物証より自白に頼る捜査って何だ?

 しかし富山の事件は特殊な例ではない。里見繁『自白の理由』は、静岡県で起きた幼児殺害事件をめぐるドキュメント。恋人の子供を殺した容疑で逮捕された男性が、自白を根拠に有罪とされ、服役した。刑期を終えて出所したその日に無実を訴え、05年に再審請求をしている。

 驚くべきことにこの事件では、男性の恋人、つまり被害者の母親もまた、「自白」しているのだ。しかも、その録音テープの存在も明らかになり、本書には文章化されて掲載されている。有罪の決め手は死亡推定時刻だが、この算出方法がこれまた疑わしい。

 やってないのになぜ自白してしまうのか。意志が弱いからか。いや、そんなことはない。警察の手口は暴力的かつ巧妙だ。

 本書の序章「147人の自白調書」は、86年、大阪府で起きた選挙違反事件を紹介している。なんと147人の全員がやってもいない犯罪を自白させられた冤罪事件である。警察がその気になれば、地元の名士でも、保守系の元市議会議長でも、嘘の罪を自白させられてしまうのである。

 問題があるのは警察や検察だけではない。物証を軽視して自白を根拠に有罪を決めてしまう裁判官も同罪ではないか。

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