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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>ニュースな本> 記事 ニュースな本 死刑―人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う [著]森達也[掲載]週刊朝日2008年02月15日号 ■死刑制度への態度を決める前に知っておくべきこと 秋田連続児童殺害事件の公判で、検察は畠山鈴香被告の死刑を求刑した。矯正不可能で救いようのない人間だと検察は言う。 ところで、昨年末、国連総会が死刑執行の一時停止を求める決議案を賛成多数で採択したことはどの程度知られているだろう。決議案は死刑の廃止を視野に入れたもの。廃止はできなくても、とりあえずは執行の一時停止を、というものである。死刑廃止は世界的な流れだ。先進国で死刑が残るのは日本とアメリカぐらい。アメリカでも死刑を執行する州は減っている。死刑存置派が国民の多数を占める日本は世界のなかで異端だ。 森達也の『死刑』は、死刑制度に関するノンフィクションである。廃止論者や存置論者、被害者家族、実際に執行にかかわった人びとなどを著者が訪ね歩く。訪ね歩くのは、著者自身、明確に態度を決めかねるところがあるからだ。存置すべきだとは言えない。でも、一点の曇りもなく廃止すべきだとも言えないところがある。 私は森達也の姿勢に強く共感した。私も同じだ、と思った。胸を張って声高らかに「死刑を廃止せよ」と言えない。でも、なくせるものならなくしたい。 この本には知っておくべきことがたくさん書かれている。たとえば、死刑が凶悪事件の抑止に意味がないことはほぼ定説になりつつあること。よく言われる「無期懲役だと15年程度で仮釈放される」というのは実態とずいぶんかけ離れていること。あるいは、死刑囚の状態や執行の現実についての情報がほとんどないこと。 根っこのところにあるのは、法だの人権だのというより、日本人の死生観なのかもしれない。「死をもって償う」ということをどう捉えるかだ。世の中には死をもって償うべき罪が存在する、と考えるなら死刑も正当化されるだろう。だが、生死をそんなふうに扱っていいのだろうか。 本書を読んでもすっきりしない。でも、テレビ等が煽り立てる「(凶悪犯を)殺せ! 殺せ!」の大合唱には加わりたくない。
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