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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>ニュースな本> 記事 ニュースな本 やめたくてもやめられない―依存症の時代 [著]片田珠美[掲載]週刊朝日2008年02月08日増大号 ■薬で気分転換する「薬信仰」の時代 向精神薬をめぐる事件が相次いでいる。たとえば、食欲を抑制する「マジンドール」を、系列のエステ店が「やせ薬」として処方して医師が逮捕された。事件が多いのは抗うつ作用のある「リタリン」で、処方箋を偽造しての不正入手事件まで続発している。 リタリンはうつ病やナルコレプシーに処方されてきた。乱用が多いことを受け、厚労省は適応症からうつ病を除外した。これに対し、リタリンを服用してきた難治性うつ病などの患者が、服用の継続が可能になるよう申し立てをしている。もっとも、リタリンがうつ病にも処方されるのは日本だけだと言われるのだが……。 片田珠美『やめたくてもやめられない』を読むと、向精神薬の乱用や依存の広がりの向こうには、私たちの「薬信仰」があることが見えてくる。前半では依存の現状を、後半ではその原因と背景について述べている。著者は精神科医で精神分析系の研究者だ。 気分が落ち込んだり、不安になったり、憂鬱になることは、誰にでもよくある。肉親や友人を亡くせば悲しいし、失恋はつらい。失業は絶望的な気分にさせるし、何気ない言葉に傷つくこともある。だが、そうした病気ではない普通の感情の変化についてまでも、薬で調整しようとする人がいる。服を着替えるように、薬で簡単に気分を変える。そこにあるのは、気分は薬で変えられるという薬信仰であり、不安や悲しみや憂鬱などの感情は追放しなければいけないという幸福感信仰だ。 しかし、薬には副作用がある。よく効く薬ほど副作用も強い。薬品会社は「副作用の少ない薬ですよ」と宣伝するが、彼らも「まったく副作用はありません」とは言わない。そもそも、処方箋の偽造など不正をしてまで薬が欲しくなる状態こそ、副作用がある証拠である。依存症だ。 不安や悲しみや憂鬱をこんなに嫌いながら、それでいて泣ける小説や泣ける映画がヒットするのはなぜなんだろう。私たちは感情を消費したいだけなのか?
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